南極1号伝説 ダッチワイフからラブドールまで-特殊用途愛玩人形の戦後史

著者 :
  • バジリコ
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862380937

作品紹介・あらすじ

南極観測隊のための特殊用途人形、「南極1号」は実在したか!?ダッチワイフ開発に賭けた男たちが挑んだもうひとつのプロジェクトX。綿密な取材により、その進化と変遷をあますところなく描いた異色のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • ココロオドル
    人形愛の歴史的な話
    南極1号2号の雑誌広告があった(2号は記憶にない)
    ドール製作にあたって素材や工夫
    各メーカーの特徴的な製品群
    コレクター、ネット、ブロガーの話
    愛玩⇒人形愛へ

  • ラブドールの歴史を精緻にまとめた文献。業界大手の開発ベースの貴重なインタビューとともに、ソフビなのかシリコンなのか、ぬいぐるみなのか……「素材」と「顔」を軸にリアリティーの問題が語られ、ダッチワイフとラブドールの境界にも触れる。90年代のインターネットが広告出稿のハードルを下げ、ラブドールを拡販したという指摘にも注目。

  • 面白かった!
    もっと実際のモデルの写真見たかったけど。
    製作者も買う人もマニアで良い。
    自分では使う機会ないし、
    オットもそんなに興味ないから
    いろんなこと知れてよかった。
    VRと連動するソフト組み込めば
    より埋没感を感じられそう。

  • 「ダッチワイフからラブドールまで―特殊用途愛玩人形の戦後史」 と副題された、とんでもない本です。それなりに楽しめました(^.^)...が、南極1号の伝説を掘り下げる訳でもなく、丁寧に取材はしてあると思いますが、戦後史と言い条、網羅的なものではなくよくできたルポです。
    結論、南極1号は公式に認められていないが、実在を裏づける証言がいくつか残されている程度です。秘密の楽しみを持つ 「背徳感」 なんともいいですね。

  •  牛歩の如くだが、現代科学は確実に空想科学に追いつこうとしている。HRP-4Cを元として、いずれはスムーズな動きと思考を持ったアンドロイドが世に出るだろう。同時に「ガイノイド(少女型愛玩人形)」や「セクサロイド(特殊用途愛玩人形)」も。
     性処理用人形は進化した。丸くポカンと開けた口、分厚い唇に厚化粧、などというギャグ漫画によく用いられた容姿の人形から、先ほどのHRP-4Cのように精巧な顔と容姿を持つ人形が登場し、女性向け男性型も登場した。漫画版・攻殻機動隊に登場する「お人形さん」は「フェラーリより高価」と評されているが、先述のオリエント工業製品の場合、高価な商品で標準で70万円はするものもあるので、アンドロイドが一般に流通している世界ならば、そう非現実的な価格設定でもないと思う。
     先ほどの『南極1号伝説』に面白い記述がある。

    「だんだんエッチの回数が減っていって、ただいてくれるだけでいいと思うようになる人は多いんです。そばに愛しいラブドールがいるというだけで、いわゆる『癒し』になってるんですよ。もう添い寝するだけでいいや、となる人もいます」

     攻殻機動隊:SAC 03話に登場するマーシャル・マクラクランもそうだった。
    「彼はアンドロイドに過ぎないジェリを愛し、世界に1人しかいない自分だけの恋人にしたかったのだ。」(引用)
     一方で「原作」または「イノセンス」の世界では、ロボットが不法廃棄されるという問題が起きている。モデルチェンジで新製品を次々と購入、旧製品は廃棄。不法廃棄された製品は浮浪化・野生化して事件を起こす。
    「ロボット達は使い捨てをやめてほしいだけなんです」(引用)

     ロボットを溺愛する人間。使い捨てにする人間。憎む人間。彼らは皆同じ人間だ。ヒューマノイドロボットが世に流通するようになるとき、私はどのタイプになるのだろうか。

     インドには「アプサラス」という天女たちの物語がある。彼女達は「全てのものの妻になることのできる存在」だそうだ。HRP-4Cの後継機は、未来の「イヴ」ではなく、未来の「アプサラス」になるのかもしれない。

  • なんでこれ?という感じもするが、「目があった」ので読んでみた。
    表紙写真、中のカラー写真でもわかるが、「そういう目的」ではなくても鑑賞していたい美しさ。シリコン製のものらしい。実はケアがものすごく大変で、価格も高額らしいが。
    内容的には、この分野を初めて詳細にレポートしたものではないか。メーカーや、ユーザーへのインタビューも充実している。

  • 「男性セクシュアリティ研究のリソースとして」


     本書で用いられている「特殊用途愛玩人形」とは、かつては「ダッチワイフ」とよばれ現在では「ラブドール」などと呼ばれているものを指している。それらは元来、男性の性的欲求を満たす(=射精する)ための道具であり、女性の身体の代替物と考えられてきた。

     しかし、本書によると、現在では性欲を満たすという目的だけではなく、一緒にいることを楽しんだり旅行に連れ出したりという使われ方がなされているらしい。言い換えれば、そこでは性的なものから関係性への志向という変化が見られるのであり、それらはもはや「玩具」「道具」という範疇を超え出ている。本書は読み物の粋を出るものではないが、前述した関わり方の変容が示しているように、こういった事象を社会史的に研究することは男性セクシュアリティ研究の有効なリソースとなるのではないだろうか。

     第1章「ダッチワイフの履歴書」では、さまざまな「特殊用途愛玩人形」の歴史を概括しており、それらがどのように語られてきたかという言説史にも触れている。ヒトラーのナチス・ドイツや旧日本軍でのそれらの開発がどのような思想のもとで行われていたかという記述は実に興味深いし、1960~70年代のサブカルチャー、とりわけ手塚漫画におけるそれらの表象に触れている点も面白い。そういえば、筒井康隆の短編などSF小説にも度々登場する。様々なジャンルを横断して「ダッチワイフ」の言説をもっと丹念に追ってみると、さらに面白い知見が得られるかもしれない。

