- Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
- / ISBN・EAN: 9784896421880
作品紹介・あらすじ
劫を経て再び太宰文学に親しむために最良の書。
感想・レビュー・書評
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読了。
読書倶楽部の課題図書。
むかし話の太宰的解釈。
以前NHKの『100分で名著』の太宰の回で紹介されてて、気になっていた作品。
やっぱり“カチカチ山”の狸が最も憐れ。
何もそこまでやらなくても……というほどの目に遭っていく。
これほど残忍なことができるのは16歳の処女っていう太宰の思い込みもヤベェけど、笑っちゃう。
“浦島さん”の亀の饒舌さ、毒舌さにも閉口させられる。そして浦島太郎が竜宮城から帰ってきて玉手箱開けて歳とるって結末は、子供の頃から納得いかなかったんだよなぁ。
亀助けて、そのお礼のはずじゃ?
まんが日本むかし話では、また違う結末だったような気がするんだけど。クラゲが出てこなかった?どうだったかな。
まぁ、おもしろかったです。
『100分で名著』録画してたので改めて観たんだけど、又吉直樹の語彙力の豊富さに感嘆。本を大量に読んでるからだよね、きっと。
(160522) -
太宰治のお伽草紙にスズキコージさんが挿絵という、とっても魅力的な本です。
本文は旧仮名づかいなので、それもまた味わい深いのです。
防空壕の中で子供に絵本を読んで聞かせる父親が、胸の内で描き出した新しいおとぎばなしです。
瘤取り、浦島さん、カチカチ山、舌切雀の4編。
何度読んでも「カチカチ山」が好きです。
狸はうだつの上がらない中年醜男、兎は16歳の少女。
十代の少女の無邪気さと悪魔が同居する様と、子供向けのおとぎばなしのイメージとのギャップにくらくらしてしまうのです。
「瘤取り」の最後の2文の残す余韻に、思わずにやりとしてしまいます。
私の周りでも、こんな"性格の悲喜劇"は渦巻いているなぁ…なんて思ってしまうのです。
それから、舌切雀冒頭で著者が「なぜ桃太郎を書かなかったのか」を必死に説明しているところにも、にやり。 -
瘤取り、浦島さん、カチカチ山、舌切り雀といった昔話を太宰治流に翻案したパロディーお伽話。昔話には善玉・悪玉のはっきりした勧善懲悪ものが多いけれど、太宰は全く別個の物語(解釈)を展開する。カチカチ山の狸は女に惚れた弱みをさらけだす男、ウサギはその男をもてあそぶ処女・・といったように、話しはすべて太宰流の現実社会の認識論に還元されたりする。勧善懲悪のお伽話の中身も視点を変えればどちらが善玉なのか悪玉なのか一概には判断できないというアイロニー、現実の奥深い不可解さが表出して面白い。太宰のテンポのよい文章には酔えます。