成功する子 失敗する子――何が「その後の人生」を決めるのか

  • 英治出版
3.56
  • (38)
  • (51)
  • (62)
  • (14)
  • (8)
本棚登録 : 1065
感想 : 77
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862761668

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • いわゆる「知能」は、
    今でも、IQの高さや成績の良さなどを尺度に語られる性質のつよいものです。
    これらは、最近では「認知スキル」とくくられるそうです。
    そして、認知スキルこそが何より重要だとする人(認知決定論者)の言い方として、
    「重要なのはIQであり、それは人生のかなり早い段階で決まるものである。
    教育とはスキルを身につけさせるものではなく、人々を選り分け、
    高いIQを持った者に、潜在能力をフルに発揮させる機会を与えるものだ。」
    というものが、いくぶん極端ではありますが、あります。

    そういった「認知スキル」のいっぽうで「非認知スキル」と呼ばれる能力があります。
    「非認知スキル」とは、やり抜く力、自制心、好奇心、誠実さや意志の強さなどなどのことです。
    本書では、「認知スキル」よりも「非認知スキル」のほうがずっと大切である、
    という昨今の研究を軸に、
    発達心理学と労働経済学、犯罪学と小児医学、ストレスホルモンと学校改革など、
    それぞれ独立した分野を繋げることで浮かびあがる事実から、
    子ども時代の貧困などからくる劣悪な家庭環境や人間関係などの逆境でそこなわれる人生を、
    どうすれば救えることができるのかを探り明かしていきます。
    「非認知スキル」をはぐくみ、生かして好転するケースやデータを例示し、
    とりあげられたさまざまな逆境にあえいできた人物のストーリーを語りながら、
    その大事さがつまびらかになっていきます。

  • 具体的な事例、データに基づき話が展開されるが、少々事例が多すぎるため流し読み。図書館の期限が迫っているため、エッセンスのみメモする

    子どもが成功するか失敗するかは、経済面との相関がよく取り沙汰されるが、実際の因果関係は別である。子ども時代の逆境がストレスを起こし、悪影響につながるが、親の愛着によってストレスを軽減して悪影響を抑制できる。幼少期はストレス発生時に素早くケアして安心基地を作る、それ以降は見守り適切な失敗をさせること、失敗を適切に振り返る根気強さが重要。

     ACE
    →ストレス
    →アロスタティック負荷(ココを止める)
    →一生続く悪影響

    読み書き計算などの認知スキルよりも、性格面などの非認知スキルの養成が重要。認知スキルは、より早く、多く訓練することで伸びるが、それだけでは”先のことを考える能力や作業にあたる際の粘り、環境への適応能力を欠いたただの物知りにしかなれない。


    ACE(子ども時代の逆境、暴力、性的虐待、ネグレクト、片親、親族が収監など)は、成人後までの健康(肥満、鬱、性行為開始年齢、喫煙歴、有病率)と高い相関があり、喫煙や過度の飲食などの習慣がなくても、高ACEは健康に悪影響

    ACEによりストレスが生じ、ストレスに対してHPA(視床下部・下垂体・副腎系)が反応する結果、人体に悪影響を及ぼし、これをアロスタティック負荷と呼ぶ。

    アロスタティック負荷は、ラットの毛繕いに相当する親のケア、愛着、があれば悪影響を及ぼすことはなくなる。愛着は特別なケアではなくジェンガのゲームの最中に母親が子供の感情の動きに敏感であるなど、あたたかく敏感なケアで子どもが外の世界に出でいくための安全基地となれれば十分。

    育てるべき性格・気質は、以下の7つ
     やり抜く力グリット、自制心、意欲、社会的知性、感謝の気持ち、オプティミズム、好奇心

    グリットや自制心は、失敗を通してしかえられないので適切な失敗を見守る必要がある。ビルキャンベルの基準(知性、誠実、勤勉、グリット)とも通ずるところアリ。


    上記の性質が欠ける事例
    ・マシュマロテスト。自制心の欠如。さらには報酬がなくても頑張れるか。貧困層はIQテストで低い値が出るが、チョコレートを褒美とすると点数が上がる。そもそも真面目に取り組んでいないのである。自分ごとなのに真剣に取り組まない人が多い現実例とも合致、納得。
    ・チェスプレイヤー。超一流と一流の差は、読む手数ではなく、都合の悪い手を見落とさずに取り組めるか。プレッシャーがかかる状況では、楽になろうとして都合の良い発想に飛びつきがち。自制心を発揮して、都合が悪い事実にも直面することが大切。逃れようとする甘い心はアカギに狙い撃ちされる。

