アップル、グーグル、マイクロソフト-仁義なきIT興亡史-

  • 成甲書房
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784880862941

感想・レビュー・書評

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  • 21世紀の新『三国志』。HDのない時代からパソコンを弄っていたので少なくともメカ音痴ではない筈だが異国にての清貧な生活を心がけているうちにスマフォやクラウドの世界に完全に乗り遅れてしまった。タブレットを購入したのを機に失われた6年を取り返すべく本書を手に取る。絶対専制君主だったマイクロソフトが復活したアップル、新興のグーグルに追いつけずもがき苦しむ姿が克明に描かれている。三者三様の利益構造の違いが興味を引く。連戦連敗なのに確固たる利益源を確保しているマイクロソフトも凄いがもはや夢を紡ぐ企業とは言えまい。泣

  • 面白かったのは話の根底が技術ベースで記載されているところです。普通であれば、こういった書籍だと、各会社の歴史を時系列におりまぜながら進めていくと思うのですが、この本は「検索技術」であったり、「クラウド」であったり「タブレット」であったり。その時々の技術に対してどう取り組んだかを俯瞰的にみることができるので面白かったです。
    技術そのものの取り上げ方は時系列ではあるのですが、時間軸で見ずに技術を軸に見るというのがとても頭に入りやすいというか、技術者にとっては読みやすい本だったと思います。

  • グーグル創業あたりの年から2012年くらいまでのグーグル,アップル,マイクロソフトの盛衰と取り巻く環境の移り変わりが描かれている。
    今当たり前のように使われている製品の生まれた舞台裏などを小説で読むのか好きなので、これも非常に面白く読めた。
    当たり前のことだが、登場人物名がカタカナなのでこれ誰だっけとなることが多かった。

  • 2017年7月7日読了。主に2000年以降の検索、携帯電話、音楽ビジネスなどにおける、タイトルの3社とそれ以外のIT企業の興亡をつづった本。というか「いかにマイクロソフトが落ちぶれたか」という方が本書の内容に近いか…?勝てるチャンスはいくらもあったのに、検索ビジネスはグーグル、携帯電話市場はアップルとグーグル、音楽ビジネス(Zune!)もアップルに支配され、とMSは全くいいところがない。「会社潰れててもおかしくないんじゃない?」という印象も受けるがMSが依然大会社であり続けているのは、Windowsの存在と法人向けビジネスが好調だったおかげであり、バルマーさんが何もしていなかったわけじゃないよ、ただ個人向け製品の流れを読み切ることはできなかったんだよ、ということかな。同様の目標を掲げて消えていった会社もたくさんあることだろうし、結果から「あのときこうしておけば」を問うても意味のないことだが、それでも歴史の転換点というのは多くあり、学ばされることは多い…。

  • 正確には読み終わっていない。
    途中で飽きてしまった。
    ギーグじゃない一般人が、なんとなくIT業界の変遷について知ろうと思って読むと、ちょっと読みづらい感じを受けた。
    同時並行的に読んでいたアイザックソンの「スティーブ・ジョブズ」と比べると段違いに読みづらい。がしかし、スティーブ・ジョブズを読んでから読むと読みやすくなっているかもしれないなと思った。
    IT業界、というか、ITを中心としてかなり幅広い分野での巨大企業3者のさまざまな勝負を描いているので、むしろ3者それぞれの生い立ち的な本をさらっと読んでからこれを読むと面白いかもしれない。
    英語の本を邦訳したものの読みづらさは2点、もともとが英語なので日本語文にしてもなんとなくスムーズに読めない。それと、カタカナネームが覚えづらく「これだれだっけ?」となり易い。

  • * 読みやすくて面白かった。
    * スマートフォンに関する歴史について振り返ることが出来た。
    * MS は社内政治と Windows + Office というビジネスモデルによって身動きがとれていない状況なのがよく分かる。
    * Google が Android を開発した理由がよく分かっていなかったが、理解できてよかった。
    * 販売台数だけで勝者が一社と考えるのではなく、各社が自社のビジネスモデルに沿って利益を上げられているので敗者とはいえないという最後のまとめはよかった。
    ** なんでも勝ち負けのように単純化して二値で考えるのはよくなくて、現実にその中間があるということを最確認できた。

