ふったらどしゃぶり When it rains, it pours (フルール文庫 ブルーライン)

著者 : 一穂ミチ

• メディアファクトリー (2013年9月12日発売)

感想・レビュー・書評

[rabbit30signさんの感想 · 2014年9月19日]

冒頭、二人の対比が印象的
パートナーに対してへの想い。ベッドの距離。雨への思い。
作中、雨が効果的に使われている。

メールのやりとりを通して気になる存在になる二人。
同期会でお互いの正体？がばれそうになるシーンはドキドキした。
女性とのセックスで悩んでいる一顕ペアの方に感情移入して読んでた。かおりは何故セックスを拒んでいるのか、理由がハッキリするまでやきもきしてた。女性の、セックスなくてもいいのでは？という気持ちが理解できるから、自分に置き換えて読んでハラハラしてた。
メールのラリーでお互い自分の中で渦巻いてるものを整理して吐き出してる感じ。
お互いの正体がわかったシーンは少しまぬけで笑ってしまった。
バレたあとの焼肉屋の会話も面白い。遠慮なくポンポン会話が進んでいって、シモの話もでてきて読んでてスカッとする。
そして、徐々に変化していく関係。
一顕とかおるの関係にヒビが入った時、「つらい」の電話から「すぐ行く、待ってて」の所はドラマみたいで盛り上がった。
そしてここでも雨が印象的。遂にタイトルのふったらどしゃ降り。
前向きな浮気。いびつな形ではじまったセックス。タイトル通り悪いことは重なって、転がり出した石は砕けるまで止まらないように勢いよく進んでいって、集中して一気に読んでいった。

[azuwashiさんの感想 · 2014年9月15日]

好きーー！前のと似てるけど。リーマン好き。

[琴さんの感想 · 2014年8月17日]

BLだけどBLっぽくない作品。
人と付き合うってどういうことなのか、じっくり考えさせられます。

[さやさんの感想 · 2014年7月23日]

需要と供給の話。
うん。
うまく言えないけど、セックスのしたい男子の話。
恋する人、愛する人とセックスをする。
簡単明快なのにどうしてうまくいかないのか。

そんなことを思ってしまった。
好きだの一言。
愛しているの一言。
貴方を大事にしているの一言。
そのことを言えない。実行に移せない。
そんな悲しくて哀しい大人の話。

恋愛の「恋」の部分。「愛」の部分。精神の部分。肉体の部分。欲の部分。
いろいろな部分があって人。恋愛。なのかなぁ～
とか、思ってしまった。
男も女も哀しい。切ない。難しい。

[もちっこさんの感想 · 2014年7月2日]

雨が題材ってのもあるかもだけど、この方のウェットかつセンシティブな比喩表現がものすごい好き。あと、会話のテンポと細やかな心理描写。お話も幾重にも意味が重ねられててもえました

[juanakitschさんの感想 · 2014年6月23日]

評判の良い作家さんのようで期待して読んだけれど、思ったより雑でがっかり。主人公二人が手探りしながら惹かれ合っていく過程は微笑ましく好きなのだけど、それぞれの元々のお相手がキャラ設定だけで生身の感じがなく、その腑に落ちない本心が終盤で一方的にぶちまけられる構造に萎えてしまいました。。

[miki kisaragiさんの感想 · 2014年5月18日]

BLなんだけど、別にその枠で読まなくてもいいと思う。
（ちゃんと男同士である必然もあるし、そこに問題はないけど）
とても心情が丁寧に読み取れるお話で、大きな感動とかいうのはないんですが、これはずっと私の気持ちに残る話には違いない。

web連載だったそうですが、現在（2014.5月）多分これを読んだ人のうちかなりの人が気になっているであろう和章さんの話が連載されていて、たぶんそこで救われるのかなぁと楽しみにしています。

一穂ミチさんを遡って読むと、ある時から急にすごく巧みになった方で、ここ最近楽しみで仕方ないです。

[Tsunさんの感想 · 2014年5月9日]

話としては良かったけど、あまりＢＬを読んでいるという感じがしなかった。

どういうわけか、整の同居人、和章がなんというか、生身の人間じゃなくて、ＳＦにでも出てくる、バーチャルな機械的な疑似人格みたいに感じられて仕方なかったな。

[腐った林檎さんの感想 · 2014年2月16日]

