リニアが日本を改造する本当の理由 (メディアファクトリー新書)

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  • メディアファクトリー
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840151764

作品紹介・あらすじ

超電導電磁石により、時速500kmで本州を縦貫するリニア新幹線。地震の心配が少ないルートで、東京‐名古屋40分(2027年開業)、大阪までを67分(45年開業)で結ぶ未曾有の交通インフラだ。日本の三大都市が一気に近づいて形成される新しい経済域を関係者は「大交流リニア都市圏」と呼ぶ。新都市圏で暮らしは、経済はどう変わるのか。日本全体への影響は。細密な考察と骨太な提言で著名な都市計画論者が明かす、われわれの未来。

感想・レビュー・書評

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  • リニアの歴史、リニア中央新幹線の進捗、リニアが開業したときの効果について、分かりやすく書いてある。最後の開業後シナリオは、ワクワクします。

  •  確かに、電車特急こだま号による東阪所要が10時間→6時間半(日帰り可能)になった時、あるいは、東海道新幹線開通に伴う6時間半→3時間(フルで仕事可能)の場合は大きな効果があっただろう。

     しかし、東名間の所要が、現在の1時間半→40分になって、本書にいうほど経済効果があるかなぁ?。しかも、ネット環境が情報伝達における空間の意味を激減させている現代ではどうかな?。
     リニアという一個の交通機関が地域を一体化するというのは余りに牧歌的で信憑性はない。
     
     むしろストロー現象、長野現象の全国への波及の方が危険?。しかも本書では、この経済のマイナス効果につき数字を上げない。まさに血税空港建設と同じではないのか。


     ただし、老朽化する東海道新幹線のスペア、修復・改修のためのバイパスが必要なのは確かだ。
     とくに後者に関し、北陸新幹線の京都ないし大阪延伸では東阪は兎も角、名阪や東名のバイパスにはならないことからすれば、何らかの手当はいるだろう(ただし、リニアである必然は全くない)。

     また、海外売込みのための技術的ブレイクスルーの意義だけは否定しづらい。ただし、売れるかどうかは定かではないが。
     リニアによって実現するのが、東京・大阪間の500㎞が1時間で結合することだろう。現代においては、航空機に対する鉄道の優位性が4時間圏内ということであれば、距離2000㎞の間に、大量の人員輸送が必要かつ現実的な人口稠密地帯間の交通機関としては、意義がありそうだが…。果たして…。

     まぁ、結局、費用対効果の問題だが、ここで挙げられる費用に鑑みると、流石に悪すぎるのでは…。飛行機とロケットに金を掛けた方が…。

     なお、近畿圏はシンガポール化を。

  • 2013年9月に発表された、リニア新幹線の停車駅。
    これまでリニアについての情報を積極的に集めていなかったので、「いつの間に・・」という印象を受けました。
    この本は、前著『山手線に新駅ができる本当の理由』で、僕を”都市政策”という分野にいざなってくれた、第一人者による新作です。
    まず、リニアモーターがどのような計画で進められてきたのかを紹介した後に、中間駅はどこになるのか(出版は2013年6月)、そしてリニアが開業するとどのようなことが起こるのか、さらにはリニアを起点とした日本の未来についての考察へと進んでいきます。
    これまで"自治体負担"としてきた中間駅建設の費用をJR自らが負担することなどを取り上げて、リニア開業をJRが急いでいるのは、「現行の新幹線の老朽化」だと説明しています。
    そして、東京-名古屋間(2027年開業予定)が40分、東京-大阪間(2045年開業)が1時間で結ばれることにより、東京-名古屋-大阪が7,300万人という、ひとつの巨大都市圏となるとうことを、具体的なイメージを交えて説明しています。
    メリットについて書かれた後半部分については、山手線新駅の著作である程度触れられていたので、イメージを持って読むことが出来ました。
    そして僕が興味を持ったのは、このリニア建設の背景として、大深度を掘削するトンネル技術の発達が寄与しているということ。
    長野県の山岳地帯を迂回しなければならなかったところを、技術の進歩で直線的に結ぶことが出来るようになったと、書かれています。
    さらにはこのリニアのために、大深度地下使用法という法律を成立させて、40m以下の地下であれば公共事業を行って良いというルールになったとも書かれています。
    日本の大動脈を担う、リニア新幹線。
    その推進にはドル箱路線である新幹線の停止(改修工事)の影響を低減したいというJRのもくろみ、そして交通・建築技術の発達、さらには法律の整備といったさまざまな要素が関わっているのだなあと、本著を読んで理解しました。
    子どもの頃「未来の乗り物」として紹介されていたリニアモーターカーが、現実となる。
    その日を楽しみに待ちたい!そんな気持ちにさせてくれた一冊でした。

