あめの帰るところ (DARIA BUNKO)

著者 :
  • フロンティアワークス
4.19
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感想 : 64
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  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861344428

感想・レビュー・書評

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  • これがまだしも、家庭環境が複雑で辛い過去を持った人達の話だったら、幾分共感できようが…。何故そこまで共依存みたいになってしまうのか…。普通に塾で出会っただけですよ…

    塾講師の攻めキャラがどうしても鼻について甘いセリフも響いてこない(+_+)
    これといって山場もないし…(記憶喪失設定なのに…)

    個人的に、ちょっとお涙ちょうだいが強いような気がする…。詩的な表現も多すぎるとスマートに言えんのかーってなる(笑)表現が仰々しくてドヤ感というか、セリフにもリアリティーが無いというか…。記憶喪失からの流れも都合よすぎだなぁと。
    評価高いので多分自分と合わないだけだとは思う…。

    ただ、初めて肌を触れ合わせる時の丁寧な表現や、老人ホーム入っても~、のセリフは好き。

  • 朝丘戻が好きかと言われたら、即座に『違う』と言ってしまうと思う。
    主だった作品は読んでいるし、新刊が出たらいそいそと買いに行ってしまうにも関わらずだ。
    随分と上から目線で、何様?だけれど、『同族嫌悪』って言葉が一番しっくりくる。
    朝丘さんの作品を読んだ時に味わう。〝痛さ〟みたいなもの。
    それは木原音瀬作品とは全く別の種類の痛さで、普通、人はそれを切なさと呼ぶのかもしれない。
    人には知られたくないものを、言い当てられるような。
    心の中に手を突っ込まれて、痛いところを探られるような。
    心の一番脆い部分にクリティカルヒットして、思わず血を流してしまうような、そんな痛さ。
    よく小説の中でも出てくる表現だけど、好きと嫌いは限りなく一緒だ。

    『あめの帰るところ』を読み終わった後、夜中にひとりでエフエフ泣いてしまって、でも泣かされてしまった自分に納得していないというような、理不尽な怒りみたいなモノ。
    恐らくこれはHappy Endに分類されるお話なのに、なんでろう。悲しい。
    理由も分からず、ただ悲しくて、しばらくは思い出すだけで涙が出てきて、レビューを書く気にもなれなかった。

    高校三年生になって、予備校に通い始めた千歳は、ちょっと風変わりな予備校講師:能登に出会う。

    先生はやる気もない、他人に興味もない、子どもっぽい、ダメな大人。
    いや、むしろダメな子供そのもの。
    先生は千歳に千歳飴から連想して『あめちゃん』というあだ名をつける。
    先生の大人げない行動や言動に真面目に向き合って、時には叱ってもくれる真っ直ぐな可愛い〝あめちゃんに〟先生はたちまち恋に落ちる。
    それは生まれて初めての恋だった。
    この作品がダメだったという人は、生徒に半ば一方的に想いをぶつける先生の公私混同ぶり、危ない、気持ち悪い人ギリギリのキャラクターが許せないのだろうと思う。わからないでもないよ。

    千歳は、一心に自分に向かって降ってくる愛のシャワーみたいな先生の暖かさに癒され、次第に心惹かれてゆく。
    受験でとげとげした感情も不安もやさしく包み込むような陽だまりのような時間。
    ふたりはやがてゆっくりと心を重ねてゆく。

    受験も無事終わって大学に入り、念願の留学の夢を叶える千歳。
    遠距離になっても、お互いを想いあう気持ちは決して揺らがない。
    けれど、千歳が留学先で交通事故にあったせいで、ふたりの関係は決定的に変わってしまう。
    事故のせいで、今までの記憶をすっかり失ってしまった千歳。
    先生が愛した〝あめちゃん〟は忽然と消えてしまった。
    でも、これからの千歳のことを想って、自分との関係を封印してしまう先生。
    千歳に〝ちいさん〟という新しいあだ名をくれる。
    もう〝あめちゃん〟はいないから。
    『思い出して欲しい』と願うことが、思い出せない千歳を苦しめるから。
    好きなのに、苦しいのに、あんなにダメな大人だったのに、先生は千歳の前から姿を消す決心をする。
    自分がいることで、千歳が混乱するから。自分がいなくても幸せになってほしいから。
    『あめちゃんとの記憶は、俺が全部持っておく。あめちゃんが俺の恋人でいてくれた日々のすべて、大切に胸にしまって生きていくよ』って。

    何ひとつ思い出せないはずなのに、先生が近くに来ると、先生が離れてしまうと、千歳の中の〝あめちゃん〟が悲鳴をあげる。
    そして時々、奇跡みたいなデジャヴをくれる。
    何も覚えていないけれど、千歳はもう一度先生に恋に落ちる。
    記憶を失っても、求め合う心まで消せない。

    千歳は引っ越してしまった先生を追いかける。
    先生の大好きな〝あめちゃん〟も、先生を覚えていなかった〝ちいさん〟も、やっぱり先生が大好きだから。

    ふたりはまた一緒になれた。よかった。本当によかった。
    なのに、ちょっぴり悲しい。
    だって、やっぱりあの〝あめちゃん〟はもうどこにもいない。
    先生と過ごしたふたりきりの教室も。夏の花火の夜も。
    初めてふたりで見た朝焼けも。全部消え去った。
    幸せだけど、胸がつぶれそうになる
    先生と〝あめちゃん〟が過ごした時間のことを想って。
    〝あめちゃん〟が消えてしまった時、絶望した先生のことを想って。

