同名の展示の図録がベース。村上春樹本人のエッセイがすこしと、村上作品(小説、エッセイ、翻訳)に映画が言及される箇所をピックアップし、その映画の解説や時代背景が語られ、後半には映画と村上春樹に関する論説、インタビューが掲載されている。二週間ほどで書いた卒業論文「アメリカ映画における「旅」の思想」、読んでみたいけど難しんだろうなあ。当時の指導教授の印南高一先生に褒められて「君はゆくゆくはものを書く道に進むといい」とアドバイスされたそうな。シナリオ作家を志していたけど、いま考えると無理だった、自分は基本的に共同作業というものに向いていないから、という述懐。お金がないころに演劇博物館でシナリオを読みまくって、自分の頭の中で上映して楽しんでたから、いまでもそれが映画館で実際に観たのか、自分の頭の中で上映したものなのかわからないものもある。ただそれが小説家となってから活きているところもある。といったエピソードは興味深く。映画化に際しても、最近のものは安心してみてられる、どんどん筋も変えてくれて、どんどんセリフも変えてくれてるから、別物のように楽しめるから、といった趣旨のことが語られていて。巻末の論説でも、原作への「忠実性」より「想像性」が大事、と指摘している方がいたなあ、と。あとフィッツジェラルドの未完の遺作「最後の大君」の翻訳出てたんだ、これは読んでおきたい。