そして、暮らしは共同体になる。

著者 :
  • アノニマ・スタジオ
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877587550

感想・レビュー・書評

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  • 『キュレーションの時代』のときも感じたけど、佐々木さんは時代の空気みたいなものを切り取るのが上手いと思う。

    いまの気分にとてもしっくりくるし、横のネットワークは自分を救う糧になる。これからは血縁ではなく、赤の他人と支え合う時代になる。家のために個人を犠牲にするのではなく、個人として最善を尽くして、生計をたて、慎ましく健康にすごしていけたらと思う。

  • これから社会がどうなっていくのか、いまどんな変化が起きているのか、個人の生活、社会、企業、インターネット、…色んな切り口から考察されていてすごく読みごたえがあった。

    "「上へ、上へ」という中央集権的な上昇志向でもなく、「外へ、外へ」という反逆クールでもなく、「横へ、横へ」とつながり、外へと開かれたネットワークによって「ゆるゆる」を実現していく。"
    これはすごく今なんとなくだけど実感していて、家族、職場、地域などのいわゆる旧来式の共同体って全く意味がないわけではないけど、それ以外のつながり方もたくさんあって、でもその中にはっきりしたルールがあって守れる人だけが集まっているとか、守れない人は村八分にされる、みたいな境界線が明確なものではなくて、なんとなくつながっている、そんなゆるゆるしたネットワークが複数あるというのが自分にとっても心地いいような気がしている。

    ただ、たぶんまだそれを認めない人だったり、その流れに気がつかない人たちが、もしかしたら今トランプを支持したりEU離脱に賛成したりしているのかな、とも思った。「横へ、横へ」の価値観って、すごく自然な気がする一方で、まだ弱いというか、確かなものになるまではまだまだ時間がかかるような気がした。

