学校の中の発達障害 「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち (SB新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784815615833

作品紹介・あらすじ

【内容】
著者は、臨床経験30年以上の発達障害の専門家。未就学の幼児から成人まで多数の発達障害の人たちの診療に当たってきました。
発達障害の人たちの社会参加を難しくするのは、発達障害の特性よりも、身体症状、うつなどの二次障害によることが大きいと、著者は感じているそうです。

そして、小学校以降の発達障害の子の場合、学校生活の中で経験するストレスなどが要因となって、不登校などの問題が生じることも少なくありません。発達障害の支援で、最も重要なことは二次障害を予防すること、そして、二次障害が生じたときにその悪化を防ぐことです。そのためには、学校が子どもたちにとって楽しく学べる場である必要があります。

発達障害のお子さんは、「多数派」「平均値」「友だち」に合わせなくてもいい――とはいうものの、学校とは「多数派」「平均値」「友だち」に合わせるべき最たるところ。いったいどうやって、発達障害の子は学校と折り合いをつけていけばいいのか、じっくり考えていきたいと思います。

感想・レビュー・書評

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  • 少子化が進んでいます。学校は統合され数を減らしています。しかし、特別支援学級は増加の一途をたどり、特別支援学校の新設も相次いでいます。
    学校は多様な特性を持った子どもたちが「共生」する場となっています。
    私たちの学生時代とはかなり変化していることを感じます。そして、10人に一人、いや6人に一人が発達障害などの特性を持っていると言う医師もいます。HSPやLGTBQなども入れると今の時代どの特性にもかすらない人ってほとんどいないのでは…と思ってしまうのです。私はどっちかっていうとADHDかな?医師じゃないからわからないけど。

    さて、学校では3つのステージを子どもたちが自由に行き来できることが大切とあります。
    ①ユニバーサルデザインの学級(通常級)
    ②それでも特別な配慮が必要な子への合理的配慮(通常級、特別支援級)
    ③個別の特別な教育(特別支援級)
    先生たちも通常級と特別支援級両方できなくてはいけない時代になりました。いや、大変だ。

    医療と家庭と学校が連携していく時代になっています。でも、世の中はそのスピードについていけてない部分もあります。「合理的配慮」は学校だけでなく職場でも法令で「義務化」されているそうです。

    これからもどんどん変化していく学校、社会。
    どう「共生社会」を創っていくのかが問われ続けています。

  • しばらく積読になっていたけれど、今年度出会った子供たちの中で気になる子供がいたので、何か参考になることはないかと手に取りました。
    とても解りやすく書かれていて、親の立場、先生の立場、協力して出来ること、と書かれているところは良かったです。
    障害の有る無しに関係なしに、子供ひとり一人にあった環境で学べたら健やかに育っていくだろうな~と思いました。
    また、書名には「発達障害」と書かれているけれど、そうでない通常学級に通う子供を持つ人が読んでも参考になるのではないかと思いました。

  • 発達障害とそうじゃないとを分けての教育ではなく、ハイブリッド型の教育を推奨している。
    家庭と学校とでサポートすることは当然必要で、それでも本人もつらい思いをすることもある。
    向き合っていかなくてはならない問題だと改めて認識した。

  • 精神科医の立場からの考えが述べられており、学校現場的な視点で考えると全面的に肯定できる主張ではないと思う。
    「学校の標準の幅が狭い」という主張は正論ではあるが、子どもたちそれぞれに合わせた支援や指導を行なっていくためには、今の現場はあまりにも忙しく、人手が足りていない。
    保険的に特別支援学級に入級させるという主張も現場的な視点で考えれば、限られたリソースの中で適切な場所に支援の手を割り振ることができなくなるという点ではかなり困った主張のように感じる。
    学校現場にも変わらなければならないところはあるのは勿論わかるが、法律的な教室の設置基準や教員の配置基準などを変えて、余裕を持って子どもに関われるようにしなければ、本質的なところでは変わることはできない。

  • 学校選びの基本的な考え方を学んだ。
    学校選びを何を基準に考えて行った方が良いか、丁寧に説明されている。支援が必要な子ほど、早くから支援環境が整っている場所を選ぶこと(小学校1年4月〜支援を受けること)が大事だと改めて強く感じた。