  • 翻訳が中途半端

    NotesとReferences and further readingが欠落している。

    2013/03/23図書館から借用;2013/03/31から読み始め;04/06読み終わり

  • ノンフィクションやルポを読みたいならビジネス書から引っ張ってくるのが有用と思い読んでみた。

    3社というか、アップルが伸し上がった歴史をマイクロソフト、グーグルと絡めて書かれている本。まぁここ最近まで含めて語るならそうならざるを得ない気がするけれども。
    でも多分一番多く書かれているのはマイクロソフトで、マイクロソフトがボコボコにされる変遷を語った本といってもいいかもしれない。

    自分は八方美人な方なので、アップルみたいな方針は苦手だったりする。マイクロソフトもこの先もうちょっと頑張ってくれないかなぁ。

    10年後にまたこの人が書いてくれたら面白そうなんだが、どうだろう。

  • p15
    ゲイツはいずれも否定した。「私が恐れているのは、ガレージでまったく新しい何かを生み出しそうとしている起業家だ」
    オーレッタが残した「ゲイツはただ、世の常として、既存企業の敵が"革新"であることを知っていた」という当時の取材メモからわかるように、ゲイツは明らかにこのとき、場所も内容も名前もまだ知らない誰かを見据えていたのだ。

    p16
    1998年の時点でマイクロソフトが目の敵にしていたのは、もう一つの新興企業、ネットスケープだった。ネットスケープは大胆にも、「将来的にはブラウザがあればどこでも仕事ができるようになり、Windowsそのものが不要になる日が来る」と謳っていた。現段階ではパソコンがなければできない仕事もあるが、ブラウザを実行できるコンピューターさえあれば、いずれは何でも可能になるだろう、と。」

    p18
    1995年の『ワイヤード』誌によるインタビューで、ジョブズは次のように語っている。「デザインというのは不思議な言葉だ。デザインで大切なのは見栄えだと考えている人々もいる。だが当然ながら、もっと深く掘り下げれば、重要なのはいかに使いやすいかということだ。優れたデザインをするには、それを"理解"する必要がある。何が重要なのか深くつかまなければならない。本当の意味で何かを完全に理解するには、熱意をもって真剣に取り組むことが必要だ。慌てて飲み込むだけではだめで、よく咀嚼しないといけない」

    p21
    ジョブズは製品ラインを2列2段の表に分類した。分類基準は消費者向けか企業向けか、ポータブルかデスクトップかだ。アップル経営陣はそれぞれのカテゴリで真に優れた製品を生み出すことに注力することにした。それぞれのアップグレードサイクル、ユーザー基盤や愛用者、不具合が異なるため、ムダに手を広げることはしない。「優れた製品が4種類あれば、それで十分だ」というのがジョブズの持論だった(ジョブズが1998年5月に作ったこの表には、その後もほとんど変更が加えられていない)。

    p28
    スティーブ・ジョブズはもちろん、そのことを承知していた。アップルの元従業員によると、ティム・クックは会議の場で、「この争いに敗れても、次の戦場で勝てばいいさ」と豪語していたという。ジョブズは新しい戦場、これまでとは違う条件で再びゲイツに挑む場を求めていた。

    p41
    「話し合うべきことはまず、この会社の倫理観だ。他社に勤務している弟から、『兄さんはマイクロソフトで何をしているんだ』と責められ続けるなら、もうこんな会社にはいられない」

    p42
    「Windows98へのアップグレード料金は49ドルが投資収益として合理的だが、料金を89ドルに設定すれば収益が最大化され、潜在的購買者もかろうじて購入をあきらめない限界である"需要曲線のスイートスポット"を衝くことができる」

    p48
    マイクロソフトに挑んだ最初の企業は、小規模ながら早くもインターネットユーザーの話題にのぼっていたある新興企業だった。第二のマイクロソフトにはならないことを肝に銘じていたこの企業は、心構えとして"邪悪になるな"という社是を掲げていた。

