月岡芳年 月百姿

著者 :
  • 青幻舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861526282

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  • 「月百姿」全100点を載せる。
    月岡芳年、最後の作品。明治18~25年(1885~92)、芳年数え47才から54才の時の作品。

    印刷が押えた色調。全体に落ち着いて静かな印象。題材は戦闘など歴史上の事柄、物語、謡曲、短歌などから題材をとっている。静かな印象といっても、その題材の中の人物の人生の一こまの余韻か。

    何冊かの芳年の本でポツポツ紹介されて見てきたが、こうやってまとめてみると、人生の様々な場面に「月」がいたんだねえ。これが太陽だったらこうはいかないか。

    「麗しき女性たち」「妖怪・幽霊・神仏」「勇ましき男性たち」「風雅・郷愁・悲哀」に分け載せる。

    「千代能がいただく桶の底ぬけて みづたまらねば月もどらず」明治22年  鎌倉時代の武将・安達泰盛の娘、千代能が、井戸の水を汲もうとした時、桶の底が抜けてその時詠んだ和歌が題名。心のわだかまりが解け、悟りが開けたという心境を示している。図は桶の底が抜けたところでさっきまで水面に映っていた満月は消えうせた、と。

    こういう和歌にも通じているとは、芳年、奥が深い。この逸話は「底抜けの井」として、鎌倉市の海蔵寺に現存。鎌倉十井のひとつ。

    「大物海上月 弁慶」明治19年 弁慶が船に乗り大波に立っている。謡曲「船弁慶」から。荒くれる波が北斎の波を思わせる。

    「たのしみは夕顔だなのゆふ涼み 男はててら女はふたのして」明治23年 ヘチマ棚の下で夫婦がむしろに座り夕涼み。あれあれ、これは教科書でみたことがある図。この題材は久隅守景「納涼図屏風」江戸初期以来描き継がれてきたものだという。 

    表紙は「朝野川晴雪月孝女ちか子」明治18年 加賀藩で海運業を営んでいた豪商の五兵衛と息子が、無実の罪で投獄される。五兵衛は獄死。孫娘のちか子は藩主に父の無実を訴え続け、ある晩父の釈放を願って朝野川に身を投げるの図。

    作品はすべて大判錦絵、太田記念美術館所蔵。

    2017.8.21発行 図書館

  • 芳年が最期に辿りついた極致。大胆かつ繊細な構図、粋を極めた彫りや摺りの美しさが冴え渡る月光下、100の物。“月百姿”をより味わう鍵となるコラムも収録。(アマゾン紹介文)

    芳年晩年の作品『月百姿』を全て収録し、その一つ一つに簡単な解説が施されている贅沢な画集。
    『玉兎 孫悟空』や『五條橋の月』など、芳年の代表作として選ばれることの多い絵が多く、一ページ一ページ、とても美しい。
    芳年の画集として、是非一冊家に置いておきたいと思う。

  • コレが明治の浮世絵よっっ!川崎浮世絵ギャラリー〈月百姿展〉のおさらい。うーん、やっぱり前半も見に行けば良かった…と後悔。だって一方向からの印刷じゃ、正面摺りが真っ黒けにしか見えないんだもんさ〜(涙)何気に明智光秀周辺多し。これからの「麒麟がくる」に出てくるかな?

  • <閲覧スタッフより>

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    所在記号:721.8/ツキ
    資料番号:10239703
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  • 何点かは観たことあるけれど、こうやってまとめて観るとその構図・題材のバリエーションの豊かさ、素晴らしいです。
    実物観たらさらに凄さが感じられるんだろうな…

  • 歌川国芳の弟子。血みどろ芳年さんの最晩年作

    「月百姿」でやんす。

    久し振りに表参道行ったわー。
    芳年いいわー。これ本当に美しいわー。

    なんでか偉い上から目線だけど、もー何描いてもうめーなこのオッサン!あと構図と色彩!カッコイイよぅ〜。江戸の粋って今でも通じますから!凄いから!昔の人って本当にお利口よね。月を題材に100の物語の一場面を切り取って描いていらっしゃるシリーズなのですが、膨大な教養の深さに圧倒されます。

    老婆になった小野小町、戦国のヒーロー豊臣秀吉、安倍晴明のお友達で有名な笛の名手源博雅君。オシャレな構図の孫悟空。儚い源氏物語の夕顔。女装のヤマトタケル。謎めいた夜鷹の一とせ。琵琶を手に嘆き悲しむ有子の美しさ。

    書き始めるときりがないのですが(なんせ100枚ありますから)歴史好きの方にも楽しめる展覧会ですね。

    私は奮戦する吉良の家臣、小林平八郎の方を描くセンスに共鳴しました。葛飾北斎がこの平八郎の子孫だという説もあったりしますからなんだかニヤリとしちゃいます。有子の美しいこと。心の月を描いており、画面上に月がないものもあって感慨深かったです。

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著者プロフィール

日野原健司(ひのはら・けんじ)
慶應義塾大学大学院文学研究科前期博士課程修了。太田記念美術館主席学芸員、慶應義塾大学非常勤講師。江戸から明治にかけての浮世絵史、ならびに出版文化史を研究。太田記念美術館にて、「北斎と暁斎―奇想の漫画」、「北斎漫画―森羅万象のスケッチ」、「葛飾北斎 冨嶽三十六景―奇想のカラクリ」、「没後170 年記念 北斎―富士への道」などの展覧会を担当。著書に『ようこそ浮世絵の世界へ 英訳付』(東京美術、2015 年)、『かわいい浮世絵』(東京美術、2016 年)、『北斎 富嶽三十六景』( 岩波文庫、2019年 )など多数。

「2020年 『ようこそ北斎の世界へ 英訳付』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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