- Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
- / ISBN・EAN: 9784894191396
感想・レビュー・書評
-
再読。東京オリンピックの開催された1964年。「祭司」と呼ばれる少年をリーダーに、猫を川に沈める「儀式」に夢中な少年たち。彼らは猫を水に帰してやっているのだと言う。
猫好きが読んだら激怒しそうな内容だけれど、それぞれの家庭の事情をかかえ不安定な少年たちは、自らの運命を猫に仮託しているのだと思える。最終的に少年たちの、ある者は事故死し、ある者は発狂し、一人また一人と去ってゆく。
現実に異常な連続殺人事件の犯人は大抵まず猫や動物の虐待から始めてやがて対象は子供へとむかう。猫を虐げている少年たち自身もやがて虐殺の対象となる。
ノスタルジックでありながらも重い余韻が残って切ない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
水の国に還す祭儀として猫を川に流す遊びをする少年たちのはなし。痛くて、痛々しい。子どもの頃の残酷な遊びに過剰な意味を持たせることはよくあって、それが、大人への通過儀式にもなっている。ファンタジーとしての仕立て方が上手だと感じたのでわたしは好きだけど、好きじゃない人も多いだろうなと思う。古川日出男の猫小説を非常にダークにしたような感じだった。
『夢童子』の方だったんだなあ。そして何ともパロル舎らしい本だと感じた。 -
子どもの頃に誰もがやった
「無意味で残酷な意味のある遊び」の物語です。
決して美しかったり楽しい話ではないです。
汚泥と腐臭、浮いた油の色が見えるようで
読後感は夏のようにけだるかったです。
なつかしいような。
二度と戻りたくないような。 -
H9 日本児童文芸家協会賞受賞
1964年(猫は水の国で生きる。)祭司の少年に導かれ、子供達が秘密の儀式を進行するお話
-
ある少年たちの痛い痛い日々を描いた物語。
少年たちはある儀式に夢中になります。それは猫を殺して川に流すこと。猫は死んだのではない、川の中で解放され自由に泳ぎ回るのだと少年たちはかたくなに信じるのです。だが、もちろん、こんな少年の日々が永遠に続くわけもなく、猫たちが川の中で解放されるわけもないのです・・・。
▲猫は静かに香箱をつくってぼくたちの夢想を待っている。猫は入り口であり、出口であり、案内人であり、油断のならない道連れで、そして、決して心を許さない相棒だった。いつ、むこうからすりよってくるか、また尻尾をたててどこかへ歩み去ってしまうかもしれないのだ▲
それにしても著者の天沼春樹氏、猫が余程好きなのか、あるいは嫌いなのか・・・。
読了2007/9/6 -
天沼春樹の不思議な本。猫を川に流す儀式に興じる子供たちの話。