電力と震災 東北「復興」電力物語

著者 :
  • 日経BP
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本棚登録 : 68
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822249991

作品紹介・あらすじ

東北電力は震災をどう乗り越えたか?気鋭のノンフィクション作家が綴る。

感想・レビュー・書評

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  • 東日本大震災で未曾有の大事故を引き起こした福島第一と対照的に、より震源に近く津波の直撃もくらった女川原発はきちんと持ちこたえて冷温停止できたということを以前聞いたことがあり、それについて知りたいと思っていたところ、この本を見つけたので早速読んでみました。
    読んで改めて、女川原発は設計時からきちんと1000年に1度の津波を「想定」していて対策を講じていたこと、その結果として東日本大震災を耐えたのであり、東電の「想定外」という言い訳がいかに認められないものかが改めて痛感させられました。
    一方で、現在の原発再稼働問題で、なぜその1000年に1度の震災と津波を現実にきちんと耐えきった「実績」のある原発が再稼働の見通しすら立たず、書類上のスペックだけで「安全」を論じて再稼働の優先順位を決めようとしているのか、大いに疑問を感じざるを得なくなりました。
    作者がこの本の最後で提言している、すべての原発を現物出資させて「原子力廃止機関」を作り、相対的に安全な原発を再稼働させてそこで得られたお金で残りの原発を廃炉にするという政策は、きわめて現実的でまっとうなものに思えます。今後の政策動向を注視していきたいものです。
    それにしても、東北電力の努力には頭が下がります。けなげとしか言いようがありません。これからもがんばってもらいたいものです。

  • ふむ

  • 東北電力のお話。震災ドキュメントに東北電力の歴史もからめてある。少々礼賛しすぎかなとも思うけれど、会長としての白州次郎の話、東京電力とは違う!というところを知ることができて良かった。

  • 福島と女川の違いは、東京電力と東北電力の違いであり、それは、原発のリスクを他の地域に置くのか自らの地域に置くのかの違いとして現れているのだと思いました。ついつい電力産業を「十把一絡げ」に東京電力のような体質である、と色眼鏡をかけてしまいがちなところに「ちょっと待った!」と声をあげています。そして会社設立のころの経緯まで遡って、そのDNAを紐解いてくれます。その時点から既得権益の中央と共存共栄の地方という構造が埋め込まれていることを熱く訴えかけます。先週、仙台で国連防災世界会議が行われましたが、そこでテーマ先進エリアとしての東北を強く実感しましたが、この地方が未来を築くためには本書にある、東京コンプレックスの解消が大切なような気がします。さて、2016年の電力自由化は東北電力という会社と東北というブロックに何をもたらすのでしょうか?

  • 福一が大変なことになっているのに、女川が避難所になっていたのは、『なぜか』表立たなかった事実。

    その根底が経営思想の違いにあるとは考えてもみませんでした。

    経営者のセンスというものは恐ろしいですね。

    さすが、次郎さん。

  • 未曾有の震災でも女川原発を過酷事故にさせず、また自らも被災者である従業員が、ライフラインである電力普及に奮闘した。それを、「電力会社」だからといって東京電力と一緒に語るべきではないという作者の気持ちは良しとしたい。
    ただし一方で、日本の電力供給における課題に向けた、被災地としての東北電力の立ち位置までの踏み込みが不足していると思う。

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著者プロフィール

町田 徹(まちだ・てつ)
 経済ジャーナリスト、ノンフィクション作家。1960年大阪府生まれ。
 神戸商科大学(現兵庫県立大学)商経学部経済学科を卒業。米ペンシルバニア大学ウォートンスクールに日本経済新聞社より社費留学。甲南大学マネジメント創造学部非常勤講師。
 日本経済新聞記者、雑誌編集者を経て、独立。著作活動を軸に、雑誌への寄稿や講演活動も手掛けている。
「日興コーディアル証券『封印されたスキャンダル』」(月刊現代二〇〇六年二月号)で二〇〇七年「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」大賞。
著書に「JAL再建の真実」(二〇一二年 講談社現代新書)、「東電国有化の罠」(二〇一二年 ちくま新書)、「日本郵政 解き放たれた『巨人』」(二〇〇五年 日本経済新聞社)、「巨大独占 NTTの宿罪」(二〇〇四年 新潮社)ほか。

「2013年 『行人坂の魔物――みずほ銀行とハゲタカ・ファンドに取り憑いた「呪縛」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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