パンフルートになった木

著者 :
  • 少年写真新聞社
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本棚登録 : 100
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784879817105

作品紹介・あらすじ

「あかるい歌のひびく世界が、ずっとつづきますように」
広島の小学校で子どもたちを見まもってきた木は、楽器に生まれかわって歌いつづけます。そのメッセージは、子どもたちの歌声にのって、時をこえて未来へ―広島出身・在住の作家が、小学校の合唱隊・パンフルート工房・樹木医・被爆体験証言者に取材。木の願いを受け継ぎ、子どもたちが平和のメッセンジャーになった奇跡の実話が、戦後75年の節目に待望の絵本になりました。

感想・レビュー・書評

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  • 「わたしはパンフルート。笛のなかまです。こどもたちと歌うのがだいすきです」

    広島市では、爆心地から概ね2kmで被爆した約160本の木々たちを「被爆樹」として登録しています。
    この絵本は、実際に被爆樹に認定されその後木としての寿命が尽きたあとにパンフルートという、木や竹をつないだ笛に作り変えられた1本の木が語る戦争のお話です。
    柔らかい色彩や口調で語られる、戦争、未来への希望、歌声、そして祈りの絵本です。

    ===
    わたしはカイヅカカイブキの木です。
    小学校が国民学校と呼ばれていたころ、私は校庭で毎日子どもたちを見守り、歌声を聞いていました。
    しかしある頃から町はサイレンが鳴り、校舎には兵隊さんが出入りするようになりました。
    小学校の子どもたちも先生に連れられて田舎に行ってしまって、ピアノも歌も聞こえなくなりました。
    どうして学校の様子は変わっていくのでしょうか。
    ある晴れた夏の日の朝礼の最中でした。飛行機がなにかを落とし、それは凄まじい音を立てました。

    学校は鉄枠だけになり、子どもたちは倒れ、町はぺちゃんこになり、木であるわたしも自分が生きているのか死んでいるのかわからなくなりました。

    ある涼しい夕暮れ。どこからか歌が聞こえてきました。
    田舎から歌を歌いながら戻ってきた先生たちと子どもたち。
    無くなっていたと思った歌は、焼け野原のこの町に戻ってきました。
    テントの学校も始まりました。
    わたしにも小さな葉っぱが出ました。

    その後何年もたち、木としての寿命を終えた私はパンフルートという楽器になりました。
    毎年人々は祈りを捧げます。
    「あの日のようなことが二度と起こりませんように」
    わたしは子どもたちに演奏されながら生きる喜びを歌い続けます。そして祈ります。
    「こどもたちのあかるい歌の響く世界がずっと続きますように」

  • 文も絵もやさしいけれど、戦争の悲しさもきちんと伝わる。

    蔵書にして、毎年子どもたちに紹介したい。

  • かつて学校の校庭だった焼け野原。
    丸焦げになった木は信じられない思いで耳をすませました。
    なつかしいかわいい歌声が涼しい風にのって聞こえてきたのです。

    小さな葉を再び芽吹かせたカイヅカイブキの木は、毎年、八月六日に祈る人々の声を聞いてきました。
    今は、木としての寿命を終え、パンフルートに姿を変えて歌い続けています。


    被爆樹木という言葉を初めて知りました。
    ヒロシマへのしずかなレクイエム絵本です。

  • 小学校の校庭にあった被爆樹木のカイヅカイブキが、楽器のパンフルートとして生まれ変わるおはなし。
    まず被爆樹木という言葉すら初めて知りました。あとがき「広島の木のねがい」によると、「爆発の中心地から約2キロメートル以内の場所で生きのび、ふたたび芽吹いた」樹木をそう呼ぶそうです。広島市内には160本も登録されているとのこと。読んで良かった。

  • 原爆の話と知らずに読み聞かせました。こういった話はちゃんと子供に伝えていきたい。

  • 2021.10.21 5-1

  • 2021.10.21 5-1

  • スコットランドのパンフルートのCDを父にもらったので、パンフルートのことを調べていたら、この本にめぐりあった。
    広島の被曝樹木のお話。
    読んで良かった。

  • 広島の原爆によって倒れた木がパンフルートに、

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著者プロフィール

広島県生まれ。パン屋ではたらきながら創作活動をつづけている。「雪の翼」で第20 回ゆきのまち幻想文学賞長編賞受賞。『逢魔が時のものがたり』(学研)で第42 回児童文芸新人賞受賞。作品に『雪ぼんぼりのかくれ道』「おばけのナンダッケ」シリー
ズ(共に国土社)、「パン屋のイーストン」シリーズ(小社)がある。日本児童文芸家協会会員。

「2018年 『イーストンと音楽会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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