畏れ慄いて

  • 作品社
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784878933691

作品紹介・あらすじ

主人公「アメリーくん」は、優秀な語学力をかわれて、日本の大手商事会社「ユミモト商事」に入社。ところが、仕事といえば「お茶くみ」「コピーとり」ばかり。青い目のOLとして絶望の日々をおくっていたが、ある日、その能力をアピールするチャンスが訪れる…。世界が笑い、震撼した、日本のカイシャの生態。

感想・レビュー・書評

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  • フランス人の友達に薦めてもらった本。これは。。。。すごいな。思いっきり主観で書いてくれているところが潔くてカタルシス。
    こういうの普通に起こってるように思うけど、それをおかしいと思わないぐらい適応しているひともたくさんいるんだなと実感。なんでそれでも維持しようとするのか、自分が受けた被害を結局同じように後輩にするようになる。そのおかしさについては非難されずに。日本を脱出したら逃れられるのか?定かではない。

  • フランス語で読みました。

    その時代に生きていないからわからないけど。
    この小説のせいでよく日本ってとんでもない社会ね!みたいなことを言われた。
    文化が大きく違うんだよね。
    まず先輩後輩という文化がない人たちにはとてもじゃないけどわからない世界。
    なんか日本が批判されている気分になってムカついた思い出。

  • ベルギー人女性作家による、日本企業での体験をもとにした半自伝的小説。あるいはシュールレアリスム小説。

    狂気的なまでの階級社会であり、女性差別、外国人差別が未だに大手を振るっている。そんな典型的な"日本的企業"で体験した、驚異の日々。

    あまりにコテコテの日本的企業のただ中に突っ込んだ外国人女性の眼の前で展開する世界は、もはや現実を通り越してシュールレアリスムの世界である。
    日本企業に就職したことのある者なら、必ず笑える。しかし、その笑いは苦い笑いになろう。

    著者自身が言っているように、この小説に書いてある出来事は全てが全て事実ではないだろうが、「カイシャの真実」であることは間違いない。本作に登場する「ユミモト商事」ほど酷くないにせよ、きっと多くの日本のビジネスパーソンが、「ユミモト商事」の姿に自分の勤める会社の影を見ることだろう。

    著者の観察力はかなり鋭い。出てくるエピソードはどれも突拍子もないようで、その実いちいち「カイシャ」のあるいは現代日本社会を端的に表現している。(78ページからの日本人女性の「義務」論はケッサク)
    そして読者である我々は、自分自身がそんな愉快な社会に住んでいることを改めて認識し、笑わずにはいられないのである。

    主人公の言動に、文化的な差異を差し引いても少々おかしい面があるのは否めないが、もっとおかしいのは日本のカイシャである。そして、そんな中で逞しく生きている我々は、世界で最も我慢強いと誇ってもいいだろう。なんちゃって。

  • アメリー・ノートンの本で一番最初に読んだ。
    日本が舞台にされていて、皮肉な内容だけど、全然不快じゃなくて、むしろ笑ってしまった。

  • アメリーくんと同時期にカイシャ員だった私、畏れ慄いて笑いながら読了しました。

  • 日本の会社の縦割り構造の中で、さらに女子社員の置かれている状況を風刺している。パワハラしてくる上司が同性の女であることも納得だ。
    ただ戯画的な面白さだけでなく、トイレ掃除に甘んじつつ禅問答のように人生の考察をするところなど、アメリーノートンさんは只者ではない。

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  • 映画化された作品を鑑賞するもここでは検索にかからず、こうして見つかった原作翻訳本の方に鑑賞録をば。

    Japan SocietyでのTokyo Stories: Japan in the Global Imaginationと題された11本の作品からなるシリーズにおいて「2003年、フランス人監督作品」枠として登場。この原作本があったことは鑑賞後に知ったわけだが、それがベストセラーとなり映画化もされながら、日本では公開に至らず日本語字幕入りのDVDも存在していなさそうという事態に陥ったという背景は鑑賞した者としては「なるほど。」となってしまう。

    自分としては今回のラインナップにも含まれている「House of Bamboo」(1955) あたりを鑑賞しているので、ある程度の免疫はついているのだが、多くの日本人は自国の生活様式や文化を現代の価値観からずれた固定概念で表現され、枠にはめ込まれるとアレルギー反応を起こしてしまうらしいのだ。お気楽に「こういう視点もあっていいね!」とは言えない気質らしいため、結果としては本作が日本国内での公開に至らないといったような事態を招く。一言でいうなら「了見が狭い」。

    そういう自分はどうだったのかというと若干冷めた目で観ていられたわけで、これは多民族都市に長らく暮らしてきたことのよい側の効能のひとつなんじゃないかとのんきに考えたりもする。基本的には日本を長年憧れの対象としてみてきたあるベルギー人女性が、その後日本での滞在時に受けた極私的な屈辱的体験をできるだけ面白おかしく、機知に富んだことばにおいて綴っただけの(ノンフィクションルポでもなんでもない)小説作品なのだから、なにも目くじらたてる必要はまったくなく、フフと苦笑できるところはしながら一緒に楽しんであげれば良い。

    なによりもわりとしっかり目の長さで大島渚作品の名場面に再会せてもらえたのだから、そこは最大の賛辞を送りたい。ただ北野武よりは坂本龍一派だったらしく、そこを表現するために選ばれた辻かおりという女優さんを追っかけていると本業はモデルさんで役者経験なしでぶっつけだったことを語るブログ記事を発見。へぇーな話。著書も存在しているようなので探してみようかなという気にもなったり。

  •  不条理な日本のカイシャのシステムの中に身を投じたアメリー・ノートンの自伝的小説。縦社会で上下関係に厳しくて、上から言われることは不条理でも受け入れなければならないという体質は日本人の私でも好まないけど、社会人になると順応できるようになるのだろうか。またアメリーが勤めた時期は今ほどグローバル化も進んでいないからなのか、西洋人差別も激しいように感じられ、胸が痛む。だけどアメリーの文体やユーモアセンスがただただ悲惨な気持ちだけを残させるのではなく、楽しく読ませてくれた。

  • 神戸生まれでベルギー貴族の女性である著者が、日本の会社でのOL体験をユーモアいっぱいに表現している。なんて、たくましいく奇抜な心を持った女性だろう!目の前に何を突きつけられても、どんないじめにも屈せず、切り替えしてしまう柔軟性に、笑うしかない。強く生きるためのヒントがたくさんある、元気になる本です。

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アメリー・ノートンの作品

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