なぜ「戦略」で差がつくのか。―戦略思考でマーケティングは強くなる―
- 宣伝会議 (2017年3月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784883353989
感想・レビュー・書評
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…「なぜ戦略が必要なのか?」に対する答えは、「達成すべき目的があり、かつ資源が有限であるから」である。…
戦略は有限の資源をもって目的を達成するときに必要である。ということは、戦略を定義付ければ、「目的達成のために資源をどう利用するかの指針」となる。
▪️戦略があるとなにがいいのか
①効率的に資源を運用することで、効果的に目的を達成することができる
②経験値を獲得できる
③意思決定に役立つ
④計画に一貫性と安定性が出る
▪️SMACとSMART
Specific【具体的】
Measurable 【測定可能】(Methodological 【方法論の明示】)
Achievable【達成可能】(Agreed 【合意された】)
Consistent【一貫性がある】
Specific【具体的】
Measurable 【測定可能】 (Methodological【方法論の明示】)
Achievable【達成可能】 (Agreed 【合意された】)
Relevant【関連性がある】
Time-bound【期限設定】
▪️思考のスイッチを入れるふたつの質問
「なにが問題か?」
「ある場合とない場合」
◇目的は再解釈可能、目標は再解釈不可能
前述したように、「目的」の再解釈は戦略を考える上でもっとも創造的な側面のひとつである。不可能と思われた問題を乗り越えたり、いままでにないような実績を実現したりするにあたっては、いかに目的を解釈し直すかという課題がほぼ半分を占めるといってもいい。
であるときに、解釈の余地を持たない「目標」が構成要素となってしまっては戦略から創造性の半分を奪ってしまうことになりかねない。戦略は単なる手続きと優先順位の規定ではなく、創造的問題解決の道具であるべきだ。「目的」を再解釈した結果、具体的に数値化され解釈の余地なく表現された「目標」となっていることは素晴らしいことである。
優れた戦略の半分が完成したと考えていい。言い換えれば、「目的」は効果的な再解釈をもたらし、結果的に解釈の余地がない「目標」となるのである。
新商品普及のために必要な要素
「相対的優位性」とはそのイノベーションが既存のものよりもよいものであると知覚され る度合いである。より高性能だと認識されるほど、イノベーションが採用される可能性は高まる。
「両立可能性」とはイノベーションが既存の価値観、過去の体験や、既存の生活習慣と相 反しないと知覚される度合いである。既存の習慣と一貫性があることは、新しいイノベーションを日々の生活の中に持ち込みやすい。
「複雑性」とはイノベーションを理解したり使用したりするのに、相対的に困難であると知覚される度合いのことである。簡単に説明ができるものでないと、イノベーションが採用されるのには時間がかかる。
「試行可能性」とは小規模にせよイノベーションを体験できる度合いのことである。新商 品のサンプルを配布したり、新しいソフトウェアを一定期間無料で提供したりすることはこの要素を利用している。
最後が「観察可能性」である。イノベーションの結果が他の人たちの目に触れる度合いと定義付けられている。イノベーションを使った結果だけでなく、イノベーションを使っ ている様子が目に触れる度合いも含むと考えると理解はしやすい。どう便利なのか明言で きなくても、すでにみんなが持っている、という印象を与えることもイノベーションの採用可能性を高めることが多そうだ。
ただ、全員が同じことを考えるというよりも、同じことしか考えられなくなると、組織全体が外的環境の変化の前で破綻するのは時間の問題だ。それでは、仮想空間上の実験結果と同じことが起きてしまうかもしれない。
標準化は必ずしも悪いことではない。全員が一定の能力を持つことは互換性につながり、むしろ組織の柔軟性を生むことになる。複数の仕事を担当することができるプレイヤーは、采配を振る側から見れば便利な存在である。いま自分の組織内に起きていることは、資源の標準化なのか、単なる均質化なのか、改めて見直してみる価値はある。
社内、組織内に起きる不測の事態への対応はもちろん重要な懸案事項であるけれど、それが社外、組織外で起きる不測の事態への対応を阻害してしまってはあまり意味がない。
▪️戦略を持つことでなにが変わるのか
意義①成功確率が上がる
意義②目的のよりよい達成が可能になる
意義③いい失敗で経験値を獲得しやすくなる
意義④再現性の確保
意義⑤有意識の力
意義⑥パニックを防ぐー一貫性を担保する
意義⑦自損事故を防ぐ
意義⑧意思決定を助ける
意義⑨目的を共有する
意義⑩摩擦を下げる
意義11権限委譲を助ける
◇戦略への納得感が大きな成果につながる
戦略を関係者全員と共有する際には、内容の理解だけでなく、共有感の醸成も重要な課 題となる。戦略の策定プロセスは必ずしも民主的である必要はない。責任を任された少数の担当者が戦略を組み上げることは効率的だろう。ただし、戦略を共有する際には、戦略立案の 担当者たちには全面的な説明責任が要求されてしかるべきである。
階層構造を持った組織においては、示された戦略を支持し実行する責任がそれぞれのメ ンバーに発生するはずである。同時に、各メンバーが全身全霊で支持する戦略の実行と、 組織構造上、上司にいわれたので仕方なく従う戦略の実行とではその成果について大きな差が出てくることは想像に難くない。
戦略を最大効率で運用するためには、重要な資源である各メンバーの全面的かつ積極的 な賛同と支持は不可欠である。戦略への納得感は各員の士気の向上につながり、ゆくゆくは実質的な資源の拡大に帰結する。逆に、納得感が低ければ、士気の喪失につながることもある。