初めて読んだ一穂ミチさん作品。 基本的にＢＬ小説には手を出さないようにしてるんだけど、通りすがりにタイトルに惹かれてそのままレジへ…。 ヤバい、直感というか必然というか、出逢うべくして出逢ってしまった作品。初読で いきなり一穂さんの傑作を引き当ててしまった気がする。 全てがこのクオリティなら幸福死できる。

同棲中の恋人とのセックスレスに悩む一顕と、同居人の幼馴染みに片想いしている整。 ふとしたキッカケで急接近する二人の、男の性と人としての欲望、寂しさと人恋しさが真摯に描かれた１冊。 これはＢＬというには重いテーマで、でも「当たり前の欲求」を書き表すことでとても共感しやすく読みやすい文章で綴られた作品。
女性には理解しづらい男性の心理が、静かだけどとても孤独に書かれている。 自分がそれなりな歳になったからこそどちらの言い分もよくわかるし、「ご褒美だったセックス」が「日常」になり「義務」から「面倒くさい・煩わしい」ものに成り下がってしまう過程が非常に生々しかった。

しかし、「だから同じ性別の同じ苦しみを持つ二人が抱き合うようになったのは自然なこと…」とは思えず、二人が互いを初めて求め合う場面だけは、読み返しても未だ納得は出来ずにいる。 整はともかく、元々ノーマルで女性を求めていた一顕が、いくら想像していたにしろ整にリアルな欲情が出来るだろうか？という疑問が拭えない。
まぁ一度致してしまった後の感情の盛り上がりは良くわかるので、喉元過ぎれば気にならなくなる程の熱量がある作品だった。

お互いが相手を求めるのに障害を乗り越えた後の話がもっと読みたかったなぁ…( ；∀；) と余韻に浸りすぎるくらい、自分の感情をもっていかれた読後感。 ふと検索したらｺﾞｼﾞﾂ談の同人誌が２冊出ていたので迷わず購入。 ついでに既刊で手に入る同人誌もまとめ買いしたので、それらの元作品も読んでいきたい(順序が逆)
ただ、この作品の満足度がかなり高いので、他の作品に対するハードルが自然と上がっている。 他を読むのが楽しみであると同時に不安が生まれてしまった(苦笑)

[valancyblueさんの感想 · 2014年2月1日]

始まりは一通の間違いメール。交わされる些細なやりとり。互いの顔も知らない、何の責任もない相手だからこそ、誰にも打ち明けてこなかった本音を吐露できる気安さ。その相手が実はお互い苦手意識を持っていた会社の同期だと知った頃には、驚きよりも共感しあえる親密さの方が勝っていた。いつしかふたりは秘密を共有する運命共同体になる。
抱かせてもらえない男と抱いてもらえない男。
『つらい』と一顕から発せられたSOSにいちもにもなく飛び出して行った整。
『セックスがしたい』という一顕の願いを当たり前みたいに受け止める。堰を切ったように溢れ出す欲情。それはもう『ふったらどしゃぶり』とばかりに。どしゃぶりの雨に流されてふたりして情欲の洪水に溺れる。それはもう誰かの代わりなんかじゃない。
『この身体がいらないなんてぜいたくだ』と整が言うくだりがひどく胸に迫った。
整を囲いこむ和章の歪んだ愛情はまだしも、子供を作る時しかしたくないというかおりの身勝手は理解に苦しむかも。本当に欲しいものを相手にあげられないのは切ない。お互い相応の犠牲は払っても、雨降って地固まる…みたいに行き着く先をふたりがみつけられてよかった。

著者プロフィール

2007年作家デビュー。以後主にBL作品を執筆。「イエスかノーか半分か」シリーズは20年にアニメ映画化もされている。21年、一般文芸初の単行本『スモールワールズ』が直木賞候補、山田風太郎賞候補に。同書収録の短編「ピクニック」は日本推理作家協会賞短編部門候補になる。著書に『パラソルでパラシュート』『砂嵐に星屑』『光のとこにいてね』など。