お伽草紙(そうし)

著者 :
  • 未知谷
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本棚登録 : 47
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896421880

作品紹介・あらすじ

劫を経て再び太宰文学に親しむために最良の書。

感想・レビュー・書評

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  • 防空壕のなか、父親が幼い娘に昔話の絵本を読み聞かせるが、胸のなかでは自分仕立ての物語に作り替えていた。

    『瘤取り』では、不正をしたわけでもないお爺さんが両頬に瘤をつけられて、人間生活にはこういうことがある、と結論付ける。
    『浦島』では、三百歳になってしまうことは不幸ではないと言い切ったうえで、年月と忘却は人間の救いだと言い放つ。
    『カチカチ山』では、若い処女に手を出すことに対し、節度を守れと警告する。何が悪いのではない、惚れたことが悪いのだ、と。
    『舌切雀』では、雀と仲睦まじくしている夫に嫉妬した妻が欲に飲まれて死んだ結果、夫が出世する様子を描き、日本版「覆水盆に返らず」を披露する。

    ---------------------------------------

    悪いことをした人が罰として痛い目に遭うような、教訓めいた昔話ではなかった。太宰治の考える、人間社会の理不尽な仕組みを昔話のフレームにぶち込んだような話たちだった。

    日本の昔話のはずなのに、ギリシャ神話のワードがいくつも登場した。エデンの園、パンドラの箱、アルテミス(月の女神)、万蛇頭のメデウサ。
    やっぱり好きだったんだろうな、ギリシャ神話。

  •  
    ── 太宰 治《お伽草紙 1945-20070301 未知谷》スズキ コージ・画
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4896421884
     
     瘤取り、浦島さん、カチカチ山、舌切雀(全四篇)。
     舌切雀のしたたか伝説 ≒ 偽舌・曲舌・巻舌・口舌・毒舌
    (草稿)
     
    …… 口が曲がる;目上の人や恩義を受けた人などの悪口を言うと、そ
    の罰として口の形がゆがむという意。人に対しての悪口をいさめる言葉。
    https://dictionary.goo.ne.jp/jn/61871/meaning/m0u/ デジタル大辞泉
     
     舌切茶屋の末裔 ~ 近藤家の一族 ~
     
    …… 近藤 正慎(こんどう しょうしん)尊王攘夷運動。本姓は栗山、
    名は義重、通称は仲。清水寺成就院で出家。兄弟僧の月照を支援し尊攘
    運動に身を投ず。
     安政の大獄に連座して捕縛され、六角獄舎において、月照の行方につ
    いて拷問を交えて問われるが全く白状せず、獄中で舌を噛み切って壁に
    頭を打ちつけて自害した[1]。明治維新後従五位に列せられた。
     孫に陶磁器の人間国宝である近藤 悠三、曾孫に俳優の近藤 正臣。
     子孫は代々、清水寺境内で休憩所「舌切茶屋」を営む(Wikipedia)。
     
     近藤 正慎 清水寺寺侍 181603‥ 丹波 京都 18581128 42 /自害
    /正臣の曽祖父   /文化13.02‥    安政 5.1023/「舌切り茶屋」
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/19780102
     近藤 正臣:むかしもいまも芝居が好き
     
     Zeno of Elea   哲学 -490‥‥ Italy   -430‥‥ 60 /“パラドックス”-494 < -434
     ゼノン      哲学 -334‥‥ Kypros  -262‥‥ 72 /“ストア派”(別人)
     森 毅      数学 19280110 東京 大阪 20100724 82 /京都大学名誉教授
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/20030827
     舌を噛んだ人々
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%C0%E5%A4%F2%B3%FA
     
    (20171218)
     

  • 読了。
    読書倶楽部の課題図書。

    むかし話の太宰的解釈。

    以前NHKの『100分で名著』の太宰の回で紹介されてて、気になっていた作品。

    やっぱり“カチカチ山”の狸が最も憐れ。
    何もそこまでやらなくても……というほどの目に遭っていく。

    これほど残忍なことができるのは16歳の処女っていう太宰の思い込みもヤベェけど、笑っちゃう。

    “浦島さん”の亀の饒舌さ、毒舌さにも閉口させられる。そして浦島太郎が竜宮城から帰ってきて玉手箱開けて歳とるって結末は、子供の頃から納得いかなかったんだよなぁ。

    亀助けて、そのお礼のはずじゃ?
    まんが日本むかし話では、また違う結末だったような気がするんだけど。クラゲが出てこなかった?どうだったかな。

    まぁ、おもしろかったです。

    『100分で名著』録画してたので改めて観たんだけど、又吉直樹の語彙力の豊富さに感嘆。本を大量に読んでるからだよね、きっと。
    (160522)

  • 太宰治のお伽草紙にスズキコージさんが挿絵という、とっても魅力的な本です。
    本文は旧仮名づかいなので、それもまた味わい深いのです。

    防空壕の中で子供に絵本を読んで聞かせる父親が、胸の内で描き出した新しいおとぎばなしです。
    瘤取り、浦島さん、カチカチ山、舌切雀の4編。

    何度読んでも「カチカチ山」が好きです。
    狸はうだつの上がらない中年醜男、兎は16歳の少女。
    十代の少女の無邪気さと悪魔が同居する様と、子供向けのおとぎばなしのイメージとのギャップにくらくらしてしまうのです。

    「瘤取り」の最後の2文の残す余韻に、思わずにやりとしてしまいます。
    私の周りでも、こんな"性格の悲喜劇"は渦巻いているなぁ…なんて思ってしまうのです。

    それから、舌切雀冒頭で著者が「なぜ桃太郎を書かなかったのか」を必死に説明しているところにも、にやり。

  • 瘤取り、浦島さん、カチカチ山、舌切り雀といった昔話を太宰治流に翻案したパロディーお伽話。昔話には善玉・悪玉のはっきりした勧善懲悪ものが多いけれど、太宰は全く別個の物語(解釈)を展開する。カチカチ山の狸は女に惚れた弱みをさらけだす男、ウサギはその男をもてあそぶ処女・・といったように、話しはすべて太宰流の現実社会の認識論に還元されたりする。勧善懲悪のお伽話の中身も視点を変えればどちらが善玉なのか悪玉なのか一概には判断できないというアイロニー、現実の奥深い不可解さが表出して面白い。太宰のテンポのよい文章には酔えます。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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