- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784834081374
感想・レビュー・書評
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迷妄
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70頁くらいで、この主人公、めんどくせぇ奴だな!と思ったところで、バ嬢でもそういう風に紹介されていたのを思い出して、一人笑ってしまう
そこからは、主人公に感情移入して読むのではなく、主人公を観察して読む視点に脳内切り替え
自分だって中高生の頃はそういうメンドクサイ、デモデモダッテ思考をしていたりもした。けれど、この主人公はそういう過去の思い出をなぞろうとして感情移入をしようとしても、度を超えてメンドクサイ奴だった
そして、彼のデモデモダッテは、好きな子を巡ってのライバル(仮想的)とのバトルのみであり、それは彼の世界が崩壊していくなかでも、変わらず彼の思考のほぼすべてであり、変わらないであるが故に、状況が悪化するほど彼の思考の異質さが浮き上がってくる
しかし、読んでいる方も、うわーもー(恋愛について)もっとスパッと考えろよめんどくせぇなあ!と感じてしまうあたり、主人公の思考に引っ張られていたのだろう。本当はもっと、お前そんなことより今はやるべきことがあるだろう!と感じるべき事態なのだから
結局最後まで主人公の性質は変わらず。そんな性質も今後成長したら変わっていくのか、この異常事態を経てなお変わらないところをみるとずっと不変なのか -
『バーナード嬢曰く』で紹介されていたのがきっかけで読みました。おもしろかったです。主人公がグルグル思考が堂々巡りするひとで、その叙述を読んでいると、自分のことを言い当てられているような気がしてしまいました。【平成30年10月11日読了】
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ある日突然町の裏山に火球が落下する。高校生の「ぼく」はさして仲良くもない平岩に半ば強引に誘われて落下地点を見に行く事になるが、「ぼく」の席の後に座る松本零士の描くところの女性に似た美少女久保田葉子がいっしょに行くと言い出して・・・。
突然「降って」きた非日常に侵食される日常。じわじわとゆっくり、決して認めたくない現実として。
繰り返されるフレーズがぐるぐると渦巻きながら、少年の感情を視覚化する。思春期の制御しがたい感情と格闘しながら、主人公は考えたくもない非日常と対峙する。それはこれから起こることかもしれないし、すでに起こったことかもしれない。
心がざわつく青春SF。若い人ならどう感じるか、感想を聞いてみたい。
そして、アニメ化、いかがですか? -
ぼくらの町のはずれに、火球が落ちてきた。隕石ではないらしく、その正体はわからない。真相究明に熱心な友人、しかしぼくが気になるのは同級生の女子のことだ。
常に冷めたスタンスでいるぼくは、事態の進行に応じてやはりその態度を保とうとする。文面はそんなぼくの一人称でとつとつと語られていく。自意識過剰な自分を制御しようとする努力、周りの人間へ批評。共感できたし、非常時だろうが人間こんなもんかも知れないというリアリティもある。
読者をおきざりにするようなラスト、児童書でこの終わり方はありなのか? と非常に疑問を感じたけれど、取ってつけたようなまとめより正解なのかもしれない。
おかげで読了後しばらく経ってもぼくのフレーズがこだまする。迷妄のとりこ 僕は蔑む ヒロイズムの延長 カドリールを踊る などなど。問題作だと思う。 -
児童文学において、ひとつの特異な形式が有るように思う。
それは、二人称で描かれた物語であったり(「きみは〇〇した」的な)、普段読む小説とは異なる形式である。もしかしたら、幼い頃は、三人称の物語は複雑であり、一人称や二人称の方が読み手にとって受け入れやすいものなのかも知れない。
しかし、大人になって読むと「面白い書き方だなぁ」となる。
これは、非常に手の込んだきれいな作りの本である。
文字の数や挿絵のバランス、1ページ1ページが目にとって心地よいリズムを刻む作りになっている。どれだけ愛情を掛けられたのだろう。創り手のことを思うと、それはもう、うっとりしてしまう。
そしてこの作品は「ボクラノエスエフ」のレーベルの1冊なのだが、主人公の思考回路や口調が「えっ。これは子供向けなの!?」と笑いたくなるくらいに几帳面だ。おかしなことが起きても、気になることはそれなのか!と突っ込みたくなる。
理路整然と書かれた、主人公の迷妄を読み進む内に「もしかしてこれは詩ではないか」と思えてくる。迷妄ワールドへようこそ! っていうか、迷妄ってすごい単語だな。