◆展開と運用は民主的に
納得感の高い、理想的な状態を確立するために気をつけるべきことが2点ある。
まずは理解と解釈の統一である。組織の成員は、戦略策定者の意図を明確に汲んだ理解をしていなくてはならない。市場シェア100%といったときの市場の定義、計算方法、9・3%はほぼ10%と見なすのか否か、などは単なる誤差を超えて摩擦の原因となりうる。このように、数値化した目的を持っている場合でさえも、明確にすべき要素は残っているものである。
理解と解釈の統一のためには、広く双方向性の対話の機会を持つことですり合わせしやすくなる。各メンバーが帰属意識を持つ最小規模の組織単位にまで権限委譲することで対話の効率を上げられる。
ふたつ目に、フィードバック・ループの設定である。この対話のプロセスの中で出てくる質問や確認事項に戦略策定者は答えなくてはならない。うまく答えられない質問がある場合には、その質問は戦略を改善する示唆を含んでいるかもしれない。
戦略を組織に説明するときに、うまく答えられない質問が出てきた場合には、戦略を修正して2度目の説明を行うことを恐れるべきではない。修正を必要とする戦略を組み上げたのは無能ではなく、情報の不足が理由であることが多い。具体的な戦略を示すことで、本来、戦略を組み上げる前に知っておくべきだった情報がはじめて出てくるということもある。
これは、戦略策定者が必ずしも組織内のすべての状況と知識について通暁しているわけではないことに起因する。
情報の不足は戦略策定者の責任であるとか、彼らの怠慢であると認識される文化をつくるべきではない。さもないと、戦略策定者は、現場や実行を担うチームからのフィードバックを無視して最初の戦略案を強引に推し進めるようになりかねない。残念ながら、正確な現状理解に基づかない目的設定や資源解釈から生まれた戦略は、実行においてうまく機能しない。当然、期待される結果を出すことはない。
現実的には、きわめて限定的な時間的猶予のために、2回目、3回目の戦略説明機会が間的猶予のために、用意されることは少ない。戦略的な失策が続く傾向のある組織では、この点を再検証する価値があるかもしれない。また、戦略を修正するにしても全面的なものになることは多くないだろう。方針の大枠は残しつつ、新しい情報に基づいて関連する部分を後日修正すればいい。ある程度の現物合わせは実践的な展開では必要となる。
効果と効率を考えると、戦略策定は限定的なチームですべきである。しかしながら、その展開と運用は透明性を持ち、民主的でありたい。
▪️まとめ
●戦略とは、「目的」達成のための「資源」利用の指針、である。この指針に基づいて、具体的な実行計画が立案される。いい戦略は、達成すべき「目的」が解釈の余地なく明確に規定され、有限の「資源」の最適な使い方を示す方針として機能する。つまり、やるべきことや、やるべきでないことを明示する。
●正しい戦略は目的の達成確率を上げる。なぜなら、目的の達成に対する資源の投下効率が上がるからである。うまくいかなかったとしても、正しい戦略は資源を温存した、いい失敗に導いてくれるだろう。戦略が明確であると、経験が学習につながるので次回の達成確率は上がっていく。
●戦略によって差が出るのは、大きく3つのポイントが考えられる。①目的の解釈の仕方。②資源の解釈の仕方。そして、③相対的に資源の数的有利をもたらす分母の区切り方である。いずれにしても、どのような視点で観察できるか、解釈できるかが決定的に重要である。より戦略的に、あるいは戦略において効果的になるためには、視点を増やす努力をするといい。
●判断に迷ったら戦略に立ち返ることで、目的達成のために行くべき道が見えてくる。正しい判断とは、目的の達成のために有限の資源を最適に投下することを意味する。不測の事態に出会ったら、その不測の事態が「目的」と「資源」に与える影響を洗い出すこと。いたずらに戦略を変える必要がないことも多い。
●戦略的であるためには、常に目的を意識し続けることである。なぜこれをしているのか。なにを達成したいのか。次いで、資源を意識する。使えるものはなにで、どういう状況で効用が最大化されるのか、理解する。
●つまるところ、戦略を組み上げる上でも、戦略的になるためにも、覚えておくことは2点に突き詰められる。「目的」と「資源」である。戦略に絡むあらゆる問題と考察はすべてこの2点に集約されていくか、この2点に端を発している。困ったときには、目的に立ち返ること。なにを目指していたのか思い出すこと。 -
戦略とは「目的」達成に向けた「資源」利用の指針である。シンプル故に、その定義とメリットを定義したものは貴重だと感じた。戦略を考えるレベルに立った時、いつも読み返していたい一冊。
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チームを持って、自発的に行動していく。
初めて動く人にとって有用だと感じた(自分がそうだったので)。
戦略を分解して把握するために最適な書。 -
・戦略は、目的を達成するために資源をどう利用するかの指針。
・戦略が必要なのは、達成すべき目的があり、かつ、資源が有限であるから
・良い目的の設定があることで、どこを目指すべきかが明確になり、現状の進捗を把握でき、目的達成のもとに結束させられ、達成確立を上げられる。良い目的には曖昧さがない。
・良い目的を設定するための概念は、SMACとSMART。
SMAC: specific(具体的) measureble(測定可能) achievable(達成可能) consistent(一貫性)
SMART:specific(具体的) measureble(測定可能) achievable(達成可能) relevant(関連性) time-bound(期限設定)
achievable(達成可能)な、演繹法と帰納法でゴール達成のプロセスを想定する
・問題を違う視点から再解釈する2つの質問
1:何が問題か? 2:ある場合とない場合の違いは?
