- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784896421095
作品紹介・あらすじ
作者ジェイムス・クリュスの分身ででもありましょうか、北海の孤島ヘルゴラント島出身の若い作家は、長い月日をかけて伝説の「風のうしろの幸せの島」を捜す旅をつづけています。その途中で帆布工房のハウケ・ジーヴァース親方と出会い、きっちり一週間、ロブスター岩礁の燈台をめぐる物語を聞きました。その物語をまとめたのがこの本です。物語の中にはお話をするのも聞くのも大好きな人々がたくさん登場します。南の海のポルターガイストの話、魔法使いヒンツ・ローゼンホルツの話、人形のアグラヤの話、ネズミのテレーゼの話、愉快で楽しいパッパマッナカスカ島の話、星の狩人の話など、登場人物たちは幸せのイメージに満ち溢れたお話を次々語ってくれます。幸せを掴むためには、少なくとも幸せのイメージを持たなければならない。そう考えつづけるクリュスがヘルゴラント島に吹きつける海風にもらった14の物語。
感想・レビュー・書評
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物語を聞くのも話すのも好きな面々が、
たくさん登場。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2013/07/23
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クリュスのデビュー作。30代前半でこんなみずみずしい物語を書いたクリュスさんに、ますます興味がわく。
「物語とは美しくなくてはいけない」という言葉が、物語の中で、なんども繰り返されるのが印象的。
森川さんの翻訳にも、クリュスのみずみずしさというか、若さがにじみ出ていた。 -
大戦中のドイツ。
その燈台ではお爺さんやカモメや水の精たちが日々お話を物語りあいながら暮らしている。
おだやかな悦楽のときを共有できます。
《「わたしたちのような、世界に対して何の欲ももっていない老人は、世界に対して何も与えることができないのです」》(p.37)
《「その物語が本当にあったかどうかは、まったくどうでも良いことなんだよ。物語の場合、大事なのはそれが本当であるかどうかではなく美しいかどうかなんだから」》(p.41)
《だが、良い人間の数はやはり少ないんだ。》(p.74)
《雲は特定の人としか話をしないのだろうか。それとも、カモメも雲も、ハウケ・ジーヴァースとしか話をしないのだろうか》(p.99)
《そういう訳でハンスは木箱の中で居心地の良い姿勢を見つけると、膝の上に本を乗せて読み始めた。外はあいかわらず、海も空も嵐のまっただ中だ。》(p.115)
《「船の甲板でお話を聞くのは、とくべつ気持ちが良いものだから」》(p.184)
(2005年01月28日読了) -
表紙が地味なんですが、おだやかな良い話です。ほのぼのなごみ系のお話が沢山!でも「戦争は絶対いけないこと」というメッセージもしっかりつたわります。