  • 子育てにおいて尊敬している方がオススメしていた本。

    読んでみて本当に良かった。
    自身の子育てのヒントになればと思ったけど、
    結果として、日本の子供、ひいては人類に対して誰しも責任があると感じた。
    日本でもますます深刻化していく貧困差。
    それに伴う学歴格差、比例して犯罪率。
    日ごろから憂いてはいたものの、自分には手の届かない世界だと思っていた。
    でも違った。
    この本は希望の塊のようにみえた。
    翻って、人間には格差なんて存在しないと提言している。

    そして、読書中何度も自分の受けてきた教育や学生の時の周りや自分の雰囲気を振り返った。
    それがすべて今現在と直結していることを実感した。
    なぜ自分は大学進学が魅力的と思えなかったのか。
    なぜ自分は勉強が嫌いだったのか。
    改めて、自分史は自分だけの物語であると同時に、こんなにも時代の一部でしかないことを認識した。

    分かったからにはどうすべきかとてもクリアになった。
    たくさんの指南も与えてくれている本だ。
    子供への責任。そして自分への責任。
    本当に豊かな読書体験になった。

    個人的にはこの翻訳はとても読みやすかった。
    この本は、ハウツー本?というより、貧困地区に暮らす学力格差底辺の子供達に学士号を取らせるために人生をかけた人たちのお話。だと思う。
    ストーリー仕立てだし、いくつもの映画を観たような気持にさせられる。
    まさか号泣するとは思わなかった。。。

    最後に、子育てのヒントは以下のように得られた。
    忘備録としてのせる。

    親がしてあげられること
    子供時代は、安心場所を提供する
    愛情深く注意深く子供を見守る➡子供は快活に好奇心旺盛に精神安定して育つ
    子供に見合った逆境が必要であることを認識する➡やり抜く力は失敗を通してしか育たない
    ある程度(自分で解決させることが何より大切)の放任は必須
    本人以上に本人の可能性を強く信じること➡とくに思春期のやり抜く力に有効な動機付けとなる


    子育て本としてはママ友にはオススメできない。笑
    でも、人間は一人では育てない。
    人間が人間を世話し、教育を施す限り誰しもが無視すべきでない、目を向けるべきことが書かれてある素晴らしい本だ。

  • 子どもの頃、どういう力を持っている子が将来的に幸せになれるかを、多くの調査データを使って考察している本。
    正解を導き出すことはできないけれど、筆者なりの考察が最後に載っている。

    多くの調査データが、とても興味深かった。
    特に貧困層の子どもに対して有効な手立てについて多く述べられていた。

    札幌市の図書館で借りた本。

  • ペリー就学前プロジェクトと非認知スキルの詳細が知りたくて行き着いた。タイトルが嫌な感じだけど中身はいたって真面目。ただジャーナリストが書いているので描写が多くて、実験の内容を端的に把握しづらい。

  • ・ 泣いたときに親からすぐにしっかりとした反応を受けた乳児は、一歳になる頃には、泣いて無視された子どもよりも自立心が強く積極的になった。(愛着理論attachment theory)
    ・ 達成のメカニズムは二つに分けて考えるとわかりやすい。動機付けと意志だ。
    ・ 気質:やり抜く力/自制心/意欲/社会的知性/感謝の気持ち/オプティミズム/好奇心
    ・ 知的な、あるいは身体的な能力を試すテストの前に帰属する集団に関係する事柄をほのめかされると、テストの結果に大きく影響するという。
    ・ やり抜く力とは、一心に一つのゴールを目指す行動と深く結びついた自制心のことだ
    ・ 初級者は気に入ったてを見つけると確証バイアスの罠に入りやすい
    ・ 失敗を“なんとかする”ことを学ばせる必要があるのだ
    ・ ハーバードの学生はなぜウオール街を目指すのか。選ぶことが用意であらがうことのできない困難な道を会社側が用意するからだ。「特にこれをやりたいという確固たる願いよりも、成功者になれないことへの恐怖に突き動かされている」

  • 教育関係者にはぜひ読んで欲しい一冊。

    教育に関わった経験のある人なら誰でも考えたことがあると思う。

    「どうしたらもっと教育の効果を高められるんだろう?」
    「自分が行っている教育は果たして効果があるんだろうか?」
    「今、目の前にいる子どもの役に、本当に立てているんだろうか?」