・未来の5年後の状態を想定して目的を再解釈する
・補完と相乗で資源の配分を考える。
・質の良さを量で測る。質は量に対する係数。
・戦略予備として、常に稼働の何割かは別に動けるようにリソースを確保しておく。
・インプットとアウトプットが釣り合う状況が想定されるなら、その段階まで資源の投入を続けても投下効率は劣化しない
・上司からもらえる最大のプレゼントは、彼らの視点のコピー。逆に部下には、自分の視点をコピーしやすいように振る舞う。
・あえて最悪の事態に陥ったと仮定して原因を振り返ってみる
・競合の取り組みには、下記の視点で考える。
1:なぜ、そんなことをするのか
2:なぜ、そんなことができるのか
戦略とは、目的達成のための資源利用の指針 -
何か目標/ビジョンを持って取り組む際に、「目的」をしっかり持ち、その目的達成のためには「戦略」を立てる。
・戦略を立てる重要性、そのための必要な要素とは
・そもそもその目的は、達成するべき”いい目的”か
共通言語として語られる「戦略」という言葉だけど、そもそも「戦略」とは何か?
本書で戦略とは、”目的達成のための資源利用の指針”と定義されている。
いい目的は、正しい問題解決と目指す目標達成を実現する。いい戦略は、目的と資源を再解釈できる。
戦略を武器するため、丁寧にまとめられた一冊。 -
どこまでもロジカル
戦略、理念、ビジョン、目的、目標
これらの言葉はあふれているが正しくつかわれているのか
どれだけの人が正しく理解しているのか
ここまで明解な本は初めて読んだかもしれない
惜しむらくは本の体裁がアンチョコ本に思えてしまうこと
じっくり読む読める好著なのに
人を外見で判断してはいけない(なんのこっちゃ) -
・戦略は「目的達成のために資源をどう利用するかの指針」
・上部組織の計画は下部組織の目的になり、さらに各部署、各チーム、ひいては各個人が達成すべき目的へと細分化されていく。これがConsistentやRelevantの意図である。
・どの時代でも、それぞれの分野で最高を目指している。違いが出てくる理由は、何を持って最高とするか、つまり、なにが評価基準か、が違うのである。
・商品やサービスの評価基準の順位は時代とともに変わる。潜在的な顧客のニーズをうまく把握し、具現化することで、評価属性の順位は入れ替えることが可能である。この属性順位の転換をうまく使うことで、市場創造ともいえるイノベーションをマーケティングが主導できるようにもなる。
・ロジャーズの5つの要素
-相対的優位性:既存のものよりよい
-両立可能性:既存の習慣と一貫性があり、生活の中に持込やすい
-複雑性:簡単に理解されるものでないとイノベーションが採用されるのに時間がかかる
-試行可能性:小規模にせよ体験できる
-観察可能性:イノベーションの結果がほかの人たちの目に触れる
・戦略で目的と資源を定義することで、権限委譲を助けることができる
・局地的数的有利でジャイアントキリングを行う
・ランチェスターの第二の法則:二乗比の法則 資源の二乗の力で結果につながる(100vs50の場合は10,000vs2,500となる)
・戦略の要諦は違うことをするか、違うようにするか
・戦略によって差が出るのは、大きく3つのポイントが考えられる
-目的の解釈の仕方
-資源の解釈の仕方
-相対的に資源の数的有利をもたらす分母の区切り方
より戦略的に、あるいは戦略において効果的になるためには視点を増やす努力をするといい
・戦略的であるためには、常に目的を意識し続けることである