大学院教育の研究

  • 東信堂
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  • Amazon.co.jp ・本 (523ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887132719

作品紹介・あらすじ

教育機関か研究機関か、基礎研究か応用研究か、研究者養成か職業人養成か-大学(学部)ユニバーサル化時代に直面し、ますます不透明な大学院の明日を照らし出す、第一人者クラークを中核とした、独、英、仏、米、日-五カ国の現況、伝統、特徴の徹底した比較研究。関係者必読の文献。

感想・レビュー・書評

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  • 5292円購入2009-11-30

  • 2015/8/31再読
    19世紀末のドイツでは、大学の研究機能は産業・軍事の要請に応ずることによって、歪曲された。人文主義的なフンボルトの教育理念は、時のウイルヘルム体制の支持に組み込まれ極めて政治的なものとなってしまった。ここがその理念の終焉の始まりだったといえる。この理念とは別に今日では、ドイツ大学のシステムの中にある、関係者の既得権益があるおかげで、明確な大学院課程の導入がなされない点もあるとのことだった。また事例分析では研究環境や指導体制の不備が強い口調で指摘されている。この点はあまり日本では語られない点であり参考になった。

    イギリスにおける修士の学位は、1970年代に、研究のコースよりも「授業履修型修士学位(M.A.,M Sc., M.B.A., M.S.W等)を拡充させた。その結果修士学生は、1966年の13,000人から1988年の29,000人の倍以上の学生数となった。ちなみに、イギリスには大学院生という括りでは公式基本データはなく、前期のものは断片的な情報に留まっているとのことだった。

    2012/5/13「結論」のまとめ
    大学院における、研究、教育、学習を分離させる傾向と、逆に統合する傾向があることがわかった。これは、H17・23年の大学院答申で示されことがらからにもいえるのではないか。アメリカの大学院の特徴をさらに採り入れようとする動きが引き続きあるとすれば、本書から各国の事例を知っておくことも有益だろう。(日本がアメリカのように大学院中心の大学制度に移行して財政上もつかどうかは疑問なので。)

    1980年代の時点で、アメリカの大学院はエリート主義ではなく、大衆のためのものになった。学士10に対し修士・博士4という割合だったという。多くの学生は、「研究に携わるというよりは、体系的に作られたカリキュラム(コース)を次から次へとこなしていくことが基本的に必要になる。」

    大学レベルの組織的な専門教育が求められると、教える側は研究者でもよくなる。

    政治家・官僚から自己の業績のために、研究者に対してグラントの配賦を通じて2~3年の期限を設ける。政府の意向の比重が大きくなる。

    大学院の段階でも、レベルを増やし、学位を多様化し、学生の入学、進級、資格付与の在り方を多様化させることになる。

    フンボルト理念が実質的・理想的に実現されているのは、アメリカの研究大学の自然科学学科の歴史と名声を持つグループ。このような規模で何千という専門化した学問の世界を持たざるを得ない。

    大学院の種別化と機能別分化は、つまるところ、研究大学はさらに充実し、実績のある専門職大学院は現状維持となり、それ以外は縮小を加速させると思えてならない。つまり、学術大学院と専門職大学院のいずれかで実績をあげ、評価されないといけないということだろう。この仮説を持ち関心を持ち続けていきたい。

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