    p66
    アップルとは製品デザインの先見性において、マイクロソフトとは市場主導型アプローチにおいて対照的だったグーグルの考え方を示すものとして、"40通りの青"の話がよく知られている。

    p67
    メイヤーはさらに考え直し、科学的に決定すべきだと結論付けた。そこで、デザイナーが推す青とプロダクトマネージャーが認める青の間で、40通りの青を段階的に生成した。その後、さらに広範なA/Bテストで、Google Mailにアクセスしたユーザーを2.5%ずつ40区分し、アクセス日時によって表示される色を変えて、ユーザーのクリック動作を追跡した。調査は統計的に緻密で、経験主義に則っていた。


    「きちんとした勉強をしたデザイナーを7年も雇わずにいたなんて、この会社はどうかしている」

    p72
    「ずば抜けて高い知性を持ちながら、あまりに重いプレッシャーを抱える自分を成功者だと考えられない。そのような繊細な人材を採用するのがグーグルの流儀だ」。エンジニアはほぼ昼夜を分かたずに働き、なおも満足していなかった。

    p80
    「そもそも、ブリンとペイジには、"悪の帝国"を恐れながら育ったシリコンバレーの心性が染み込んでいた。検索ビジネスの大きな将来性をマイクロソフトが嗅ぎつけたら、市場に踏み込まれ、ネットスケープのように叩き潰されるのではないかという不安を抱いていたのだ」

    p81
    エドワーズは以前、マーケティング資料の中でグーグルを"IT企業"と思わせるような書き方をしないようにペイジから注意されたことがある。マイクロソフトに目をつけられて、単なる検索を超える野望を抱いていると思われるのを懸念したからだ。実際、グーグルが目指すものはそこにあったのだが、今更それを公言する飛鳥はなかった。マイクロソフトの視界にできるだけ入らないようにすることは、グーグルの戦略の中で重要な意味を持っていた。


    p88
    スポルスキーはゲイツとスティーブ・バルマーとを比較している。ゲイツは技術を細部まで深く理解している。バルマーはハーバード大学で経済学と数学を学び、30番目の従業員としてマイクロソフトに入社して、当時はゲイツの右腕として働いていた。「バルマーなら、そもそもあのような質問をしようとも考えないだろう」とスボルスキーは言う。「マイクロソフトの現経営陣を悪く言うつもりはない。しかし、会議であの質問を耳にしても、バルマーが理解できるとは思えない。残念だが、マイクロソフトがこの10年間でどう変わってしまったのかがこの逸話でわかると思う」
    スポルスキーのバルマーの評価はこうだ。
    「会社経営の能力はある。事業運営を継続する手腕は、さすが経営学を学んだだけのことはある。しかし、次の革新まで見通すことは不可能だろう。頭で考えてわかるようなことではないからだ。頭脳が役に立たないのなら、問題は、現場からのアイデアを受け入れる組織を作る気があるか、その能力があるのか、ということだ。マイクロソフトがそういう組織だと思わないし、そんな組織がマイクロソフトほどの規模で存在するのかどうか、私にはわからない」

    p95
    「マイクロソフトは"負け犬"の立場を楽しめる会社だ。逆境はマイクロソフトの文化に活力を与える。何かを相手に奮闘して、そして立ち上がることが最大の喜びとなり、原動力になるのだ。私はそういう場面を何度も目撃してきた。マイクロソフトという企業は市場トップの座にいるときにはたいした力は発揮しない。そのうちシェアが奪われ始める。ネットスケープを打ち負かした後に低迷したIEのときもそうだった。しかし、敗者になるとすぐさま闘志に火がついて、シャアの奪還と市場の拡大に躍起になる。だから、負け犬であることをマイクロソフトが問題視しているとは思わない。むしろ楽しんでいると思う」

