芸術の蒐集

  • 東洋書林
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  • Amazon.co.jp ・本 (407ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887217874

感想・レビュー・書評

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  • 『美の歴史』『醜の歴史』に続く、エーコの芸術史第3巻。
    美と醜の枠を飛び越えて、蒐集の大海へと碩学が誘う。

    原題は”Vertigine della lista”、「目録の眩暈」もしくは「めくるめく羅列」というような意味であるらしい。
    「リスト」が本書のテーマである。書物にしろ、絵画にしろ、数多くのものを描いていても、結局は有限である。『神統記』や『イリアス』の時代から、人間は膨大なリストを以て世界の無限に挑んできた。数え切れないほどの人物たちが描かれた群像画もまた、額縁を超えて広がる宇宙を感じさせる。
    視覚的リスト、物のリスト、場所のリスト、脅威のリスト、驚異の部屋(ヴンダーカマー)などのテーマのもとに集められた美術作品や文学作品。
    これでもかというほど列挙される羅列の例の洪水には、眩暈を通り越して悪心をもよおすほどだ。この本自体が「リストのリスト」と呼べるものになっている。
    博物館やコレクターとも通じる、「網羅したい」という思い、あるいは欲望。圧倒の1冊である。


    *個人的には、ちょっと手に余った。自分はあんまり世界を把握したいって欲望がないんだな、きっと。リストというものにそれほどの興味を持てない。

    *三部作のうち、自分としては『醜の歴史』が一番おもしろかった。

    *第16章「一貫性のある過剰」の中に、エーコ自身の作の抜粋も採られている。前段に弁明があってちょっと微笑ましい。

    *前2作に比べて、テキスト引用部分が多いような気がする。基本的には本書の訳者さんが訳されたものらしい。リストが延々と続く、訳に苦労しそうな文章が山ほど。いやもうとにかくその労力に「お疲れさまです」と言いたい。

    *創世記の抜粋を呼んでいたら、筒井康隆の『バブリング創世記』を思い出してしまった。もう何年も前に読んだきりなのに。記憶って不思議。

著者プロフィール

1932年イタリア・アレッサンドリアに生れる。小説家・記号論者。
トリノ大学で中世美学を専攻、1956年に本書の基となる『聖トマスにおける美学問題』を刊行。1962年に発表した前衛芸術論『開かれた作品』で一躍欧米の注目を集める。1980年、中世の修道院を舞台にした小説第一作『薔薇の名前』により世界的大ベストセラー作家となる。以降も多数の小説や評論を発表。2016年2月没。

「2022年 『中世の美学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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