謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か
- 英治出版 (2017年5月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862762252
作品紹介・あらすじ
『人を助けるとはどういうことか』著者、最新刊!顧客、部下、同僚、友人、家族…誰かに相談されたとき、どうすれば相手の役に立つことができるだろう?自分ではなく、相手が答えを見出す「問い方と聴き方」。
感想・レビュー・書評
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問題には2種類ある。それは、「技術的課題」と「適応を要する課題」である。
「技術的課題」は、正解がある問題。その問題の専門家が存在し、問題の所在に関して探るための診断をしてくれるし、その解決策を提示してくれる。例えば、医師と患者の関係が分かりやすい。健康診断、あるいは、場合によっては、精密検査を受けることにより、医師があなたの病気を特定してくれる。そして、投薬によって治療するのか、外科手術を施すのか、あるいは、しばらく様子を見るのか、などの解決策を提示してくれる。問題は簡単ではないことも多いが、正解を見出すための方法論が存在すると考えられている。
一方で、「適応を要する課題」とは、最初から正解が分かっているわけではない、あるいは、そもそも、問題が何かが分かっていない課題。色々なことを試みてみたり、あるいは、自分自身が変わったり、問題の関係者間の関係が変わったりすることによって、物事が良くなる方向に動いたりするもの。人間社会で起こる問題は、殆どが、これに属すると思う。例えば、コロナ禍における緊急事態宣言発出の可否。最初から正解が分かっているわけではないし、そもそも正解があるのかどうかも分からない。関係者・利害関係者も多いが、利害が同じであっても、意見が異なったりする。それでも、緊急事態宣言を発出するかどうかを決めなければならない。
私は、会社の中で人事の仕事をしている。会社の中の人に関する問題は、殆どが適応を要する課題である。会社の中の人事スタッフ、あるいは、他の職能のスタッフは、ある意味で、現場にとってのコンサルタントである。技術的課題に対応するのは、簡単ではないが、やれないということはない。人事で言えば、例えば、労働法の適用関係を問われる問題。条文があり、判例があり、それでも分からなければ弁護士に相談してみれば良い。一方で、例えば、「どうすれば、この職場の人間関係は良くなるのだろう?」とか、「若い人たちの育成にあたるマネジャーにどのように振る舞ってもらえば良いだろう?」など、正解があるかどうか分からない問題も多く、どちらかと言えば、こちらの問題の方が多い。
本書は、コンサルタントが、クライアントの問題を解決するにあたって、どのようなことを心がけるべきかを示してくれる。特に、「適応を要する課題」について。
会社の中のスタッフ部門の人は、読むべき本だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1.最近のサービス業はコンサル化していることを強く感じたのですが、今までのようなコンサルでは仕事にならないと思い、自分なりにどのようなコンサルとなりたいのかを考えた結果、提案よりもヒアリングを重視したやり方がベストだと思いました。そんな中で、本書に出会い、今までとは違うコンサルのスタイルを学びたいと思いました。
2.コンサルの中で最も重要なのは「役に立ちたい」というマインドです。これまでのコンサルは、ヒアリングと分析を行い、答えを導き出すスタイルが主流ですが、会社を経営しているのが人である以上、感情を持っています。そのため、ヒアリングしたことがすべて正しいとは限りません。そこで、より正確に深くヒアリングをし、課題を見つけ出すためには「謙虚なコンサルティングの姿勢を学ばなくてはならない」ということが本書の目的です。
これを実現するためには「相手が答えを見出す問い方と聴き方」を身に着けていく必要があります。今までのコンサルがこれを怠ったわけではありませんが、現代は問題がより複雑かつスピーディーに変化しています。また、コンサルが大量発生したため、どの会社を選べばよいのかがわからなくなることもあります。その判断基準として、本書ではレベル2の信頼関係、つまり、仕事だけではなく、プライベートも仲良く(決していつも一緒にいるということではない)するほど良いとされています。これらを実現してきた事例として、人材育成の視点から様々な経験が語られます。
3.ちょうど、今日上司と子会社に指導を行ってきました。やはり、旧世代のやり方を踏襲していたので、その子会社の結果は何も変わってませんでした。数字で見せて指摘を入れても長らく改善していないそうです。「相手を変える」という視点を脱却し、「自分から変わる」「相手に気づきを与える」という方向性で仕事をしなければ状況は改善しないと確信しました。本書では、相手に興味を持つことや自分が無知なふりをして相手に気づかせるテクニックについても幅広く説明しています。私は、まずは「マインド」から鍛えていきたいです。そしていつかは一言で相手に気づきを与え、相手が成長するきっかけを与えられる人間でありたいと思います。 -
発売後、わりとすぐに購入していたけどずっと積読していた本。コンサルとしての独立二年度目に入るということで改めて自分の姿勢を見直すヒントを得たいということで久しぶりにシャイン先生にお頼りすることに。
