私も「移動する子ども」だった

著者 :
  • くろしお出版
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本棚登録 : 88
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784874244746

感想・レビュー・書評

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  • 日本にいる帰国子女を対象とした考察の本です。全員現在日本或いは日本を中心に生活していて、幼少期(言語形成期)が日本か海外か二つのグループで分けています。全書はインタビューの形のため、言語学が専門外でも好きな部分を軽く読めます。特に、世間では帰国子女が生まれつきのように外国語が得意に見えていますが、この本で彼らの言語形成の過程を覗いてみると、さすがに時間を学習に投入が重要だということがわかっています。ただし、多言語の環境では親或いは友達等のフィードバックを得られるので、比較的に楽になります。また、昔文字の知らない人もたくさんいる時代だと当たり前のことですが、自由に交流できたとしても、「書けると読める」帰国子女は比較的に少数派です。というので、言語の習得はどんな環境であろうか、共通点が多いとの可能性が高いこと。最後に、著者も少し触れたのですが、移動するこどもはアイデンティティの混乱が発生しやすいこと。そのため、自分のアイデンティティを変えようと、言語を選択しています。一方で私は言語の環境でアイデンティティを得られるかに興味があります。もう少し考察できたらよいなと感じています。

  • 人のアイデンティティ、そのバックグラウンドは多種多様。見た目や、名前や、どんな言語を話すかだけでは、わからないことがある。

  • 著者のそれぞれのコメントが温かく、自分もこう生徒に接してあげたいと思った。
    「バイリンガルとは、決して複数の言語を高度なレベルまで引き上げることが目標ではなく、自分の中にある言葉という資源とどう向き合い、どう生きていくかという「生き方」こそ考えるテーマである」は至言であった。

  • 「移動する子ども」とは、親や子ども自身が国境を越えて「移動」している、二つ以上の言語の間を「移動」しながら成長している、その結果外国語教育や母語教育などの間を「移動」しているという特徴がある。(本文より抜粋)
    日本で活躍する10名の“移動する子どもだった”著名人へのインタビューによって見えてくる彼らのアイデンティティと言語能力を早稲田大学大学院教授日本語教育研究科の川上郁雄教授が分析。わたしたちが移動する子どもたちとどう向き合っていけばよいのかを考えさせられる一冊。ICBAとしては、“みどりの森文庫”(アイルランド)の稲垣みどりさんが川上教授のもとで研究されているというご縁があります。(運営 海保由子)
    NL71号2012年4月号

  • 日本に基盤を置く、著名な「移動する子どもたち」のインタビューをまとめた本。合間合間に分かりやすく解説がなされており、授業で使っても面白そう。

  • 20130804読了
    インタビューの逐語録。副題は「異なる言語の間で育った子どもたちのライフヒストリー」。●ハーフ=二か国語を自在に操るというわけではない。複数言語の中で育つことによる混乱、2つの祖国への思い、アイデンティティの迷い等々、率直に語られている。●第一部は幼少期に日本国外で暮らし、その後日本へというパターンの人。セイン・カミュ、一青妙、華恵、白倉キッサダー、響彬斗・響一真。第二部は幼少期から日本で暮らし、複数言語の中で成長したパターン。コウケンテツ、フィフィ、長谷川アーリア ジャスール、NAM。

  • 「多言語環境に育つ子供」だったおとな(若者)たちへのインタビュー集。ありがちな英語偏重がなく、対象者たちの立ち位置もハーフ・在日外国人・在外日系人と多岐に渡っており、貴重な資料となっている。
    興味深かったのは、インタビュー対象者が異口同音に「自分の言語能力は中途半端だ」と述べていることだ。それも、物理的に複数の国を「移動」して育った子供のみならず、ルーツこそ外国だが生まれてこのかた日本育ちで教育もすべて日本、両親の母語は第二言語として勉強させられたが続かず挫折…というような人でさえ、己の言語能力を、日本語も含めて「中途半端だ」と言うのである。
    この理想の高さは、母国・母語・アイデンティティが当たり前にひとつところに収束する人間と、そうでない人間との意識の差なのかもしれない。しかし、そのあたりは本書がテーマを「言語」に絞っており、対象者の詳しいおいたちやアイデンティティにまで踏み込むものではないため、いまいち判然としない。これは私が著者の意図からはズレたところに興味を抱いたためではあるが、読後感はやや漠然としたものになった。
    そうは言っても、さらっと読むだけでも単純に興味深い内容になっている。一度めはふんふんと楽しんで読み、時間を置いて二度・三度と振り返り、かみしめながら読んでみたい。そんな気持ちにさせられる、示唆に富んだ本である。

    2012/11/30読了

  • 言語的観点から。異なる言語間で育った子供達のインタビュー集。参照した。

  • セイン・カミュさんやフィフィさんなど、
    日本で育った外国人や、両親が日本と別の国の国の方というハーフの体験記です。

    インタビューをテープ起こしした形式で、
    書き言葉になっていないので少し読みにくいですが…。

    どんな風に日本語を覚えたか、
    母語を話せなくなる不安など、様々なことが分かる一冊です。

  • 日本語研究科の授業で使った。
    これからどんどん増えてくるんだろうなー。

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著者プロフィール

早稲田大学大学院日本語教育研究科教授。
オーストラリア・クイーンズランド州教育省・日本語教育アドバイザー(国際交流基金派遣日本語教育専門家)、宮城教育大学教授等を経て、2002年より現職。博士(文学、大阪大学)。
専門は、日本語教育、文化人類学。
[主な著書・編著]
『「移動する子どもたち」と日本語教育――日本語を母語としない子どもへのことばの教育を考える』(編著、明石書店、2006年)。『「移動する子どもたち」の考える力とリテラシー――主体性の年少者日本語教育学』(編著、明石書店、2009年)。『海の向こうの「移動する子どもたち」と日本語教育――動態性の年少者日本語教育学(編著、明石書店、2009年)。『私も「移動する子ども」だった――異なる言語の間で育った子どもたちのライフストーリー』(編著、くろしお出版、2010年)。『「移動する子どもたち」のことばの教育学』(くろしお出版、2011年)。『移民の子どもたちの言語教育――オーストラリアの英語学校で学ぶ子どもたち』(オセアニア出版社、2012年)。『「移動する子ども」という記憶と力――ことばとアイデンティティ』(編著、くろしお出版、2013年)。『日本語を学ぶ/複言語で育つ――子どものことばを考えるワークブック』(共著、くろしお出版、2014年)。『公共日本語教育学――社会をつくる日本語教育』(編著、くろしお出版、2017年)。『移動とことば』(共編著、くろしお出版、2018年)。『JSLバンドスケール【小学校編】――子どもの日本語の発達段階を把握し、ことばの実践を考えるために』(明石書店、2020年)。『JSLバンドスケール【中学・高校編】――子どもの日本語の発達段階を把握し、ことばの実践を考えるために』(明石書店、2020年)。

「2021年 『日本語を学ぶ子どもたちを育む「鈴鹿モデル」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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