  • 概ね共感しかない。

    今の学校は求めすぎ。
    学習内容にせよ、規律、教育課程も。
    ちなみに昼休みも謎の半強制ボランティアで休みじゃない。

    自主性、自律性といいつつ基本はトップダウンだし、多様性といいつつ画一的。
    矛盾だらけ。
    社会とのずれが大きすぎる。

    何から変えたらいいんだろう
    現場レベルでもできることはあると思う
    必要なのは、大人も子どももモチベーションが湧いてくるための心の余裕だと思います

  • 発達障害の子を持つ親や、学校の先生にはぜひ読んでもらいたい本。どんなことを学校に期待すればよいのか。学校をどのような場にしていくのか。これからの学校教育をどのようなものにするのか。「おわりに」に書かれた「子どもたちを追いつめるのは、もうやめませんか?」の言葉が切実に感じられた。具体的には、親と学校のコミュニケーションの取り方がとても参考になる。「要求」ではなく「相談」。

  • 固定概念を壊す

  • そろそろ我が子の小学校入学が見えてきたことと、身近なところに発達障害や自閉症である子がいることから、学校教育の中での発達障害を抱えた子供たちの環境や配慮を知りたくて手に取った本。

    以下、私の心に残ったポイントを中心に抜き出し。
    <サマリ>
    ・「授業や学習環境」と「子どもの特性」が合っていないことが、教室を飛びだしてしまう理由になるケースがある
    ・発達障害は、障害というよりも、少数の部族のようなものととらえると良い
    ・発達障害の子どもたちが学校で困ることの要因として、「学校の標準が狭すぎる」「子どもが標準的にやるべきことが多すぎる」ことが挙げられる
    ・子どもは「社会に出ていくための土台をつくる」ために学校へ行く
    ・文科省提唱の「インクルーシブ教育」とは、全員が共に学べるような仕組みで教育を行うこと
    ・曖昧な物事を理解するために、「視覚構造化」の手法が取り入れられることがある。曖昧な環境では子どもたちは「空気を読む」練習をしてしまう
    ・ユニバーサルデザイン⇒合理的配慮⇒特別な場での特別な教育
    ・子どもが本当に学ぶときとは、「ここまで来たから、次はもう少しやってみよう」と意欲をもって取り組んでいるとき
    ・小中学生で最も必要なことは、社会で生きていく力を身につけること。その子の得意なやり方で、すこしずつ、総合的に。
    ・学校が子どもたちにとって主体的に何かを学びとっているかどうかが大事
    ・子どもの意欲は準備に現れる
    ・勉強を通じて、得意不得意を知ることができる
    ・テストは努力の成果を測るものではなく、現状を知るためのもの
    ・子どもには、好きな事だけをやらせるのではなく、好きな事を活動の中心に置きながらも、実際にいろいろな体験をしてみることが大事
    ・成績よりも、モチベーションを大切にする
    ・特別支援教室では、「居場所」という発想を持つことが大事
    ・みんなで一緒、よりも、お互いリスペクト
    ・人に迷惑をかけてはいけない、という考え方は人の悪徳の一つ
    ・共生社会と作っていくためには、人情ではなく、契約で解決。自分の考えと相手の考えをどこで折り合いをつけるか
    ・教育は、共通項を少なく、オプションを多く。
    ・宿題で「むずかしかったらやらなくても良いよ」は子どもに劣等感を植え付けるような結果になることがある

    <所感・意見>
    タイトル通り、発達障害の子どもたちについて記載されている本だが、子どもとの向き合い方や声掛けの仕方、親のエゴが欲目が子どもに与える影響、という観点でも非常に参考になった。例えば「難しかったらやらなくてよいよ」とか、私も言ってしまってる。反省。
    この本は最初に5つの問いが出されていて、おおむね著者の回答と私の回答は似ていたのだが、1つだけまったく異なるところがあった。それは「学力」の定義。
    私は、「学力とは、自分の興味・関心がある分野で将来社会貢献していくために、その礎となる知識と考える力のこと」と記載したが、著者はより自分からの自発的なモチベーションや興味関心を主眼としていた。著者の意見が必ずしも正解というわけではないが、私は知らず知らずのうちに、「社会貢献」や「知識」といった成績偏重型の考え方が身についていたんだなと自分のバイアスに気づくことができた。

  • 教師向けの内容が半分はあったので
    読み応えは半分だった
    その前のシリーズも読んでみる

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著者プロフィール

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授。東京大学医学部医学科、東京大学附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院、横浜市総合リハビリテーションセンター、山梨県立こころの発達総合支援センター所長、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長を経て、2018年より現職。博士(医学)

「2020年 『障害者・障害児心理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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