FUKUSHIMAレポート 原発事故の本質

  • 日経BPコンサルティング
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  • Amazon.co.jp ・本 (500ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864430005

感想・レビュー・書評

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  • 想像以上の面白さでした。
    前回読んだ「福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書」が、徹底的に福島原発事故の検証と今後の提案にフォーカスしていたのに対して、こちらでは福島原発事故の検証自体は前半の200ページ程度に割り当てられ、残り300ページは日本の電力産業の歴史とその構造や、核兵器保有と原子力政策の関連、そして国際的なエネルギーセキュリティの展望など、内容は多岐に渡ります。

    特に面白かったのは、日本の原子力政策。ひょっとすると一種の陰謀論なのかもしれませんが、日本は戦後、核兵器保有は否定するが、核兵器製造技術のポテンシャルは維持する、、、という思想のもと、原子力発電所の導入が推進されてきたと述べられています。それに加え、高度経済成長とともにエネルギー自給論が高まり、核燃料再処理、プルサーマル、高速増殖炉など核機微技術(核兵器を作ろうと思えば作れる技術)に多額の費用(税金)を使ってきたといいます。一方で、現在、抑止力となりうるプルトニウム保有量は既に十分な量となる中、特に高速増殖炉の技術的壁の高さから、実用化は不可能との見方が強まり、再処理の必要性も疑問視され、日本が機微技術に執着する必然性が低下している・・・日本の原子力政策は既に破綻している、、、という一連の仮説には、説得力があります。

    ほかにも、日本人の特性(他国に比べ、圧倒的にメディアや政府に従順)から見た風評被害の検証や、日本の人口減少と関連した将来の電力産業のあり方(電力業界再編とエネルギーの自由化・多様性に)提案、中国やインドなどの新興国視点での原発普及の可能性に関する示唆など、面白い視点と興味深いコンテンツが盛りだくさんでした。

    福島原発事故だけでなく、日本のエネルギー産業の歴史や、今後の可能性などについて知りたい方にもぜひオススメしたい本でした。

  • 福島第一原発の事故原因を公開されているデータからその真相を考察した一冊で、非常に興味深く読むことができます。現在のエネルギー生産方法についてのコスト比較や国が原子力政策を進めた理由など、全く知らなかったことばかりなので、非常に勉強になりました。

  • 戦後の経済復興に伴う原子力発電事業は、画策された本来目的のため国策民営化した電力業界によって独占的経営が長期的になされてきた。がゆえに本来ハイリスクの原子力を扱うに必要な技術経営のコアコンピタンスが置き去りにされ「技術経営の誤謬」により最悪の事態を招いたといえる。

    東電はじめ原子力安全委員会、原子力安全・保安院の所詮「他人事」としか現実を捉えない発言は、培われてきた「無責任体制」の土壌を物語っている。同時に強固な4層コロニアル構造「米国-中央-地方-ムラ」により、もはや社会的にも経済的にも動きのとれない社会が築かれてしまった。

    「私たちは腹をくくって、(汚染された)放射能とともに生きていくために必要なバランス感覚を持たなくてはならない」

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