あの湖のあの家におきたこと

  • クレヨンハウス
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  • Amazon.co.jp ・本 (41ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861013867

作品紹介・あらすじ

その家を建てた作者の曽祖父一家はナチスに追われ、その後に住んだ音楽家一家も徴兵を逃れ家を出ます。戦後に暮らした家族は「ベルリンの壁」によって湖と隔てられ……。
ベルリンに実在する一軒の家の変遷から戦争、分断の歴史を見つめる物語。
この100年に起きたことを描いていますが、「昔あったこと」ではなく、世界中で分断が進むいま、同じことをくり返さないためにあらためて読みたい1冊。

感想・レビュー・書評

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  • 戦争さえなかったら、この家は、美しい湖の風景とともに住む人々の幸せな暮らしを見つめていられたのに。家は何も語りませんが、戦争のもたらす破壊、差別、戦後も続いた分断をすべて知っているのですね。

  • 2021絵本50

  • 一軒の家を通して、激動の時代を描く。

  • トーマス・ハーディング (著), ブリッタ・テッケントラップ (イラスト), 落合恵子 (翻訳)

  • 100年の間にこの家に何が起きていたのか、現代版「ちいさいおうち」。実話を元に作られた絵本。
    そして今も世界のあちこちで戦争や紛争が起きていて、犠牲者は一般人。特に女性とこども。というおなじみの景色。戦争で儲けている企業や団体がいて、煽ったり長引かせようとしているのではないか。誰が得をしているのか。先の大戦の教訓はどこに行ってしまったのかな。
    強欲で頭の固い、自己中心的な人が指導者って最低。


  • ずっとむかしのこと。湖のほとりに、小さな木の家がありました。その家に住むのは医者とその妻、4人の子どもたち。騒々しい街を離れ、家族は幸せな時間を過ごしていました。しかしある日、兵隊がドアをたたき、家族に家を出ていくように命じました。それから一年後、新しい家族が家にやってきましたが、戦争はどんどん身近に迫ってきていて…。
    ベルリンに実際に存在する家がたどった数奇な運命。戦争と分断、その歴史を今に伝える絵本です。

  • 作者のひいおじいさん夫婦が、ベルリンの町外れの湖のほとりに建てた木の家。家族は、湖とともに楽しく幸せに暮らしていたが、ユダヤ人家族はナチスによって、この家から追い出されてしまう。その後、何組もの家族がこの家と湖で暮らすが、ある年家と湖の間に塀が作られてしまう。やがて、塀は壊され自由に湖へ行けるようになるが、古くなった家には住む人が居なくなり、荒れ果てる。その家を作者が再生し、レクリエーションセンターとなった。
    ベルリン版「ちいさなおうち」みたいだ。

  • 湖のほとりに立つ家が、みてきた戦争ゃ差別、分断。ようやく訪れた平和の意味を静かに、伝えてくれる。絵もとても美しい。今も戦争、侵略、差別が続いる中で、噛み締めたい作品。落合恵子さんの訳

  • ずっと昔に、優しい医者と明るい妻は湖のほとりに小さな木の家を建てた。4人の子どもたちと暮らすために。
    野菜を育て、鶏を飼って、湖で泳ぎ、夜は父親に暖炉のそばで読み聞かせをしてもらいました。
    家はとても幸せでしたが、ある日家族は兵隊に言われて出ていかなくてはいけなくなりました。
    その後、音楽家の家族が住みましたが、その一家も従軍命令を受け取ったときにそこから逃げました。
    戦闘機が上空を飛び、夜空がオレンジ色に染まっていきました。
    音楽家の友人夫婦がしばらくこの家に避難してきていましたが、煙突に玉が当たって砕けると逃げていきました。
    その後、あたたかそうな帽子をかぶった男が家族を連れてそこに住みました。家は修理され、子どもたちの笑い声が響きましたが、ある日、湖との間に塀が建てられたのです。

    第2次世界対戦前後の人々の暮らしを、曽祖父が建て祖母が暮らした「家」から見た物語。






    ******* ここからはネタバレ

    1927年に建てられた家が、100年近くも利用されていることに、日本人の私は驚かされます。
    だって、この家は木造だからです。日本の木造住宅の寿命は30年と言われていて、普通に建てられた家が100年持つことは非常に稀なんです。もちろん、高温多湿の気候の影響もあると思いますが、建て替えずに修理して使う文化の違いも大きいと感じました。

    こんな絵本ができるほど長寿の家があるんですねー。

    そして、そこに住んでいる人のことなんて全然考えず、公聴会も説明会も開かれずに「壁」ができたようすがよくわかります。
    絵から察するに、これで日当たりが悪くなったということはなさそうですが、湖の恩恵がなくなったというのは大きな負の変化ですよね。
    今ならはしごを掛けたりトンネルを掘ったりして出入りしてしまいそうですが、当時はそんな事もできなかったのでしょう。この辺の閉塞感についての描写が、当時を知らない読者のためにも望まれるところです。

    正直私は、この家にあまり感情移入できませんでした。事実ばかりが語られて、戦争で壊れたときでも、家の気持ちが綴られていなかったからかも知れません。
    察することが読者に求められていたのでしょうが、「ちいさいおうち」のように気持ちを語ってほしかった。どうしてほしいのかわからないのでモヤモヤしましたんです。

    さらに、なんか最後に家を直した著者が英雄的にも見えてしまって、何なのー?って気持ちにもなったんです(←私のやっかみ)。


    この本自体はむずかしくありませんが、含まれているものを理解するには歴史的な知識も必要です。せめて「壁」のことを知っている子にオススメしたいです。

  • 家は幸せな一家にとって「魂の居場所」でした。
    しかし、第二次世界大戦をはじめとした戦争、迫害と差別、分断により、家はその場で愛と憎しみを見つめ続けます。「ナチス」「ベルリンの壁」がキーワードになります。
    やがて…教育やレクリエーションの場として生まれ変わっているそうです。
    湖の家がこれからもやすらぎの場所であるよう、私たちは歴史から学ばなければならないと思いました。

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著者プロフィール

英国、ロンドンに生まれる。英米の大手新聞で執筆する作家でありジャーナリスト。英国のオックスフォードにテレビ局を設立し、数々のドキュメンタリーも制作。また、米国ウエストバージニア州の地方紙も運営し、2011年、同州司法協会からジャーナリストオブザイヤー賞受賞。この絵本の元になったノンフィクションは「コスタ賞」最終候補に。

「2020年 『あの湖のあの家におきたこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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