高砂コンビニ奮闘記 -悪衣悪食を恥じず-

著者 :
  • 成甲書房
3.61
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784880862583

感想・レビュー・書評

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  • 4.5。前半は「なにやってんだこの人(笑)相変わらず何か好きだなあ〜」と無邪気に楽しんだが、後半、モンスター相手の話のあたりから最後の一行まで、成り行きやら立ち位置やら環境やら思う事やらがあまりにも“我が身”で……判るっ!すげぇ判るっ(T_T)く…そッ!こんちくしょう!読むべき奴コレ読めよッ!

  • 1985 年に「モーツァルトは子守唄を歌わない」で、
    第 31 回江戸川乱歩賞を東野圭吾と同時受賞した作家、森雅裕。
    「モーツァルトは子守唄を歌わない」ってタイトル、
    記憶にはあるなぁってだけの作家さんだったのだが、
    この人なかなか大変な人生を歩んでおられるようだ。

    東京芸術大学美術学部を授業料免除で卒業後、
    江戸川乱歩賞も受賞し、前途洋々なのかと思いきや、
    生き方の不器用な方らしく、
    出版社、担当編集者とことごとくぶつかり、
    すっかり業界から干されてしまい、
    約 10 年ぶりに商業出版されたのが本作品。

    ホームレス同然で食うに困り、
    辿り着いたコンビニ店員のアルバイト。
    一般人にはわからないコンビニ店舗内幕物として興味深く読めた。
    客層の悪い荒れたコンビニ、読み手の気持ちもささくれ立ってくるのだが…。
    とにかくコンビニって、こんなにやることが多岐にわたり忙しいのかとも。

    最終章での現在の心情の吐露には心が打たれる。
    本作品が少しでも売れるとよいなと思う。

  • ほとんど本が出せない状況にありながらも、昔と変わりない文体を保っていることに、驚きと喜びを感じる。

    冒頭の、某編集者に関するくだりや、最終章の恨み節には、あの“名著”『推理小説常習犯』を彷彿とさせるものがあり、森さんの窮状をとても心配しつつもついニヤリとしてしまう。

    しかし、やはりこの人には小説を書いてもらいたいし、こうやって本を出すことができた以上、その期待は高まるばかりなのだ。そしてきっと、森さんは小説にするネタをたくさん持っているはずなのだ。

    ぜひぜひ、なんとかしてそれを世に出していただきたいものである。

  • (p.250)(中高年のリストラ・就職難が問題になる、歴史的不況の)ご時世なのに、仕事のない私を「遊んでいる」「甘えている」と罵倒する輩は多かった。そいつらは親の金で大学を出て、そのまま仕事に就いて、現在に至っている世間知らずのボンボンであり、私を甘えさせてくれるどころか、他人のためには何一つしない連中だった。
    「仕事を選り好みするな。肉体労働でもなんでもいいだろ」
     ともよく聞かされた決まり文句だが、こんないい方は求職者にも肉体労働そのものにも失礼である。人間、誰だって、それまでキャリアを積み上げてきた仕事に執着があり、それを捨てて、まったく別の職種への転向など、簡単に割り切れるものではない。人生を否定されるのと同じなのだ。(p.250)

    まことに同感。「雇用の流動化で労働需要が増える」「選択の自由が増える」などと巷間、呑気に語られるがもう全部誤り。人間が単なる労働力の人格化でしかない世界なら、つまり使用者にとってコマのような存在なら「自由に選択できる労働者」も構想できるだろうが、現実にはそんな抽象的人間は存在しない。私たちは感情と生活と人格と歴史のある、具体的な人間なのだ。昨今の「派遣切り」でも同様で、ニンゲンは部品扱い。必要なときだけ働かせて、要らなくなったらクビ。仕事からの自由、収入からの自由、生きることからの自由…素晴らしい「自由」だ。

  • 最も好きな作家さんの1人、森さんの「約10年ぶり」の新作
    …だけど、小説にあらず
    内容が内容だけに、読むのが少し怖かったけど、予想よりはソフトで一安心
    是非是非新作の「小説」が読みたいんだけど、本作中で小説用の資料も廃棄しちゃったってことだったし、もう読めないのかなぁ
    だとしたら悲しいなぁ

  • 不正はまったく許さないし、もちろん自分はやってない的なことが繰り返し書かれていて、かなり潔癖な感じの人なんだろうなあという気がした。編集者とのトラブルも、その辺に原因があるんじゃないかな。
    コンビニの仕事内容を細かく書いてある部分より、一番最後のほう、仕事探しをしているときのまわりに対する思いを記述した部分のほうが興味深かった。

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