    あとがき後に収録された書き下ろし、『あめちゃんへ』のラスト一行まで
    必ず読んでほしい。滂沱の涙です。

  • 泣きすぎて目が腫れた。
    前半の『先生へ』は、あめちゃんがあめちゃんであれた章。
    そこには、これでもか、これでもか、と後半への前振りのごとく、
    ひたすらに優しく柔らかく、愛しい交際の模様が描かれます。
    それはまるで、アルバムのページをめくるかのごとく、すべてが
    尊く慈しみに溢れた優しい記憶。

    後半の『きみの中、飴がなく』では、能登先生視点。
    あんなに優しい『先生へ』のくだりはどこへやら。
    全てがリセットされて、世界にひとり取り残された先生の絶望が
    胸を掻きむしります。
    この後半はラストに至るまでずっと泣きっぱなしでした…。
    もう、ヤバイ勢いで涙が出てきてしようがない。
    どんなセリフにも泣けて、ちょっとしたエピソードにも目頭が
    熱くなる。まさに、能登先生が泣くタイミングと読み手が泣く
    タイミングが一緒。すごいシンクロしてしまいます。
    前振りの威力は絶大でした。
    文句なしの☆5つ。10こくらいあげたい。

  • あめちゃんと呼ばれる椎本千歳、先生である能登匡志の恋物語。二人の急速に縮まる距離感に戸惑いつつ、惹かれ合う時は本当に早いもんだよなとリアリティさも感じていました。

    甘えたな先生が可愛くて、それを窘めてる千歳も可愛くて。

    急に別れがきて、あめちゃんがあめちゃんじゃなくなって、先生はあめちゃんがいなくなったことを知り、千歳の未来の当たり前にある幸せの為に遠ざけようとする。

    記憶喪失モノにはよくあると思うんだけど、記憶があってもなくても、その人はその人なんだって、頭では理解してても、実際その人の性格を形作っていくのって、それまでの記憶だったりするから…なんとも切ない。

    傷を作るのが今の自分だって理解していても、先生のそばにいようとする千歳も我儘だし、千歳をあめちゃんとは違う人だって遠ざけてしまう先生も我儘だなって思った。

    それでも、両想いなら一緒にいてほしいし、記憶や傷を埋め合う為にいっぱい話をしてほしいなって。
    千歳が千歳のままでも、あめちゃんと呼ばれていた頃の自分のことを、今の自分の記憶だと思えるくらい知ってほしい。

    そしたら、おじいちゃんになる頃には、きっと幸せだけでいっぱいになると思う!

  • うーん、これ攻のキャラクターでかなり好き嫌いが分かれるかも。
    10もの年の差で、一応先生と呼ばれる立場なのに、あめちゃん(受)に自分の気持ちを早々に打ち明けて『好き好き』攻撃。
    そりゃ何の手練手管も知らない純情な高校生が絆されますわ…と穿ってしまう人には向かないかと思います。
    ただ本筋はそんな話ではなく。あめちゃんの事を想って何も言わず、身を引こうとする先生が切なくてただ泣けるお話でした。
    ハッピーエンドですが、すべて元通りでみんな幸せ。というラストでないところが、切なさに拍車がかかってまたいいです。続編読もうかな。

  • 予備校教師30歳×翻訳家志望の高校3年生
    詩的な文章、攻めが年齢の割に言動が子供っぽい
    記憶喪失

  • 記憶戻らないのか・・・二人が混じって一人になる。
    個人的には忘れな草のが好きです。

  • どうも話が急すぎて入り込めなかった。
    先生があめちゃんを好きになる過程もラノベの如くあっという間。正直それだけ?と思ってしまいました。後半同性同士の恋愛であることに葛藤する場面が出てきますが、その冒頭の急展開のせいで、全く活きてこなかったです。あめちゃん視点だから仕方がないのでしょうか。前半はほぼ先生のあめちゃんが好きってことだけで終了。

    あめちゃんも、特にゲイというわけではなさそうなのに、あっという間に先生のことが好きになってしまう。これで先生の過去にちらつくトラウマやあめちゃんの家庭環境か関わってくるのならわかるのですが、特になんの理由やエピソードもないまま恋人になります。

    後半記憶を失ってからの気持ちの表現はとても秀逸なのに、前半の急展開と説明不足のせいで、読んでる側はなかなか気持ちがついていきませんでした。
    恋愛って「好き」だけではないよねって部分をところどころとても丁寧な表現で描いている分、話が雑というわけではないのですが、せっかくの気持ちたちがストーリーや設定と噛み合わず響きませんでした。
    とても期待して読み始めたのでちょっと残念です。

  • 電子書籍で読んでいたんですが、テクノサマタさんの挿絵がどうしても見たくて紙書籍も購入(笑)。
    満足しました!

  • 能登先生の奔放なキャラクターに戸惑いつつ、真っ直ぐで柔らかで純粋な二人の気持ちの重なり合いが丁寧に穏やかに描かれていく描写にするする引き込まれました。心の内側の柔らかな部分をそっと掬い上げるような言葉のきらめきの一つ一つに包み込まれるよう。
    触れて欲しくない、目をそらして向き合おうとしないでいた痛みに手を差し伸べられて、そのままそっと包み込まれるみたいな愛おしさと苦しさが溢れていて、読んでいる間中、揺さぶりをかけられてどうしようもなかった。
    行き場のない感情に寄り添う優しさと温もりが溢れていて、こういった感情に出会える事こそが物語に出会う喜びなのかな、とも思ったり。

    愛おしいと思える人に出会える奇跡とそのぬくもり、二度と帰らない時間への切なさにぎゅっと心をつかまれました。
    メイン二人は勿論、真っ直ぐな気持ちで相手に、自分自身に向き合っている相楽さん、秋津先生たち女性キャラもとても魅力的でした。

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