- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862761668
感想・レビュー・書評
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いわゆる「知能」は、
今でも、IQの高さや成績の良さなどを尺度に語られる性質のつよいものです。
これらは、最近では「認知スキル」とくくられるそうです。
そして、認知スキルこそが何より重要だとする人(認知決定論者)の言い方として、
「重要なのはIQであり、それは人生のかなり早い段階で決まるものである。
教育とはスキルを身につけさせるものではなく、人々を選り分け、
高いIQを持った者に、潜在能力をフルに発揮させる機会を与えるものだ。」
というものが、いくぶん極端ではありますが、あります。
そういった「認知スキル」のいっぽうで「非認知スキル」と呼ばれる能力があります。
「非認知スキル」とは、やり抜く力、自制心、好奇心、誠実さや意志の強さなどなどのことです。
本書では、「認知スキル」よりも「非認知スキル」のほうがずっと大切である、
という昨今の研究を軸に、
発達心理学と労働経済学、犯罪学と小児医学、ストレスホルモンと学校改革など、
それぞれ独立した分野を繋げることで浮かびあがる事実から、
子ども時代の貧困などからくる劣悪な家庭環境や人間関係などの逆境でそこなわれる人生を、
どうすれば救えることができるのかを探り明かしていきます。
「非認知スキル」をはぐくみ、生かして好転するケースやデータを例示し、
とりあげられたさまざまな逆境にあえいできた人物のストーリーを語りながら、
その大事さがつまびらかになっていきます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
子どもの頃、どういう力を持っている子が将来的に幸せになれるかを、多くの調査データを使って考察している本。
正解を導き出すことはできないけれど、筆者なりの考察が最後に載っている。
多くの調査データが、とても興味深かった。
特に貧困層の子どもに対して有効な手立てについて多く述べられていた。
札幌市の図書館で借りた本。 -
ペリー就学前プロジェクトと非認知スキルの詳細が知りたくて行き着いた。タイトルが嫌な感じだけど中身はいたって真面目。ただジャーナリストが書いているので描写が多くて、実験の内容を端的に把握しづらい。
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・ 泣いたときに親からすぐにしっかりとした反応を受けた乳児は、一歳になる頃には、泣いて無視された子どもよりも自立心が強く積極的になった。(愛着理論attachment theory)
・ 達成のメカニズムは二つに分けて考えるとわかりやすい。動機付けと意志だ。
・ 気質:やり抜く力/自制心/意欲/社会的知性/感謝の気持ち/オプティミズム/好奇心
・ 知的な、あるいは身体的な能力を試すテストの前に帰属する集団に関係する事柄をほのめかされると、テストの結果に大きく影響するという。
・ やり抜く力とは、一心に一つのゴールを目指す行動と深く結びついた自制心のことだ
・ 初級者は気に入ったてを見つけると確証バイアスの罠に入りやすい
・ 失敗を“なんとかする”ことを学ばせる必要があるのだ
・ ハーバードの学生はなぜウオール街を目指すのか。選ぶことが用意であらがうことのできない困難な道を会社側が用意するからだ。「特にこれをやりたいという確固たる願いよりも、成功者になれないことへの恐怖に突き動かされている」 -
教育関係者にはぜひ読んで欲しい一冊。
教育に関わった経験のある人なら誰でも考えたことがあると思う。
「どうしたらもっと教育の効果を高められるんだろう?」
「自分が行っている教育は果たして効果があるんだろうか?」
「今、目の前にいる子どもの役に、本当に立てているんだろうか?」
そして、
「上手くいく子と行かない子の違いは何なのか?うまくいかない子にできることは何なのか?」
こうした問に本気で答えようと試みるアメリカの教育理論と最先端の実践例を紹介した本。
何年か現場で関わってくる中で、感じていたことが書かれまくっていました。