    p112
    「グーグルではエンジニアが製品開発を主導する。マイクロソフトでは付きものだったスペック(仕様)やピクセルの配置に関する上司からの指示はほとんどない。グーグルではプロダクトマネージャーがAOLとの会議などをこなしていた。機能設計を検討していて画面が話題になると、UI(ユーザーインターフェース)設計者を呼んで意見を聞いた。だが、通常は自分たちで決定すること、個人ではなくチームとしての意思決定が求められていた。我々はエンジニアとして会議を開き、チームとして話し合って意思決定を下した」
    エリック・シュミットは2005年、「マイクロソフトのような厳密な部門構造はグーグルではうまく機能しない」と指摘した。「組織がフラットであることは、上下の階層から解放されるだけではない。それは情報フローに必要な要素だ」


    p113
    「マイクロソフトの製品はWindowsとOfficeだけだった。他の分野にも手を出していたもののシェアは小さく、基本的にはその二つしかなかったと言っていい。つまり、マイクロソフトの強みはデスクトップソフトウェアだけなのだ」


    p116
    「そういう意味では、今まで競合してきた企業の中では、グーグルはマイクロソフトに一番似ている」
    ゲイツが立ち向かおうとしていたグーグルとの戦いは、社内の他の事業部門からは見向きもされなくなっていた。きちんと数字を追い求めて収益を上げている部門は、他の部門には無関心だったのだ。ラークマンは次のように説明する。「マイクロソフトはひどく分裂していた。Windows部門の人間にとっては、Xboxやその他の製品がどうなろうと知ったことではない。ほとんど別会社で、住む世界が違うようなものだった。この感覚は部門のトップからチームメンバーまでの全員に共通していた」

    p119
    「(検索エンジンでどんな機能を提供するかについての)多くの意思決定は技術中心であり、消費者中心ではなかった。だが、必ずしも最高の技術が勝利するとは限らない。ユーザーに最高の体験を提供することが最も重要なのだ」

    p122
    ザッカーバーグがグーグルを見る目は、グーグルがマイクロソフトを見る目に通じるものがあった。ザッカーバーグの目には、グーグルは業界全体を支配する巨大企業として映っていたのだ。

    p126
    グーグルは企業イメージを懸命になって構築してきた。正式書類で使用する書体、ユーザーが抱くイメージの管理、好感を得られる言葉遣い(必要な場合は中立を心がけ、余裕がある場合はユーモアたっぷりに)。
    2009年3月、メイヤーは『ニューヨーク・タイムズ』紙に対し、超フラットな組織であることの問題点として、「同じアドバイスを何回もしなければならい」ことを挙げた。"当社"ではなく常に"グーグル"と書くこと、斜体の書体は画面で読みにくいので使わないこと、"私""私たち""あなた"は使わないこと、色、イメージ、フォントを混用せずシンプルなデザインにすることといったガイドラインは、もちろんすべてのユーザーの評価を測定する"社内実験"に基づいていた。

    p133
    「アップルとマイクロソフトを比べてみると、アップルは規制や法律の問題で他社と争うことがほとんどない。ゼロとは言わないが、非常に少ない。『大変かもしれないけど、より優れた製品を作ろう』というのがアップルの哲学だろう。マイクロソフトは、これまで築き上げた地位を守るためならどんな手段でも取る会社だ。マイクロソフトは、クールな新製品を作り出したり契約を勝ち取ったりするよりも、ワシントンDCやブリュッセル、裁判所でグーグルやアップルと戦うほうがずっと得意なのだ」

    p144
    マイクロソフト、アップル、グーグルの3社すべてに在籍した経験を持つゲイル・ラークマンは、アップルが最もトップダウン型の組織だと言う。コードを作成する開発者が最も大きな影響力を持つような状況であってもだ。「開発者はマネージャーとともにソフトウェアの開発方針を決めるが、ユーザーインターフェース設計者と同じくらい、スティーブ・ジョブズからも多大な影響を受けていた」とラークマンは説明する。

    p147
    MP3プレーヤー市場の潜在的ライバルの動向を探ってみたところ、ジョブズが最も崇拝し、また畏怖してもいた企業にはまだ参入する気配がなかった。ウォークマンで携帯型プレーヤーを大ヒットさせたソニーである。


