ロシア新戦略――ユーラシアの大変動を読み解く

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  • Amazon.co.jp ・本 (433ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861823794

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  • ソビエト崩壊からここまでのロシア(と、他の旧ソ連更生諸国)に起きたこと、
    現状、そして未来図。
    ただし、その未来図の前提はクリミア併合に対する制裁が解かれることは無いであろうから、もうあり得ない。ロストフューチャー(まあ、元々楽観的すぎるか)

    最後の「日本語版解説」これが肝ね。これを楽しむために、全部読む必要があるって感じ。

    プーチンは、ピョートル大帝を気取っているが、その実は資源高の恩恵をばらまく以外に何も出来ないブレジネフの再来なんじゃねえの?ってのは目からうろこ。

    ああ、ロシアの宿痾の一つである「汚職」についてはなんも出てこないw
    それでもこの未来のなさw

  • ロシアの近現代の地政学状況について詳細に述べている。詳細すぎて部外者には分らない点も多いが、ロシアがソ連の資産を受け継ぎ、帝国の殻を脱ぎ捨てて利権を追求する大国として生きる過程を旧ソ連国家の状況とともに紹介している。

  • ソ連崩壊後の落ちぶれた姿から復活を遂げ、現在では資源を武器に強面外交をとっている(少なくともその様に見える)ロシア。
    本書は、ソ連崩壊後から現在までのロシアとウクライナなどを始めとする(ロシアの)周辺諸国の国内外の変化、現在の利害関係などを詳説した一冊です。

    著者のトレーニン氏はソ連/ロシア軍でのキャリアや西側での学術経験を持ち、また西側の政治過程にも精通しています。
    本書にもこれらのキャリアに基づく様々な分析が載っており、現代ロシアを理解するのには(少なくとも邦書では)最適な書籍となっています。

    内容の方は、序章でソ連崩壊の過程をソ連内部からの視点で解説し、
    続く第1章でロシアを始めとするソ連を形成していた諸国がこの崩壊をどのように受け止め、どの様に対応していったかを解説。

    第2章では、崩壊後、ロシアは周辺諸国にどの様に対応していったのかを詳説した後、
    第3章ではCIS内部でのロシアの経済力、エネルギー資源、1000万人から2000万人とも見積もられている貧しい周辺諸国からロシアへの出稼ぎ移民などに触れ、
    その後の第4章では上記の移民とその背景となっているロシアにおける急激な人口減少及びその影響について解説しています。

    そして第5章では周辺国などのロシア語話者やロシア正教と言ったロシアのソフトパワーの現状を解説し、最終章では今後のロシアのとるべき道についてまとめています。


    ソ連時代、周辺諸国に対して資源を安く売り、彼らから製品を高く買うと言う手段で¨補助金¨を与えて帝国を維持していたが、これに行き詰まり帝国であることをやめ、現在では「生き残るため、そして成功のため、使える手段は何でも使う」と言うスタンスに徹しているロシア。
    著者はこの現代ロシアを「資源に極端に依存し、製造業の競争力は無く、汚職の蔓延など問題が山積みとなっている」と述べ、ロシアの大国としての復活の為にはこれらを改め、国力を充実させ、周辺諸国から一目も二目もおかれる強力なソフトパワーを持つ国家になるべきだと主張しています.

    本書によれば現在、ロシアは東欧、コーカサス、中央アジアに対して安全保障上の観点から関心を抱き、同時にこれらの地域において経済的、文化的に主導的な立場に立ちたいと考えており、決して彼らを支配しようとは考えてはいないとの事。
    (仮に支配したくてもその力はない)
    そうであれば、著者の国力回復に伴うソフトパワー増強戦略は理にかなうものと言えるかと思います。

    しかし、同時に著者は、ソ連崩壊という圧倒的な権威の崩壊をその肌で感じた現在のクレムリンの住民たちが「ピョートル大帝たらんとしながら、ゴルバチョフのような末路をたどることを恐れ、さしあたってブレジネフの様にふるまっている(石油などの資源からの利益をばらまいている)」と指摘しており、
    ロシアが今後著者の主張通りにソフトパワー重視へと戦略転換を行えるかは不透明な状況です。

    この様にソ連崩壊の混迷から抜け出そうとあがき、混迷しているロシア。
    この国を単に「資源を背景に強面外交をしかけてくるだけの存在」とみなすのではなく、その現状と問題、ニーズなどを理解したいのであれば(上記しましたが)最適な一冊ではないかと思います。

    ロシアを正確に理解することに興味をお感じであれば、是非一読を。

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