  • この本を読むまではリニアモーターカーなど遠い先の話と思って考えていたが、東京ー名古屋間に限って言うと2027年である。東京オリンピックから7年後の話と言われると割と最近のような気がする。リニアは山梨や長野といった内陸部を通り、東海道新幹線のバイパスの意味が強く運賃も新幹線より700円しか違わないのにたった40分でつながるというから夢も広がるというものである。大阪までは2045年で今から31年後ということであり、さすがに両親とも100歳を超えるのでなくなっていると思うので個人的に利用する機会は少ないだろう。

  • 2027年にはリニア新幹線が開業し、東京〜名古屋間40分で行けるようになるという。

    リニアの歴史から、その経済性、利便性などなど。へぇーなお話がたくさんありました。

    なお、タイトルの日本改造の本当の理由とは・・・東京圏がますます巨大化するからという、地方在住者としては取り残された感もあって、ちょっぴり寂しい気分ですが、まぁ、多分その時まで生きてられそうにないので夢物語とうかがっておくこととします。

    (2013/12/6)

  • いつもお世話になっている新幹線が「元祖!夢の超特急」ですが、私の年代にとっては子供の頃から時速500kmといわれるリニアモーターカーがそれに相当します。宮崎での実験から、山梨で実験を続けているのは知っていましたが、議論されていたルートも最新ルートに決定され、事業化計画が決まったようです。

    品川ー名古屋間が先行営業で2027年から、最終的には大阪まで2045年に完成予定です。新幹線の時は国鉄だったので当り前ですが、今回も建設費用が莫大なので国の予算でやると思っていたら、JR東海がお金を出すのです。特に、名古屋までの通過駅(一県につき一駅)までもJR東日本が負担する(p26、71)ようです。

    凡そ10兆円の事業費で莫大なお金ですが、完成すれば多くの人がその利便性を共有できるので、よいお金の使い方だと思います。

    この本には、なぜリニアを建設するのかについて様々な角度から解説がなされています。リニアが完成することで、日本には世界でも類を見ない巨大都市群ができるようです。これも自動車ではなく鉄道を移動手段として都市を発展させてきた日本の強みなのでしょう。これからの日本に希望を与えてくれる本だと思いました。

    特に面白かったのは、アクセシビリティ・マップ(p35)でした。1930,1964,2045年の比較で、日本国内を短時間で移動できるようすがよくわかる図でした。また、東京から大阪までの大中都市を合わせて、合計7300万人の都市圏が一つになる(p106)という図も良かったです。

    以下は気になったポイントです。

    ・リニア中央新幹線が完成すれば、東京名古屋が 340→286、大阪までが 520→438Kmになることもあり、96→40分、145→67分と短縮される、リニアが通ることで東海道一帯の形が劇的に変わる(p14)

    ・2013年度中には山梨実験線の延伸工事が完成して、長さ42.8kmの実験線は開業後にそのまま本線に転用される、2014年度中には本格的な工事に着工する(p19)

    ・当初別々の計画が進められていた「リニアモーターカー(鉄道総研)」と整備新幹線としての「中央新幹線」が一本の計画に統合されたのは、1980年代の終わり(p20)