     第2章「素材革命」では、人形の素材や形状の変容を追っている。ここで記述される肌理やその材質(マテリアリティ)に対するこだわりは、ユーザーの志向性を反映しているといえるが、その記号論的で繊細な鑑賞眼は、日本に独特な身体文化、あるいは性文化であるようにも見受けられる。

     第3章「開発者の苦闘と喜び」では開発者へのインタビューを行っている。研究書はもとよりサブカル本においても、こういったジャンルの製品の制作者へのインタビューは前例を見ない。そして、このような発言を引き出している。

    「ダッチワイフのお客さんは、ただ性欲処理に困っている健康な人だけじゃない。家庭的、身体的な問題を抱えたお客さんも多く利用しています」

     ここからは、性的マイノリティや家庭空間における関係性などさまざまな問題が浮かび上がってくる。 本書は、社会科学的な方法論に沿ったものでなければ、研究者によって書かれたものでもない。ましてや、そもそもそのような学問的な目的を志向したものもはない。そのため、体系性に欠けていたり、アナリティカルでなかったりするのは致し方ないだろう。
     しかしながら、評者が気になるのは、ユーザーへの調査が完全に抜け落ちているということである。ユーザーの属性といった基本的なデータや、インタビューを通じた彼らのライフヒストリーなどが盛り込まれていれば良かったと思うのは、求めすぎだろうか。

     とはいえ、評者は本書の価値をこのように位置づけておきたい。社会学における、ポルノグラフィを対象にしたジェンダー/セクシュアリティ研究やメディア研究が、限られた言説のバリエーション(あるいはフレーム)の範囲のなかで行われてきたのではないかという疑念が評者にはある。
     具体的に言えば、オーディエンスが直接的に影響を受けてきたような「剥き出しの」ポルノグラフィを回避・黙殺して、ある種、常識に収まるような週刊誌などを言説分析の対象とするような研究が実に多い。しかし、少年が性的志向性を形成していく過程において、多くの場合一般書店やコンビニで売られているような雑誌から影響を受けることなど少ないだろう。
     かつて、山本明が思想の科学研究会で戦後の「カストリ雑誌」を俎上に上げたように、セクシュアリティ研究における言説分析の対象はもっと広いジャンルに開かれなければならない。そのような意味で言えば、本書で取り上げられている事例は、「剥き出しの」欲望やその変容に迫る契機を提供していると言えるのではないだろうか。

  • 副題は「ダッチワイフからラブドールまで-特殊用途愛玩人形の戦後」
    ・・・
    かなり過激な感じだが、内容は、大真面目で開発者達のプロジェクトX版
    ドキュメンタリータッチ
    男性の実践的癒しは勿論、心の癒しにもなるという愛玩具
    やっぱり日本のモノづくりはスゴイ
    この上、まだまだ品質が良くなって癒し度も増せば
    いまどきの怖~い女性達の最大のライバルになる日が
    近いかも・・・にこっと笑って無口なんて可愛いんだろうね~

  •  きれいなんですよ。ラブドール。びっくりする。


     でも、不格好な生身の人間だって、いいもんだと…思うなw

     女の私が言うなってか。

  • 資料として一読の価値あり。
    どんな世界にも職人気質はあるものだ。

  • 南極1号の話が中心かとそうでもなくて日本のダッチワイフ業界を現在を中心にその歴史も振り返ってみた一冊。南極一号の話はツマ程度。とはいえなかなか実態に触れることのない世界の話なのでこれはこれでとても面白い内容。シリコン製は高価な一方で裂けやすいらしいので取り扱いは要注意らしいですよ。

    - 業界の老舗かつ最大手ははやはりオリエント工業。メーカーは数社程度であまり業界規模は大きくないらしい。ラインナップを総合的にそろえられるメーカーもオリエントくらいの模様。
    - シリコン製は50萬以上、ウレタンなら数万円。ウレタンにこだわるメーカーもある。
    - シリコン製の発祥はアメリカ
    - シリコン製は非常に重いのでメーカー側としてもユーザ側としても取り扱いが難しいらしい。
    - ラブドール風俗はほとんど死滅したらしい。取り扱いの難しさが原因か。
    - 愛好者同士で集まってオフ会をしたりしているらしい。
    - 日本のメーカーに欧米から発注が来ることも結構あるそうな。
    - インターネットの影響は大きい。

  • 駆け足でやや浅いけど、真面目に取材されているし、読み物として面白い。
    一時サブカル方面で有名だったS氏についてもオリエント工業の社長が触れられていたので良かったです。メーカーへのインタビュー部分が面白くて、この部分にもっと頁を割けたら良かったのにと思いました。

  • 「南極1号」って知ってます??
    この本は、風船式のダッチワイフからシリコン製の高級ラブドールまでの歴史など考察しております。
    ラブドールの骨格とかね、作り方とかね、開発者の話とかね、なかなか面白いですわ。
    シリコン製のラブドールって、50〜60万するみたいですよ。ちょっと見てみたい気もする。
    だって写真で見るだけでも可愛いしよく出来たお人形なんですもの。

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著者プロフィール

書籍、雑誌の編集を経てフリーライターに。内外の社会事象を幅広く扱う。主著に『韓国の「変」コリアン笑いのツボ82連発!』、『韓流ドラマ、ツッコミまくり』、『にほん語で遊ぶソウル』、『美味しい韓国語』などがある。

「2013年 『キム・イル 大木金太郎伝説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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