響きあう脳と身体 (木星叢書)

  • バジリコ
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862381101

感想・レビュー・書評

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  • 中々言えない言葉である。まして科学者であれば尚更だ。複雑系科学と不確定性原理がラプラスの悪魔を葬った。宇宙に存在する全ての原子の位置と運動量を知ったとしても未来は予測できない。
    https://sessendo.blogspot.com/2020/07/blog-post_26.html

  • 非常に示唆にとんだ本。脳と身体というのはよく切り離されて考えられることが多いのだが、よくよく考えて見ると脳も身体の一部なわけで、それらを切り離してする議論はどこかおかしい者がある。
    あと、脳の情報の処理は同時的というのも確かに意識はしていないのだが、非常に当たり前な感じだ。論理という時系列のロジックでは限界があるというのもうなずける。

  • 脳と身体を総体として捉える。

    ・私が他のスポーツ指導者と一番違うところは自分のやっていることを「正しい」とは思っていない、ということなんですよね。(中略)「これが最高」とか「正しい」ということは、もう伸びしろがなくなってしまうことでしょう。62,63

    ・僕は今、大学院生の入試面接試験を担当することがあるのですが、そこではとにかく元気さと野次馬根性で選んでいます。(中略)体力ってすごく大事ですね。69,70

    ・「家康しかみ像」123
    自戒の念を忘れぬため、大便を漏らした自分の肖像画を座右に置いた家康。

  • ねじまき鳥クロニクルのレビューで少し触れた「自分の深層にあるものを表現するということは、論理では説明できないものを表現することであり・・・」という点について、この本は解き明かしてくれています。

    古武術研究家の甲野善紀氏と脳科学者、茂木健一郎氏の対談をまとめたものです。

    のっけから甲野氏は身体の動きとは「様々な部位が同時に並列的に動くものである。今のスポーツ科学はそういった解釈が排除されている」と言います。

    つまり現代の科学はA→B→Cといった単一的な論理の流れで自然を説明しようとしていて、それは、全く無理無意味なことで、自然というのは様々な事象が同時に作用していく、いわば同時並列性で解釈していくべきであると言い、茂木氏に意見を求めます。

    いきなり自然科学分野の研究方法を否定されて、さぞ茂木先生、ご立腹かと思いきや、茂木氏もこれに同意します。
    「脳の働きは単独ではありえない。体の一部なのだから、互いに影響しあうことが活性化につながるのだ」と・・・

    歴史論や、芸術論、さらに教育論へと話は進みますが、結局、優れた知的活動も同時並列的に処理されたものであるという結論に達します。

    モーツアルトは数々の名曲を短時間で書き直しなしで作ったといわれているし、優れた絵画や、小節にしても、その人の持つ様々な知識や感性を総動員して作られたもので、そういったものが人々を感動させるのだと。これはA→Bという時系列的な考えでは説明不可能なことです。

    私たちの生き方も、時系列的に理屈で考えるのではなく、同時並列的に、バランスをとりながら考えていくべきだと思います。

    中国の思想家で「孔子」という人がいますがその言葉の中に「中庸」という言葉があります。

    正にバランスをとる生き方が大切なことなのだという事を教えてくれます。

  • レベルの高い雑談。ちょっと偏ったトークを楽しむ本。

  • 師匠や先輩は、常に先にいなければいけないという理由を改めて確認が出来ました。

    引用:
    「師匠」という存在の一番の意味は「こういうことができる人間がいる」ということを示すことにある。可能性を示し、映像ではなく、生で、言語化できない膨大な情報として実感させる。最終的にはどう受け止めるかということ。

  • 茂木健一郎さんは脳科学者、甲野善紀さんは武術家であり、お互いに違う立場からの脳や身体の関連性についての発想が面白く、飽きることなく読了した。
    脳の働きである「知」が時には、命のやり取りが前提となっている武術では命取りになるかもしれない。
    そのためには、ある意味での鈍感力が大切になってくる。
    全てを知で解明しようとしない方が良いのだろう。
    いざという時に、脳のリミッターが外れて火事場の馬鹿力を出せるであろう人間の能力って素晴らしい。

  • ここ数年注目を浴びている論客2人の対談。
    所属している学会なり世界では異端として扱われているだろうこの二人。世界を広く見ようというオープンマインドな姿勢が問われるようになって久しいが、実践できている数少ない人間なのだろう。

    科学の要素還元的なアプローチが身体や脳という複雑系を扱うのにふさわしくないという問題提起。達人の技はこつこつ技術を積み上げていくのではないのだ、出来るか出来ないかしかないのだ、(何だか相転移を思い出させる)というのは何だか賭けみたいで時代感にはそぐわないかなと感じた。そしてこういう時代感そのものが、社会に面白くない人間、小粒な人間ばかりが出てくる原因なのだとも論じていた。

    情報ないしシンボルにばかりかまけていても、発想が貧しくなるというのも示唆的だった。やはり、本物に触れなくてはいけないのだ。そういう意味で、本による知的体験も間接的な啓発にすぎず、どうにかしてこのリアリティを組み込む方法はないものかと考えたい。やっぱスターウォーズみたいな3次元のやつが出来るのがてっとりばやいだろうけど、何年後だ。

    小1時間で読める割には良い本だと思う。

  • 養老孟司、茂木健一郎、内田樹、甲野善紀。今注目をあびているのは身体論である。
    脳が肥大化した現代。都市の限界。要素還元主義の限界。要するに近代・理性万能主義を克服する必要があるという点では、ポストモダンのおなじみの言説なのだが、

著者プロフィール

1949年、東京生まれ。
20代はじめに「人間にとっての自然とは何か」を探究するために武の道へ。
1978年、松聲館道場を設立。
以来、日本古来の武術を伝書と技の両面から独自に研究し、2000年頃から、その成果がスポーツや音楽、介護、ロボット工学などの分野からも関心を持たれるようになり、海外からも指導を依頼されている。
2007年から3年間、神戸女学院大学で客員教授も務めた。
2009年、独立数学者の森田真生氏と「この日の学校」を開講。
現在、夜間飛行からメールマガジン『風の先・風の跡』を発行している。
おもな著書に、『剣の精神誌』(ちくま学芸文庫)、『できない理由は、その頑張りと努力にあった』(聞き手・平尾文氏/PHP研究所)、『ヒモトレ革命』(小関勲氏共著/日貿出版社)、『古の武術に学ぶ無意識のちから』(前野隆司氏共著/ワニブックス)などがある。

「2020年 『巧拙無二 近代職人の道徳と美意識』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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