    ・JR東日本は民営化時に 5.5兆円あった負債を約25年で2.8兆円までに削減した、なので新たに5.4兆円背負っても経営的に問題ないとした(p23)

    ・土木技術の進歩により、当初は不可能だと思われていた南アルプスを20kmにわたってトンネルで貫通するルートも建設可能になった(p25)

    ・現在の新幹線のバックアップとなる路線を一刻も早く用意するためにも、リニア新幹線が必要(p29)

    ・東海道新幹線が一本通ったことで、企業は大阪から東京へと大移動をおこし、日本経済の中枢は完全に東京圏へシフトした(p32)

    ・超伝導とは、物体を極低温に冷却した時に電気抵抗がゼロになって永久に電流が流れる現象、リニア台車の兆円伝導磁石は液体ヘリウムにより超伝導となっている。ただしそれにより10cm浮き上がるのは 時速160km以上で、それまでは台車につけられたゴムタイヤで走行する、3つの原理として、推進・浮上・案内がある(p40)

    ・都営大江戸線もリニアモーターであるが、推進のみリニアモーター、浮上には車輪、案内にはレールを使用(p43)

    ・2000年には「大深度地下使用法」が設立し、地表から40m以深、または、建物支持基盤の最も深い部分に10mを加えた深さの「大深度」においては、地上の所有者の許可なく建設可能となった、これがリニアを後押しした(p51)

    ・2003.12には、3両編成の友人走行にて、時速581kmを達成し現時点(2013.5)での世界最高記録(p53)

    ・客室内の磁界の強さは基準値の 0.9%であり、ペースメーカの動作異常は発生していない(p55)

    ・東京ー名古屋の所要時間は中間駅が4駅あると、20分以上も増えて合計1.5倍かかる、減速・乗客乗降時間・加速時間が加算されるため(p67)

    ・東海道新幹線の最高速度が270に対して、山陽新幹線は時速300km(東北新幹線:320)なのは、軌道の構造(コンクリート製路盤のスラブ軌道)や線路設計(より直線)であるため(p173)

    2013年11月3日作成

  • 昨日、リニアモーターカーの新型車両による走行試験が山梨県の実験場で2年ぶりに再開されたとのニュースを知り、いよいよ時速500キロの世界が現実化してきたのかと気になって読んだ本。
    著者は大学教授で都市政策の専門家。

    新幹線でも十分早い乗り物ですが、東京~名古屋を40分、東京~大阪を67分で結ぶ、さらに早いリニアを実現化させるための必然性が解かれています。
    移動時間の短縮に加えて、人の流れや、居住環境の変化に伴い、経済発展も望めるという夢のような展望です。

    JRは、線路を引く場合、基本的に駅の建設費は拠出せず、沿線自治体が建設費を出しているということが、意外でした。

    ただ、今回は建設を急ぐために、中間駅(神奈川、山梨、長野、岐阜、三重、奈良)の駅はJR東海の負担で建設する案が出ているとのこと。
    急ぐ理由としては、東海道新幹線の老朽化、そして大地震や津波などの自然災害に備えてだそうです。

    リニアモーターカーというくくりは、すでに日常で運行されているということも驚きでした。
    都営大江戸線や大阪や神戸、横浜、福岡の市営地下鉄もリニアモーターカーなのだとか。
    とはいえ、鉄輪式で超電導ではなく、浮上はしていないそうです。

    まだ詳細は決定されていない、推測の段階ですが、2027年に名古屋まで、2045年に大阪まで開業する予定されています。
    2027年とはまだまだ先のことだと思っても、14年後となると意外にあっという間。

    東京から名古屋まで、そして大阪まで伸びた東海道スーパーメガロポリスパターンがそれぞれ紹介されており、現状では考えられないながら、リニア開通後は名古屋が東京のベッドタウンになるという可能性もありそうに思います。
    最終章で紹介された開業後のシナリオを読むと、いよいよ近未来が近づいて現実味を帯びてきたと感じます。