    p150
    「アップルの設計者は、アイデアを生み出し、図面を描き、模型を作成し、それについて話し合うという従来の工業デザイン作業に全労働時間の10%を費やしていた」と、同社デザイングループの元責任者ロバート・バーナーは言う。「残り90%は製造部門との共同作業で、アイデアをいかに実現するかを模索していた」

    p159
    「マイクロソフトが消費者に向き合わなくなって久しい」と指摘した。米国任天堂の社長を退任したばかりの荒川實は、消費者分野でのマイクロソフトを「大金を投じているが、素人同然だ」と評した。

    p186
    「複雑な技術をシンプルにすることにかけては、世界中を見ても我々を超える者はいない。アップルの最大の強みはそこにあるし、今の時代ほどこの強みが価値を持つことはないね」

    p226
    「アップルが世界の企業より優れているのは、複雑な技術をわかりやすく、エンドユーザーにとって使いやすくするという独自の能力です。我々はコンピューター分野だけでなく、音楽プレーヤー、音楽エコシステムでこの能力を発揮しました」
                
    「技術の進化と複雑化に伴い、このニーズはこれまでにないほど高まっています。複雑な技術をシンプルにするエンジニアリング能力を持つ企業が、かつてないほど必要とされているのです。アップルを超える企業は世界のどこにもありません。その需要はますます拡大しています」

    p231
    ラリー・ペイジはメディア対応に時間を割くのを嫌ったので、グーグルの広報部は自社や検索に関して不穏なニュースを見つけるとすかさず報道機関に"連絡"する。このような連絡は"裏"でも行われた。直接表には出ずに自社の言いたいことを相手に分からせる、秘密の情報操作だった。
    だが、アップルがとったメディア対策は違った。ジョブズの考えたかもある程度繁栄していたのだろう。"アップル製品はすべてが優秀で、新製品はその最たるもの"という強気の姿勢を貫いていた。不快な質問ははぐらかすか、「ノーコメント」として答えなかった。


    p235
    マイクロソフトの実権を握る勢力は、"全面戦争"への突入を支持した。まるでマイクロソフトの社内の文化的遺伝子が一斉同時に動き出したかのように、検索分野での活動も同時に再開した。音楽プレーヤー市場ではアップルに、検索市場ではグーグルに全面戦争を仕掛けたのだ。
    「過去の栄光にとらわれた典型的な例だ。『我々はロータス、ワードパーフェクト、ノベルとの全面戦争に勝ったではないか。今回もまた同じ作戦でいこうじゃないか』というわけだ」と、ヌックは首を振った。「ところが、アップルにはそれは通用しなかった」

    p281
    「アップルは我々に向かって中指を突き立て、『君たちが遠い未来のことだと思っていることを今日やって見せる』と豪語してみせたのだ」

    p302
    「私がなぜWindows Mobile搭載の携帯電話を手に入れられなかったって?通信事業者(米国で二番手のベライゾン)の店舗行って『Windows Mobileがほしいんです』と言うと、『やめた方がいいですよ。不良動作が多くて返品が相次いでいますし、使いにくいですから。役に立ちませんよ』と止められたからよ」

    p317
    HTML5の動画で最も一般的となった動画コーデック(圧縮および圧縮解除のためのソフトウェア)であるH.264は特許技術で、特許を持っている複数の企業からライセンスを得る必要があった。アップルはその1社に名を連ねていたが、グーグルは部外者だったのだ。

    p355
    先に3Gデータが普及していた日本だけは別で、スマートフォンは約10%と普及が遅れていた。日本の既存機種には、アプリのダウンロードを除いて、西欧諸国で使われているスマートフォン機能がすべて搭載されていたからだ。日本はスマートフォンの恩恵に取り残される形となっていた。デデューは、市場のユーザーの半分がスマートフォンに切り替える日が"転換点"になると予想する。「そのとき、"スマートフォン"という言葉は姿を消すだろう」


    p378
    Windows部門のあるグループがHPとデルを含む大手パソコンメーカーにプレゼンテーションを行っていた。自らをアップルと比較したあるスライドでは"アップルの戦略:好循環"というタイトルで、次の点が挙げられていた。
    ・アップルの特長は高品質とシンプルさ(すぐに使える)
    ・製品のユーザー体験は勝ちを実感できるように工夫されている
    ・価値を実感することは満足につながり、さらにブランドに対する忠誠心を呼び起こす
    ・これが財布の紐を緩めさせる秘密

