職業としての小説家 (Switch library)

著者 :
  • スイッチパブリッシング
4.13
  • (324)
  • (324)
  • (168)
  • (20)
  • (3)
本棚登録 : 2800
感想 : 377
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784884184438

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「職業としての小説家」村上春樹さん著 読了。

    ・日本を代表する世界的な小説家の村上春樹さんによる、「小説を書くこと」に関するエッセイ集。

    ・まず、そもそも「小説家」とは何者なのか、どういう人間なのか、という考察から始まります。
    ・小説家は頭の良い人には向いていない仕事だと述べています。(私は春樹さんはとても頭の良い人だと思いますが…)
    ・なぜかというと、頭の良い人ならわざわざ物語というような回りくどい形式を使わなくても物事を表現できるからだとか。
    ・小説家とは不必要なことをあえて必要とする人種であり、そういった不必要なところや回りくどいところにこそ真実や真理が潜んでおり、それを書くのが小説家の仕事だと。

    ・ところで春樹さんは「文章を書いている」というよりは「音楽を演奏している」という感覚で小説を書いているそうです。
    ・確かに、春樹さんの独特でシンプルな文章を読んでいると、音楽を聴いているような気になりませんか?

    ・文学賞については、何より大事なのは良き読者であり、どのような文学賞も、勲章も、好意的な書評も、実際に本を買ってくれる読者に比べれば、実質的な意味を持たない、と。

    ・オリジナリティーについても深い考察をされているのですが、長くなってしまうので簡潔に説明します。

    ・同時代のオリジナルな表現を現在進行形で評価するのは難しい。
    ・なぜなら、同時代の人の目にはそれが不愉快に見えることも少なくない。
    ・多くの人々は自分に理解できないものを憎む。
    ・特に、既成の表現に浸かり、その中で地歩を築いてきたエスタブリッシュメントにとっては唾棄すべき対象になり得る。それらが自分たちの立っている地盤を突き崩しかねないから。

    ・端的に言うと、オリジナリティーとは、「新鮮で、エネルギーに満ちて、そして間違いなくその人自身のものであること」で、同時代に理解されるとは限らず、時の経過を経て理解され輝く表現も多数ある、と。

    ・小説家を目指す人に対して春樹さんのアドバイスも書いてあります。
    ①本をたくさん読むこと。
    ②目にする事物や事象を子細に観察。
    ③すぐにはものごとの結論を出さず、時間をかけて考える。
    ④健全な野心を失わない。
    ⑤世界はつまらなそうに見えて、多くの魅力的な謎めいた原石に満ちている。それを見出す目を持ち合わせているのが小説家。

    ・もっとご紹介したかったのですが、長くなりすぎてしまうので、そろそろ終わりにします。

    ・この本は、いわば春樹さんの小説を作っている秘伝のレシピを公開している本で、ここまで公開してもいいのかと戸惑うことも多数ありました。
    ・小説家を志す多くの人たちにとって長い間バイブルになることでしょう。

  • 村上春樹の作品が好き。
    その小説を書くに至った経緯や、彼の書き進め方、生き方、様々な価値観が集約されていた。
    彼の紡ぐ言葉が好きで好きで堪らない。
    彼の自由な生き方も!
    興味深くて自分が生きていく上で学ぶ要素もあり、村上春樹ファンには是非とも読んで頂きたい。

  • 【本学OPACへのリンク☟】
    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/432551

  • 世界的大小説家の頭の中を赤裸々に公開。小説の書き方を惜しげもなくご教示くださっている。

  • 読み終わった後に何か文章を書きたくなった。

  • 収入の安定していたお店を売却して専業作家になったりアメリカでの出版のために動いたり、村上春樹も要所で大胆な決断してきたのだと知ることが出来た。

  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    基本の大切さを知っていても、
    徹底的にできている人は少ないのだろう

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    いま、世界が渇望する稀有な作家──
    村上春樹が考える、すべてのテーマが、ここにある。
    自伝的なエピソードも豊かに、待望の長編エッセイが、遂に発刊!


    目次

    第一回 小説家は寛容な人種なのか

    第二回 小説家になった頃

    第三回 文学賞について

    第四回 オリジナリティーについて

    第五回 さて、何を書けばいいのか?

    第六回 時間を味方につける──長編小説を書くこと

    第七回 どこまでも個人的でフィジカルな営み

    第八回 学校について

    第九回 どんな人物を登場させようか?

    第十回 誰のために書くのか?

    第十一回 海外へ出て行く。新しいフロンティア

    第十二回 物語があるところ・河合隼雄先生の思い出

    あとがき


    ⚫︎感想
    村上氏が、作品を書くことを愛し、全力を尽くしている姿を知ることができる。

    「書くことは孤独な作業である。」
    「時間を味方につけるには、ある程度自分の意志でコントロールできるようにならなくてはいけない」
    「持続力を身につけるためには、基礎体力を身につけること」
    「肉体的な節制は、小説家であり続けるために不可欠」

    これらを読むと、基本的なことを、とても重要視し、本当に大切にされていることがわかった。

    書かれた本を親子世代に渡って読んでもらえること、その著作を話題にしてくれることの喜びも書かれていた。書くことをご自身が楽しみ、また多くの読者を虜にする村上氏の著作。村上氏の仕事に向かう姿勢、やり方、感情を垣間見ることができる。

  • 小説は読むだけで、畏れ多くも書こうと思ったことはないので、小説の見方が新鮮だった。書く技術とか、一体どういった技術なのか不思議だった。一人称から三人称へと視点が広がることで出る物語の広がりとかなるほどなぁ。
    元気がでないときに何度と読み返した。こんなに繰り返し、またいろんな作品を読んでいる作家は気づけば村上春樹さんだけです。感謝の気持ちです。

    それにしてもキャラクターが勝手に動き出す、ってどういう感覚なんだろう?

    2023.10.13

  • 新作を読んでまだ読み残してる作品を探して本作に巡り合う。小説ではなくエッセイではあるが、村上春樹がよく分かる本であった。この著者を知って以後新作が出れば必ず読みたくなるのは、圧倒的なオリジナリティによるものだと気づいた。最近日本の作家も随分優れた作品を出すようになったが、何処かで読んだような気がするようなものが見られるようになり最近はちょっと辟易としていたが、村上春樹だけは完全オリジナルな気がする。海外で受賞する作家も増えてきたが、それは受動的なものであり村上春樹のような能動的なものでない。

  • 彼の作品は、メタフォリックで夢心地で投げっぱなし感があって、捉え難く無定形な印象があるけど、実は心理の深い所で読者と通底しているという確固とした信念があった上での表現なのであって、そういう意味で、まったく自己完結した、閉じたテクストなのだと思う。このエッセイも、彼の仕事ぶりを精密に正確に描写することで、作品と同様に、彼の作品を書く行為について自己完結が全うされている、そう思った。

全377件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

村上春樹の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×