子どもが将来自分の人生を切り開いていくための核となるものはなんなのか。
それは、「やり抜く力」「自制心」「好奇心」「誠実さ」といった非認知的スキル(知識などの認知的スキルに対しての)である。
そしてこれらは持って生まれるものではなく、親と子のコミュニケーションの中から育つものである。
最新理論とは言っても、教育という分野の特性上、確たる正解のあるものではないけれど、自分の実感としては非常に納得感のある本でした。
中でも個人的には「レジリエンス」というキーワードがとても大切だと感じた。
レジリエンスとは、回復力・抵抗力などを含む弾力性。困難な状況やそれによるストレスなど負の要素を跳ね返す力。
この力を持てているかどうかは本当に大切だと思う。
これは今後教育だけでなく、大人の世界でも重要なキーワードになるんじゃないかな。
不安定な社会の中では、予測しきれないストレスにさらされることは多いので、個人としてそれに立ち向かえることが大切だし、チームマネジメントにおいてもメンバーの、チームのレジリエンスを高められるように努めることは重要になっていくと思う。
さて、この教育理論を社会全体で取り入れていくには、どうしたらいいか。
まず、幼少期の経験が絶対的に大切になってくるのは間違いないので、教育以前の家庭の支援、子育て支援のプログラムにもこうした視点を取り入れていく必要があるのかな。
そして、学校教育。この本をぜひ教育関係者に読んで欲しくなるすごい点は、取り上げられている現場が、初等教育・中等教育・高等教育と幅広くカバーしていること。
性格の強みを作る一番の環境は幼少期の親子の愛着関係にあるとしながらも、そこからもれた子もフォローすることのできる教師の可能性を提示している。
このプログラムを実行すれば絶対という万能の解決策はやっぱり、ない。たぶんこの先もない。
現場に有能な教師が必要、というのはあまりにありふれているかもしれないけれど、それでもこの本が提示する道はとても地道でとても実践的。
この本からはアメリカの教育の現場の変化、進化がものすごくダイナミックなことが伝わってきます。翻って日本はどうだろう。
自民党政権も教育には熱心です。道徳教育の大切さを
説いたりとか。この本で言う非認知的スキルとは言ってみれば「性格」のことなんだけど、単なる倫理観とは違う。倫理が大切でないのではなくて、文化的な倫理観を超えて大切な核があるということ。
そして、それを現場重視で実行していくということ。
日本はまだまだだけど、ちょうど放課後教室の拡充を政府が検討し始めているところのようだし、色々な大人が関わって実践を積み重ねていく余地が増えていくと良いなと思います。 -
これからの子育ての参考になればと思い、本書を手にとってみた。
なるほど、知能教育が全てではなく、やり抜く力、性格の教育が大事だということなんですね。
確かに続けられるっていうことは、一つの才能だと思うので、何か腑に落ちたところもありました。
本書では具体的な事例としての最新の教育研究事例も紹介されており、わかりやすい事例が多かったです。
子供を育てて行く上では、粘り強さ、自制心、好奇心、誠実さ、物事をやり抜く力、レジリエンス(回復力、抵抗力などを含む弾力性、負の要素を跳ね返す力)、失敗を恐れない勇気、楽観主義、勤勉性、感謝の気持ちなどなど、教えるべきことはたくさんあるようです。
とにかく、出来ることからコツコツとですね。。 -
最近読んだ教育系の本の中で最も実りを得た本であると感じた。初等、中等、高等どの領域の教育分野に携わっている人にも本書を読むことを強くおすすめする。
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かつて「日本には一つだけ埋蔵された資源があります。それは、勤勉性です」と吉田茂が打ったように、究極は勤勉性。IQが高くても低くても、やっぱり勤勉性。
勤勉性、やり抜く力(Grit)など、子供の中に眠る資質を確信し、そこにターゲットを絞って引っ張り出してあげるためには、大人こそ、そこに価値を置いていなければならないと痛感させられた一冊。
日本のヤンキー漫画も真っ青なシカゴのギャングだらけの学校や、十代の出産が祖母の代からであるなどの家庭環境を徹底的に調査し、そこから抜け出した子ども達には何があったのかなど、事実ベースに徹底した良書と言える。