    p388
    ARMの共同創業者ハーマン・ハウザーは、インテルのマイクロプロセッサー事業は"終わり"だと言った。「コンピューターの歴史を見ると、まずIBMがメインフレームを支配した時代があり、次にDECがミニコンピューターを支配する時代がきた。その後、サンとアポロがワークステーションを支配する時代を経て、パソコンの時代がやってきた。そして今、少なくとも端末側では、モバイルアーキテクチャーがオモンコンピューティングプラットフォームになろうとしている」とハウザーは語る。「コンピューターの歴史の中で、一つの時代を支配した企業が次の時代も支配した例はない。また、新しい時代の到来によって前の時代が終わらなかったこともない。前の時代の痕跡は完全に消え去るのだ」
    最後にハウザーはこう言葉を結んだ。「そして、パソコンの市場を支配していたのがインテルとマイクロソフトだ」


    p396
    最大の懸念は、巨大化したグーグルの動きが鈍ることだ。「大企業の最大の敵はその規模だ」とペイジは9月に語っている。「基本的に、意思決定が優れていても遅ければ企業は立ち行かない。迅速かつ優れた意思決定を下す企業だけが生き残る」

    p403
    スティーブ・ジョブズは常に勝利を確信していた。ジョブズにとって必要なのは、適切な戦いの場を見つけることだけだったのだ。

    ==アマゾンの内容紹介==
    ―IT業界史上最も苛烈な争い―

    津田大介氏推薦!
    1998年に開戦し、一進一退の攻防を繰り広げてきた「IT業界三国志」は2007年1月、iphoneの登場によって終わりを告げた。
    本書はIT業界史上最も苛烈な争いを克明に記した貴重な「歴史書」であり、究極の「ビジネス書」だ。―津田大介

    「この争いに敗れても、次の戦場で勝てばいいさ」
    ティム・クック(アップルCEO)

    アップル、グーグル、マイクロソフト、企業としての魂が根本的に異なるこの3社はデジタル世界の変化の激流の中で、検索エンジン、モバイル音楽、タブレット端末、スマートフォンの領域を支配しようと、長くて厳しい戦い、まさに仁義なきデジタル戦争に明け暮れてきた。武器はそれぞれ、ハードウェア、ソフトウェア、広告戦略だった。勝ち取るべきものは名声であり、同時に私たちの未来でもあった。1990年代後半からスティーブ・ジョブズの死まで、その興亡史を本書は振り返る。3社の企業文化の違いを鋭く分析することで、各分野での勝者が誰なのかが明らかになる。勝者が得るものは、膨大な富だけではない。デジタル世界を支配し、人類の明日を形づくるパワーだ。

    ==目次==
    第1章:1998年の開戦
    第2章:マイクロソフトと独占禁止法訴訟
    第3章:検索エンジン―グーグル対マイクロソフト
    第4章:デジタル音楽:―アップル対マイクロソフト
    第5章:スマートフォン戦争
    第6章:タブレットの勝者
    終章:未来の戦場

  • IT業界の三大企業の仁義なき戦いを、比較的公平な視点で描かれている。マイクロソフトには手厳しい感じがするが、それは筆者の責任ではない。
    検索、音楽、スマートフォン、タブレットの世界で、それぞれの企業がどんな戦略で挑みどんな結果となったか。この3社だけでなく、周辺の企業の動きなどもわかって面白い。
    今まで散々これら企業に関する本を読んできているので、それぞれがどんなポリシーを持ってどんな戦略をとってきたかはわかっているつもりではあったが、こうして対立図式として描かれたものを読むとまた違った感慨がある。それに本書は関係者の生の声をかなり深く抉ってきていて、リアルだ。
    しかし、この世界は本当に栄枯盛衰。奢れるマイクロソフトも久しからずだが、アップルだってグーグルだって例外ではないだろう。

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