ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実

  • 白夜書房
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861912214

感想・レビュー・書評

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  •  僕がビートルズに魅かれ続けるのは、彼らの反骨精神、最高のものを作ろうとするチャレンジ精神だということをあらためて気付かせてくれた、読み応えのある大作。

     (すばらしい)序文を書いているElvis Costelloが、「ジェフがやっと自分の話をする気になってくれたことを、ぼくはおおいにうれしく思う。」と語っていることが、この本を見つけてすぐに手に取った自分の気持ちを的確にあらわしていた。

     でも一方で、何で今まで話せなかったのだろうという素朴な疑問もあったのだが、それは本を読み進めるうちにわかったような気がした。ジェフはジョージ・マーティンの右腕、インサイダーというイメージだったのだが、実は音楽的には多大な貢献をしながらも、当時のエンジニアの地位の低さもあって、ビートルズの身内になり得なかったという歴史が影響しているような気がした。
     また、彼は書く以上は率直に語りたいという思いがあったのかも知れない。ポール派という立場からも、アンソロジー・プロジェクトを経てビートルズ神話が崩壊し、またジョンやジョージもいなくならないと、とても話せないない内容だったと思う。

     ジェフは真のインサイダーになり得なかったからか、彼の視点はとても写実的で、巷のビートルズ神話やスタジオ外のエピソードに左右されず、スタジオでの創作過程をありのままに、時には辛辣な批評も含めて語っている点がすごく貴重だと思う。僕は彼の職人肌的な人柄やスタンスに、すごく好感を持てた。
     また前半の、彼がエンジニアの職を得るまでの経緯も、ちょっとした感動だった。

  • レコーディングの裏側がこんなになっていたとは知りませんでした。そして比較的客観的にメンバーのことが書いてあるのも面白かった。そこここに引用したいこともあるけど、著作権の問題があるから。また読みたい。

  • コンサート活動を一切とりやめて「レコードこそが僕たちのステージだ」とレコーディング・アーティストとして孤高の位置に達したビートルズのエンジニアによるスタジオ回顧録。

    ジョージ・マーティンのプロデュースのもとでバンドが作品を組み立てていくプロセスが詳細に描かれている。

    特にスタジオ・エンジニアから見たバンドの人間関係は興味深い。
    ポール・マッカトニー擁護のむきもあるが、性格もあるけれど、メンバーの中で一番スタジオ・ワークに興味を持っていたのがポールというのもあるだろうな。

    ジョージ・ハリスンの弟分的扱いやリンゴ・スターの佇まいなどは他のビートルズ本でも触れられていたけれど、スタジオでの現場の会話や実際のレコーディング時の扱いを読むと、こりゃ抜け出したくなるよな。

    ジョン・レノンはたしかにカリスマ的魅力を持った人だったけれど、ゲージツカだけに付き合い難い人なんだなっていうのが実際に体感したかのように伝わってきた。

    こういった一人の人間としてビートルズを語るというのは反発も多いのかもしれないけれど、著者がひとりの人間として接しているということが判るし、歴史的傑作の数々を未曾有のプレッシャーの中で作っていく様がありありと伝わってくる。

    自分のような後追い世代にとって、ビートルズを同時体験するということは不可能なことだが、この本に描かれた録音風景を思い浮かべながら聴くことによって、あたかも『リボルバー』や『サージェント・ペパー・・・』といった名盤を新譜のようにフレッシュに聴いたような気にもなれる。

  •  一ページ進むごとに、色あせた古いスウィンギング・ロンドンの写真に色彩が蘇り、動き出してくるような回想録。
     <黄金の耳>を持つといわれたサウンド・エンジニアの視点から見たビートルズのデビュー、成長、爆発、自爆を時系列に記した本書はまるで定点観測による記録のような趣があるが、それだけに喜び、怒り、笑い、哀しみがリアルに伝わってくる。2トラックや4トラックという今日ではもはや伝説的な世界でしかない録音の現場が生々しく描かれているところは貴重な記録と言えるだろう。
     これがわずか50年程まえのことなのかと思うか、あるいはもう50年も過ぎてしまったのかと思うか、さらには大昔の話と思うかは読者の年代によって異なるかもしれないが、形にならないエネルギーの塊がさまざまにうごめいていた1960年代という狂ったような時代を生きてきた者は、おかしさ、懐かしさと同時に哀しみも覚えるのではなかろうか。

  • ビートルズ好きなら読まにゃ損だね。
    ビートルズサウンドがどのように生まれたのかを知ることができる。
    デビュー、全盛期、仲悪い期、ヨーコ事変、解散に至るまでの経緯やその後がサウンドプロデューサーの目線で綴られている。
    ビートルズのアルバムを手元に置いて、本と並行して聴くと倍面白い。
    しかし、呆れるほど伝説残したバンドだわ。

  • ビートルズサウンドの成立過程・秘密がここまで鮮明に記された本は見たことがない!!(なにしろ、ビートルズ自身も知らぬうちに、そして分からないように「こっそり手直し」されていた曲もあるのだ!!)これを読めば、ビートルズ作品を「奇跡」や「伝説」ではなく、「天才たちの汗の結晶」だと捉えたくなる!!…にしても、ビートルズの新曲が生まれる現場に立ち会えるなんて、なんて、なんて、うらやましい!!!!!!

  • この本の著者、ジェフ・エメリックは、ビートルズのアルバム「リボルバー」以降のビートルズのレコーディングエンジニアだった人。革新的なレコーディング作業の裏側をわかりやすく、尚且つ丁寧な描写で書き記しています。
    ビートルズに関する書籍は数多く出版されていますが、そのほとんどが伝説的ロックバンドとしてのビートルズという側面で書かれています。この本は実際のレコーディング現場でビートルズのサウンド作りに大いなる貢献をした著者が、著者自身の目線で普通の人間としてのビートルズを描いています。各メンバーの今まで語られる事の少なかった性格の違いや個性がこの本を読んでより深く理解出来たような気がします。ビートルズのファンはもちろん、ビートルズに少しでも興味がある方は是非とも読んでみてください。

  • ようやく読了。長かった。しかしながらダレることなく最後まで読ませる内容。久しぶりにビートルズを聞き返しました。

  • (図)

  • 『最後の真実』とのタイトルは伊達ではない(もっともこれは邦題であって、原題には無いフレーズなのだが)。ビートルズのレコード製作に携わった人物による証言はこれまでにも様々な本になってきたが、ここへ来て最後の大物(そして本命とも言える)の著書が登場したことになる。その内容も、現場に居合わせた人間でなければ書けないほど生き生きとしていて、アーティストという以前にいちバンドであったビートルズの姿を浮かびあがらせてくれる。時に辛辣な描写となり、またホワイトアルバムの製作以降は非常にピリピリした雰囲気を伝えてもくれるが、若干ポールよりの描写が目に付くあたりを差し引いても、第一級の資料と呼べるのではないだろうか。『耳こそはすべて』『レコーディング・セッション』と並ぶビートルズ関連本の中では最高峰の1冊。『Love』などというニセモノを(それも日本盤で)掴まされるよりは、はるかに有意義な時間をもたらしてくれる こちらの本を私はオススメしたい。

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著者プロフィール

1962年にアシスタント・エンジニアとしてアビー・ロード・スタジオに参加、66年に正規のエンジニアに昇格。69年にはこのスタジオを離れ、ビートルズのアップル・レコーディング・スタジオに移籍した。

「2016年 『ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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