- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784815605339
作品紹介・あらすじ
奨励会三段リーグ。
四段(プロ)になれる者は2人だけという苛酷な戦場。そこに史上初めて女性
として参戦した銀子は、八一と交わした約束を胸に封じ、孤独な戦いを
続けていた。八一もまた、新たなタイトルを目指し最強の敵と対峙する。
そんな2人を複雑な思いで見守るあいと、動き出す天衣。そして立ち
はだかる奨励会員(なかま)たち。
「プロになるなんて、そんな約束をすることはできない。けど――」
大切な人の夢を踏み砕くことでしか夢を叶えられない。それが将棋の
世界で生きるということ。
銀子が、創多が、鏡洲が……純粋なる者たちの熱き死闘に幕が下りる
奨励会編堂々のフィナーレ!
感想・レビュー・書評
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「もし、あいつの視点で書かれた物語なんてものがあったら、それはきっと……どんな壁でも努力で越えられるとかいう、さぞ希望に満ち溢れたお話なんでしょうね。」
天才と凡人の物語、りゅうおうのおしごと、もう12冊目。
今回は八一が帝位挑戦のタイトル戦第1戦目と、並行して銀子がプロになれるかどうかの三段リーグ最終盤。
凡人側が熱い一冊でした(凡人といっても世間一般基準では天才の集団だけど)。
それぞれの対局がクライマックスになるたびに、読んでいるほうも息苦しくなるような、圧力を感じる将棋小説です。
ライトノベルとしてはなかなかに登場人物の多い本作、それぞれに人生を賭けた将棋への情熱があり、勝ったも負けたも結果に至るまでの長い長いバックグラウンドを抱えていて、物語的重さを感じます。
そしてこういうのを読むといつも、太刀川さん(ワールドトリガー)の台詞を思い出します。曰く「気持ちの強さで勝負が決まるって言っちまったら、じゃあ負けた方の気持ちはショボかったのかって話になるだろ」と。
しばらく小学生たちが脇役だったので、この後は出番が多くなるのかな。
フィクションを全て真に受けるわけではありませんが、将棋の世界はずいぶんと「ソフト」の影響を受けている様子。
コンピュータに敵わなくなったら衰退するのかとも思っていたけど、そうなっても人間同士の戦いは続いていくし、かといってソフトウェアを無視するわけでもないというのは面白いことです。
観戦側が逐一ソフトの評価値を見ながら有利不利を論じたりするのとか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白かった。銀子の奨励会三段リーグ最終日。いやはや、これこそノベルの醍醐味というか、体の弱い薄幸の超美少女がプロ棋士になるとか、もうファンタジーの極み。非常に良いです、興奮しました。天衣の攻め手も良い感じ。あいちゃんの見せ場が少ないので、もうちょっと出てきてほしい。
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夫が購入したもの。
あれ、前の巻読んだっけ、どうだっけ…と思いつつも、止められなくて半日で一気に読んでしまった。
・銀子ちゃんのデレ、そして泥臭く汚れながら勝ちをつかみにいくところはなあ、なんというかなあ。
・三段リーグ(奨励会とプロを隔てる大きな壁)の厳しさが描かれている巻。辛い。将棋だけに専心してきて、30歳くらいで職歴学歴なしで世間に放り出されたらそりゃあ辛いよね、ほんとに苦しいだろう。
・天衣のツンツンしながらのキスは反則過ぎるわ…その後の車内でのデレもかわいすぎるわ…。
・(八一、あい、天衣、椚創多などの)天才チームと、(銀子含め他の女性棋士や三段リーグ残留や敗退者、ソフト将棋などの)天才ではないチームの隔たりや葛藤、両者の埋められない溝みたいなものがこれから描かれていくのかなあ。
・女性棋士同士の葛藤もあったなあ。 -
八一は銀子とつきあうこととなるが、お互い当面は将棋に専念?封じ手の練習?
あいは小学生のお手紙ガチャでヤンデレヒロインっぽい手紙を書く。
銀子は友達の相談という名の惚気を佳香にして呆れられる。 -
相変わらず熱いけど、ロリコン要素がとってつけた程度になってしまったのが少し残念。
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もともとこのシリーズは、日々をそれなりに誠実に生きながらも胸中に燻っているものがある人に「刺さる」ことがある。
本巻においても、幼いなりに信じていたものが崩れ落ちる経験をした夜叉神天衣が同じ轍を踏むまいと足掻き藻掻く場面や、次点2回によるフリークラス編入制度を使い尽くしたシナリオ(多少意味合いは異なるもののそのモチーフが現実にあったシチュエーションであることが恐ろしい)で存分に発揮されていましたが、最も「刺さった」のは、あとがきだと思います。400ページを費やした物語以上に、3ページの文章が雄弁でした。