    そして、

    「上手くいく子と行かない子の違いは何なのか?うまくいかない子にできることは何なのか?」

    こうした問に本気で答えようと試みるアメリカの教育理論と最先端の実践例を紹介した本。

    何年か現場で関わってくる中で、感じていたことが書かれまくっていました。

    子どもが将来自分の人生を切り開いていくための核となるものはなんなのか。
    それは、「やり抜く力」「自制心」「好奇心」「誠実さ」といった非認知的スキル(知識などの認知的スキルに対しての)である。

    そしてこれらは持って生まれるものではなく、親と子のコミュニケーションの中から育つものである。

    最新理論とは言っても、教育という分野の特性上、確たる正解のあるものではないけれど、自分の実感としては非常に納得感のある本でした。

    中でも個人的には「レジリエンス」というキーワードがとても大切だと感じた。
    レジリエンスとは、回復力・抵抗力などを含む弾力性。困難な状況やそれによるストレスなど負の要素を跳ね返す力。

    この力を持てているかどうかは本当に大切だと思う。
    これは今後教育だけでなく、大人の世界でも重要なキーワードになるんじゃないかな。
    不安定な社会の中では、予測しきれないストレスにさらされることは多いので、個人としてそれに立ち向かえることが大切だし、チームマネジメントにおいてもメンバーの、チームのレジリエンスを高められるように努めることは重要になっていくと思う。

    さて、この教育理論を社会全体で取り入れていくには、どうしたらいいか。
    まず、幼少期の経験が絶対的に大切になってくるのは間違いないので、教育以前の家庭の支援、子育て支援のプログラムにもこうした視点を取り入れていく必要があるのかな。

    そして、学校教育。この本をぜひ教育関係者に読んで欲しくなるすごい点は、取り上げられている現場が、初等教育・中等教育・高等教育と幅広くカバーしていること。
    性格の強みを作る一番の環境は幼少期の親子の愛着関係にあるとしながらも、そこからもれた子もフォローすることのできる教師の可能性を提示している。
    このプログラムを実行すれば絶対という万能の解決策はやっぱり、ない。たぶんこの先もない。
    現場に有能な教師が必要、というのはあまりにありふれているかもしれないけれど、それでもこの本が提示する道はとても地道でとても実践的。

    この本からはアメリカの教育の現場の変化、進化がものすごくダイナミックなことが伝わってきます。翻って日本はどうだろう。

    自民党政権も教育には熱心です。道徳教育の大切さを
    説いたりとか。この本で言う非認知的スキルとは言ってみれば「性格」のことなんだけど、単なる倫理観とは違う。倫理が大切でないのではなくて、文化的な倫理観を超えて大切な核があるということ。
    そして、それを現場重視で実行していくということ。

    日本はまだまだだけど、ちょうど放課後教室の拡充を政府が検討し始めているところのようだし、色々な大人が関わって実践を積み重ねていく余地が増えていくと良いなと思います。

  • これからの子育ての参考になればと思い、本書を手にとってみた。
    なるほど、知能教育が全てではなく、やり抜く力、性格の教育が大事だということなんですね。
    確かに続けられるっていうことは、一つの才能だと思うので、何か腑に落ちたところもありました。
    本書では具体的な事例としての最新の教育研究事例も紹介されており、わかりやすい事例が多かったです。
    子供を育てて行く上では、粘り強さ、自制心、好奇心、誠実さ、物事をやり抜く力、レジリエンス(回復力、抵抗力などを含む弾力性、負の要素を跳ね返す力)、失敗を恐れない勇気、楽観主義、勤勉性、感謝の気持ちなどなど、教えるべきことはたくさんあるようです。
    とにかく、出来ることからコツコツとですね。。

  • 最近読んだ教育系の本の中で最も実りを得た本であると感じた。初等、中等、高等どの領域の教育分野に携わっている人にも本書を読むことを強くおすすめする。

  • かつて「日本には一つだけ埋蔵された資源があります。それは、勤勉性です」と吉田茂が打ったように、究極は勤勉性。IQが高くても低くても、やっぱり勤勉性。

    勤勉性、やり抜く力(Grit)など、子供の中に眠る資質を確信し、そこにターゲットを絞って引っ張り出してあげるためには、大人こそ、そこに価値を置いていなければならないと痛感させられた一冊。

    日本のヤンキー漫画も真っ青なシカゴのギャングだらけの学校や、十代の出産が祖母の代からであるなどの家庭環境を徹底的に調査し、そこから抜け出した子ども達には何があったのかなど、事実ベースに徹底した良書と言える。

高山真由美の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×