この本は何というか、シャイン流のプロセスコンサルテーションの注釈本という気がします。あくまで本論はこれまでの著作であって、そこに書ききれなかったけどわりと大事だよという点であったり、最近他分野で色々言われているエッセンスをプロセスコンサルテーションの範疇に統合するとこんな感じ、というところでしょうか。シャイン先生自身は「まったく新しい」とも言っているので読み取り方が浅いのかもしれませんが。
ということで初めての人は『人を助けるとはどういうことか』など先に手にした方が良いと思うし、その方が感動が大きいと思います。
この本で語られる謙虚なコンサルティングとは
「力になりたいと思って本気で尽力し、クライアントとクライアントが置かれている状況を心底気遣う姿勢のことだ、と。その姿勢を最初の瞬間から確実にクライアントに伝えるには、真摯な好奇心を全開にするといい。誠実で自然に沸き起こる好奇心ほどクライアントに対する関心と気遣いを確かに伝えるものはない。そのため、この姿勢は3つのCによって表されると言える。力になりたいと言う積極的な気持ちcommitmentと、クライアントに対する思いやりcaring、わけても大切なのが好奇心curiosityである。そして新たな姿勢を持つには新たなスキルもまた必要になる。」
新たなスキルとして最も重要なのは「聴き方」であり、個人的に打ち解けた関係を作った上で質問していくことが重要。
関係構築の大切さは従来のコンサルや営業でもラポール形成とか色々言われてきたわけですが、「聴き方」によって変わる、というのが本書の主張。聴き方には3つの種類がある。
①自己中心的に聴く
自分の知識や経験やスキルを活かすことによって、私は今話されていることに対し、どのように関わり、支援することができるだろう、という自分に関連あることに考えを巡らせながら聴いてしまい話を聴くのが疎かになる。
②内容に共感しながら聴く
クライアントがどんな問題や課題、あるいは状況を伝えようとしているのか、クライアントが伝えたいと思っていることの中でよく考えるべき問題の要素は何か、と言う点にフォーカスした聞き方である。これは、内容に誘惑されることと同じではない。それは、自分がもしその状況に置かれたらどうするかということにすぐ想像の翼を広げてしまい、集中力がその想像へ向かってしまうものに過ぎない。
③人に共感しながら聴く
コンサルタントに話している状況について、クライアントが実際にどのように経験し、感じているのかに焦点を当てた聴き方である。この場合、最大の注意と好奇心を向ける先は、クライアントの声などちょっとしたところに2時間緊迫感になり、そうしたサインをしっかり捉えると、クライアントが状況の詳細を述べながら感じているだろう思いを読み取ることができる。
基本的に初期の打ち解けた関係構築を目指すためには③を志向するべきで、そのために診断的な質問(なぜ、どのように感じた、どんな行動をとったか)や循環的な質問(組織のほかの人たちがどのように考え、感じ、行動していると思われるかを考えてもらう)、示唆的な質問(ある種の介入であり、タイミングが問題。なぜなら考えもしなかったことについて検討するようクライアントに求めることになるからであり、支援者は、助言するタイミングが早すぎたら信頼を損ねてしまうという点について、最も慎重になるべきだからでもある)、プロセス指向の問いかけ(次の三つのうちの一つを選ぶことになる。問題に対する自分なりの分析を説明しようとするクライアントの話についてその焦点を変える、支援のプロセスでクライアントがコンサルタントにしてほしいと思っていることを変える、そして今この場でのクライアントとのやりとりに集中する)
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これからのコンサルティングのあり方に触れる一冊
コンサルティング業務に関る者として、題名に惹かれジャケ買い。
『謙虚なコンサルティング』と聞くと、クライアントの言う事を素直に受け入れる
御用聞きの様なコンサルティングスタイルの様に聞こえるがそうではない。
原題は、“Humble Consulting: How to Provide Real Help Faster”なので、
本当の意味合いとしては、『控えめなコンサルティング』といった方がしっくりくる様な気がする。
今までのコンサルティングと言うと企業の課題に対して、状況を把握→課題の抽出→対応策の検討→クライアントへの提案と言った、コンサルタント主体の一方通行的なアプローチが主流だった。
ただ、現代の様に変化のスピードが早く、問題が複雑化している状況では、
上記の様な通り一辺倒のアプローチでは課題の解決ができないと言うのが著者の着眼点である。
ではどうすれば良いのか?
クライアントを巻き込み、クライアントの主体で課題解決をして行く必要があるという、
その為にはコンサルタントは黒子のように、控えめにクライアントをサポートする必要がある
と言うのが本書の論旨である。
ただ、この黒子に徹しながらも、クライアントへコンサルタントの価値を最大限提供する為に、
クライアントとの関係をよりパーソナライズしたものにする必要があると説いている。
なかなか実践するのは難しい内容だが、著者のエピソードが中心なので、自分ならどうするか
頭の整理をしながら読める一冊。 -
コンサルがわからなくて手に取った本。
著者の実体験を交えながら、その仕事に必要な心構えを教えてくれました。
『人は話し方が9割』の強化版。 -
コンサルとは何か?の学びのため
最初から入ってこなかった
数ページで挫折 -
キャリアコンサルタント試験対策及びその後の学びのために購入。
大企業での組織論がメインな印象。
現在の私の立ち位置とはちょっと違う(苦笑)
しかし、示唆に富む部分は普通にある。
払ってもいい金額:800円
貼った付箋の数:11 -
東2法経図・6F開架:336A/Sc2k//K