  • ・ 野菜は一番おいしくなる俊の時期に、おいしい品種の野菜を選び、それを鮮度のよいうちに料理して食べる。これが野菜の最もおいしい食べ方であり、有機かどうかは重要ではない
    ・ オーガニック栽培に取り組んでいる農家の人たちは「おいしい野菜を作りたい」とこころがけ、消費者の安心や安全を求める願いに応えようとしている方達ばかりだから、結果としてオーガニック野菜はおいしいものが多い
    ・ メインカルチャーがカウンターカルチャーを取り込むことの繰り返しが、実は消費社会の本質ではないか
    ・ 野菜の直送ビジネスは「農家を守ろう」という運動から派生していることが多く、消費者にとっては使いづらい点が生まれやすい
    ・ 家庭で河合がかわされている場合の方が、感想などのメッセージを送り返してくれることが多いんじゃないか→だったら会話が生まれやすいようにすることで、お客さまと自分たちとのつながりをもっと強くできないだろうか
    ・ 美食は非日常のエンタテインメント
    ・ ショッピングは孤独だから、物語が必要→ポストアクションの報酬の定常化
    ・ ソーシャルメディアにより、日常をきちんと構築していた人の方が評価が高くなる
    ・ 目的を持ってではなく、自分の今の感情に触れることをきっかけにして日常を見直すと、暮らしのいろんな断片というのはとても身近なものであるけれども、時には特別な想いにもなるのです。
    ・ これからの食には「物語から始まる会話」「わかりやすくて難しくなく、気持ちいいこと」の二つのパーツが必要
    ・ 自分自身をどこに係留するのかという、その心理的な位置そのものを、異動させていくことが大切。移動するから人とはなれてしまうんじゃなくて、移動できるからこそ、常に人とつながり続けることができる
    ・ 「外へ、外へ」と日常から脱出するのではなく、「上へ、上へ」と頂上を目指すのでもなく、「横へ、横へ(日常の範囲・人間関係を広げて、つなげていくこと)」と歩いていく。この「横へ、横へ」という方向が、日常であることという感覚を生む
    ・ これからの街作りは、おもしろく働ける場所として選ばれることが必要。そこで働きながら、子育ても楽しくできること。外国人観光客が訪問したい街であること。モノじゃなくて、人と出会える街
    ・ パーマカルチャー−様々な要素が互いに助け合うような関係を創り、いちいち細かく手入れしたり動かしたりしなくても、自律的に動いていってくれるような状態を創る
    ・ 「ゆるゆる」は企業が顧客に提供する過剰なサービスなのではなく、企業も人々も同じ対等な立場で相互作用によって連携していく。そういう開かれたネットワーク的な関係を実感し、ともに育てていくことこそが「ゆるゆる」ということ
    ・ 中央集権的な暮らしは、中央が壊れてしまうと暮らしが機能しなくなる。分散された暮らしは、どこが壊れても全体はダウンしない。つねに関係に風穴をあけて、外部とつながっていることで、可用性は高くなり、持続することができる
    ・ 適切な距離感を保ちながら、お互いを自立した人間であると認めることが、「破綻しない結婚生活」を続けていくために必要。相手は自分の所有物ではなく、自分の知らないオープンな人間関係を外に広げている存在なのだと認めるところからスタートする。
    ・ 開かれたネットワークでは、自分だけですべてが完結する必要はない。ひとりぼっちの自給自足的な人生ではなく、常にネットワークに位置づけられ、関係の中で自分の役割を貢献すれば、立派な自立。できないことはほかの人を信じて補完してもらうのも自立
    ・ 「上へ、上へ」という中央集権志向と、「外へ外へ」という反逆クール志向は、一見して真逆の方向に見えながら、実は戦後社会という安定的なシステムに基づいていた表裏一体の存在だったといえるでしょう。
    ・ 世界中の人々に仕事や遊び、人間関係の基盤を提供する<場>は、人々を囲い込み、上から支配するのではなく、下から支え、支配するのです。
    ・ インターフェースは対面型から同方向型(人間の機能拡張)へ
    ・ 自分が欲しいときに、自分の意志と最小の労力で購入する。定期購入は配達にあわせて自分の生活パターンをあわせないといけないので、「機械に操られている」感が出てしまう。
    ・ コンテキストコンピューティング、コグニティブコンピューティング
    ・ 人間が中心で、人間がコントロールしているんだという感覚を持ち続けられることはとても大切です。
    ・ すべてがメディア化していく。あらゆる場所が文化圏となり、互いに共鳴できる人たちがそれらの場所に集まり、共同体的なものを創っていく
    ・ メディアの構図→コンテンツ・コンテナ・コンベア
    新聞の例)コンテンツ=記事、コンテナ=記事を編集して紙面に掲載し、宅配する仕組み、コンベア=販売店
    ・ これからの新しいメディアでは、経路や媒体はもはやなんでもいい。経路が重要なのではなく、人々がつながって共鳴する空間がそこに存在するかどうかが大切
    ①テーマのアテンション ②共鳴を生むファシリテーション ③継続してもらうコミュニティ
    ・ これからのお店は二つの方向へ緩やかに二分していく。①多くの人々の生活を支え、機能消費を提供する大規模なお店 ②文化をつくり、つながり消費を生み出していくお店
    ・ 企業は見えないところで人々を支え、文化空間が維持されるように心を砕いていく、そういう伴走者になっていくのです
    ・ ライブ体験:日常からつながっている、少し非日常の鮮やかな体験をどう生み出していくのか。それを共同体のメディア空間の中で、どう共有し、共感を育てていくのか
    ・ メディア空間は、企業が全体を緻密に設計し、管理し支配するのではない。企業と私たちの相互作用によって、この空間は形成され、運営されていく。健全な日常とそこから少し外れた非日常。そこに生まれる鮮烈なライブ体験と共同体意識。それからすべてをくるみ、企業と人、人と人をつなげていく文化としてのメディア空間
    ・ 昔は、人は農村や終身雇用の会社のような共同体の中で暮らし、共同体に絡めとられ、そこから脱出する自由を求め、だからこそ自分の個性を探し求めていました。しかし、21世紀には人はひとりの個人として生まれ、属している共同体は目の前にはありません。だから自分で帰属する共同体を探し求めなければならなくなったのです。共同体と自由の関係が、昔と今では真逆になったのです

  • そして暮らしと共同体は経済にからめとられる、消費されていく。のような気がする。見えるものがあまり人を幸せにする方向に見えない。共同体は作られるが、そのために経済力を必要とする。

著者プロフィール

ジャーナリスト

「2022年 『楽しい!2拠点生活』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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