    日本では、毎日300本以上の列車が走り、1日40万人以上が鉄道を利用しているのだそう。
    新幹線の中でも最多乗車数を誇る東海道新幹線は、年間一兆円の売上だと知り、鉄道が動かすお金の大きさに驚きました。

    鉄道についてはまったく詳しくありませんが、都留のリニア実験場に勤務し、長年走行実験を続けている知人がいるため、いよいよ実現間近となってきたことに感慨深い思いになって読みました。

  • 掲載されているデータに感動する一冊。文句なしに上期のトップ。
    著者は東京と都市計画審議会を歴任する都市政策専門家。

    金丸信をフィクサーとして構想された首都機能移転は、リニアの実現を経て東京・名古屋・大阪が高密度に連携する東海道スーパーメガロポリス(著者のつけた仮名)に結実していくとされる。

    実際のリニアが停車する品川駅や大阪府駅の概要図面など見ると、2045年(名古屋までの開通は2027年)の日本を垣間見た思いがして鳥肌すらたつ。

    在阪の自分としては、大阪市営地下鉄の民営化や天王寺再開発、北ヤード開業などに対する見方も、大阪と外とを結ぶネットワークを見てこそ評価できるのではないかと感じた。

  • アセスは環境影響評価方法書→準備書→評価書→報告書の4種類ある。
    最近の法改正で、配慮書が付け加えられた。
    2013年7月現在、方法書が開示され、準備書に移る途中。

    線形は最大40‰、R8000
    東海道新幹線は最大15‰、R2500

    車両基地は相模原と中津川。中津川が総合車両所

    乗り換えは3分ー9分、最大15分

    新横浜はこだまが一時間に1本の駅だった。
    地名が駅の名前にならって改名された
    横浜市営地下鉄が通って一気に発展
    ひかりが51本とまる
    さらに横アリ、と日産スタジアムで加速
    現在すべてののぞみが止まる
    40年で駅が発展させた例

    都市圏人口
    東京3562 名古屋1134 大阪1989 3:1:2

    経済が停滞している現在では、東京以外で開発プロジェクトを成功させるのは難しい

    本では便益と生産額の変化(経済波及効果)を別個にしているが正しいのか?

    羽田の発着枠が空く
    品川ー田町間の再開発
    中部国際空港が利用圏内
    →品川周辺の価値が一気に向上(国際新都心)

  • 高校時代に読んだ「超電導」の本で原理を知ってから、早20数年。未だ実験中というリニアの経済効果についての考察が載っているんじゃないかと、ちょっと期待しながら購入。読了しました。
    ここ最近(半年くらい)になってリニア新幹線の実現に向けた動きが活発化してきたこともあり、「これまでの経緯」、「開通に向けた今後の動き」、「経済効果試算」及び「利便性の考察」などが載ってました。
    途中、「大阪まで開通した場合」と「名古屋まで開通した場合」の前提がころころ変わるところもありましたが、具体化が進んでいるところには興奮しました。
    「地元至上主義」の名古屋人(愛知県人)が、リニア新幹線開通後、どれくらい動きを変えていくのか、とっても気になりますww

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著者プロフィール

明治大学名誉教授。東京の本郷に1947年に生まれ育つ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院修士課程、博士課程(都市計画)を経て、カナダ政府留学生として、カナダ都市計画の権威であるウォータールー大学大学院博士課程(都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士でもある。ODAのシンクタンク(財)国際開発センターなどを経て、富士総合研究所(現、みずほ情報総研)主席研究員の後、現職。日本と東京のこれからについて語るために国内、海外で幅広く活動する他、東京の研究をライフワークとして30年以上にわたり継続している。『東京一極集中が日本を救う』(ディスカヴァー携書)、『東京2025ポスト五輪の都市戦略』(東洋経済新報社)、『山手線に新駅ができる本当の理由』(KADOKAWAメディアファクトリー新書)など著書多数。NHK「特報・首都圏」、日本テレビ系「スッキリ」、TBSテレビ系「ひるおび」、テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」などテレビ出演多数。

「2021年 『新宿の逆襲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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