100歳の美しい脳: アルツハイマ-病解明に手をさしのべた修道女たち
- ディーエイチシー (2004年6月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
- / ISBN・EAN: 9784887243651
感想・レビュー・書評
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脳を紐解くナン・スタディという研究成果の本と思い読み始めたが、どちらかというと人類愛や他者へのリスペクトに満ちた濃いめのエッセイだった。
人間の体の様々なことを研究していくと最後には、「バランス良く食べて多少動き、よく笑い、新しいことに挑戦し勉強を続ける。するとより良い人生になる」という至極当たり前の結果が出てくるがこの本も似た側面はある。
但し、筆者のスタンスが研究というよりシスター達への敬愛を著したものになっているので、とても読みやすい。またシスター達は非常にエネルギッシュでとても素敵。生きる指針がある雰囲気が伝わってきた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
修道女を対象に十数年の研究を行い,アルツハイマーという病気の解明に研究がどのように貢献したのかを示した本.ものすごく感動した.二つの意味で.ひとつは多くの人にとって有意義な,独りよがりでない,すばらしい研究をされていること.もう一つは人間の人生がそこにあって,それが文章としてとてもよく伝わってきたこと.人間のある特性を研究するとき,その研究成果はすべての人において言及できるものでなければならない.そのため,通常科学者は研究の対象となる人々の余分な特性(年齢,教育歴,性別,生活水準,時間,空間などなど)が均一になるようにできる限りコントロールしようとつとめる.しかしこれはとても難しいことで,なかなかうまくいかない.とくに,今回のようにアルツハイマーの特性について検討すると行ったような場合,アルツハイマー患者の対象は非常に条件のコントロールが難しくなってしまう.著者は修道女という対象を選ぶことで(生活水準,性別,教育歴,など)うまい手法でコントロールした.さらに参加者約700名の被験者の生存中の認知的機能的データ,生理的データをとりつつ,死後の献脳を約束してもらうことで,あらゆるデータとアルツハイマーとの関連を検討可能にしている.このような研究は後にも先にもないだろう.でも最も「いいな」と思ったのは著者がそのような厳密な統制を行いながらも,対象者を思いやる心を忘れていない点である.対象となった修道女一人一人の生い立ちを丹念にひもとき,敬意と愛情をもって接しているのがよく伝わってくる.ひるがえって世間一般の多くの「人間に役立てるための研究」をしている研究者はどうだろう.目的と方法を見ればその研究者が「赤い血の流れた人間を対象にしている」ことをちゃんと認識し,「なにをどうすることが人間の幸せにつながるのか」認識しているかどうか,すぐにわかる.認識できていなければ「○○に役立ちます」といったところで,所詮はマスターベーションと同じレベルである.公開せずにちゃんと一人でやればいいのだ.
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アルツハイマーを研究する著者と、サンプルになってくれた修道女たちの記録。
みんな同じような生活習慣の修道女たちはブレが少ない。
だから亡くなった時に参加してくれた人全員の脳を見れば、アルツハイマーの人とそうじゃない人の差がわかりやすい。
ということでシスターたちに協力を乞う。
脳ってすごい、おもしろい!
だけどこの本が面白いのは、「脳」だけを見ているんじゃなくて修道女たちの生前があって、生き様があって、交流があって、筆者の悩みや使命感があって、つまるところ人がきちんと描かれているからだ。
これは確かに美しい。
ちょっと「クリスマスの木」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4105340018を連想した。