野獣の薔薇園

  • ジュリアン出版
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本棚登録 : 48
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784902584134

作品紹介・あらすじ

イスラムの掟を破り、精霊の呪いによってライオンの姿に変えられたペルシャの王子オラスミン。獣からも人間からも隔たり、絶望的な孤独感を抱きながら、女性の愛を求め、薔薇の国フランスへ旅立つ―。新解釈の『美女と野獣』。

感想・レビュー・書評

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  • この作家さんの別の有名な本、逃れの森の森の魔女に比べるとちょっと物足りなかった。

  • あまり読む気がなくて、暇つぶしにページをめくっていたが、やはりおもしろい。逃れの森の魔女の方が好きだが、説得力がある。

  • ビーストになってからの生生しい感じが面白かったです。ベルと会ってからの話がもっと読みたかった。シュシュは可愛いなあ。ガストン(ディズニー版)的な人はいないのですね。人間(銃所持)が脅威であるにも関わらず典型的な「悪い人間」が登場しないのがよかったです。

    呪いに関してはコーランについてあまり知らないので厳しく感じた。パーリっていったい。お供え物(?)って重大なんだなあ。らくだ…。

  • 16世紀のペルシャ(からフランス)を舞台にした野獣視点の美女と野獣。
    アラビアンナイト→シートン動物記→秘密の花園と読みすすんでいる気分になった。
    でもまぎれもなく美女と野獣。
    愛はフランスで見つけるべし。

    物をつかめない前足で本を挟んで動かして、体温調節に使う舌でぬらさないよう細心の注意を払ってページをめくり、遠くを見るための目を酷使しながら本を読む。
    鋭い爪で穴を掘り、木を植える。
    野獣の獣っぷりと、人の思考のバランスが大変いい。

    王子様はなんだってひとりでできる。ひとりでできるべきだから。
    野獣だってなんでもできる。群れる動物だから途方もなくさびしいけれど、それでも努力でなんとかなってしまう。
    その危うさは最初から繰り返し示唆されるけれど、オラスミンは気付かない。

    最初の雌は肉をくれる。
    野獣は美女に肉を与える。
    野獣は美女のために卵をとり、壊さないようにそっと運ぶ。
    運ぶことはできるけれど壊さずに取り出すことはできないから、ベルが来るのを待って差し出す。
    彼女のための卵は、彼女が気付いて取り出してくれなければ渡すことができない。
    オラスミンはこの時すでに彼女が受け取って(助けて)くれることを期待して卵を運んでいるんだけど、まだ「他者の力を借りること」の必要性に気付かない。

    オラスミンは敬虔で賢い王子様で経験の足りない少年。
    それが「ひとびと」から切り離されて、追われ、狩り、逃げ、大人になっていく。
    美女と野獣の間には絶対的に言葉が足りない。(人間とライオンだし)
    シュシュのこともわからない。(キツネとライオンだし)
    それでも近くでかかわりあえば、女子の気を引くためのマスコット(あるいは肉)は「シュシュ」になり、元に戻るためのアイテム(あるいは寂しさを埋めてくれるかもしれない偶像)は「ベル」に変わる。

    最初から最後まで(ひとりのときも、ベルと出会ってからも)野獣視点なのが良い。
    おかげでコミュニケーションは双方向だということがわかる。
    オラスミンは王子たるもの、すべて自分で処理できるべきだと思っているから他者の助力を乞うことができない。
    実はベルも助けを求めようとしない。恐怖を見せないから恐がっていないと思われるし、欲しいものを見せないから与えてもらえない(多分家族に対しても)。
    ベルの場合は身を守るためで、信頼がないからなんだけど。
    美女を誘うための薔薇園は、誘わない野獣と尋ねない美女のパラダイスにはなれない。

    自分の弱さを認める勇気と、相手の強さ(折れないとか優しいとか)を信じる勇気をつかんでいく話だ。

  • もとの話は『美女と野獣』だが、本作の前半はまるでライオンの生活記録のよう。ライオンと化した王子の獣っぷりがあまりにもすごくて、読んでいて哀しい苦笑が漏れてしまうほどだ。そして後半にベルが登場してからは、二人の心のかよわせ方や野獣の妙なプライドにやきもきし、ベルのためにせっせと尽くす姿に微笑ましさを感じ、最後には野獣目線でベルを恋焦がれるようになった。結末はわかっていても、いざ読み進めると最終章のタイトルに目頭が熱くなる。

  • 作者のドナ・ジョー・ナポリは、誰もが良く知る物語を、新解釈で書き直して作品にしている作家なのだそうです。同書も、ご存知〝美女と野獣〟を16世紀のペルシャを舞台に、野獣視点で描き直したものです。
    ペルシャの王子オラスミンは、精霊の呪いによってライオンに姿を変えられてしまいます。彼を心から愛してくれる女性に巡り会えない限り、呪いが解けることはありません。と、ここまではファンタジーにありがちな筋書きなのですが、この小説が面白いのは、ライオンになった王子が、ペルシャを飛び出し、インドからパリへと孤独な旅を続ける中で、悲しみや挫折、絶望を味わいながら、人間としての感情をようやく保ちつつ、体が獣の本能に目覚めていく様を丹念に描いているからです。そのことがリアリティーを生み出して、読者を違和感なく物語の世界へ誘ってくれるのでしょうね。
    オラスミンが運命の女性ベルに出会うのは、ページの残りも少なくなってからなのですが、二人の間に横たわる緊張感や、揺れ動く感情の機微が良く描かれていて、単なる夢物語に終わることなく、味わい深いお話に仕上がっていますよ。

  • 『美女と野獣』を下敷きとした物語。主人公はペルシャの王子オラスミン。彼の宮廷での暮らしぶりと、ジンの呪いを受けてライオンの姿へと変えられてしまってからの彷徨が、物語の半分近くを費やして語られる。ガウンをまとい、話もできて二本足で歩く半人間としてではなく、あくまで本物のライオンであるところがミソ。オラスミンとしての意識は保ったまま、獣としてのライオンの生理に突き動かされるところがなんともリアルに描かれる。
    重い体を地面にどさりと横たえる快感とか、獲物の血が口いっぱいに広がる感触とか、お腹いっぱいに食べた後、何日間かはうつらうつらしてしまうところとか、きっとこんな風に感じているのかもと思えて楽しめる。

    ――Beast by Donna Jo Napoli

  • ●美女と野獣が元ネタ。野獣の前身はペルシアの王子オラスミンと言うことになっており、「何故、彼は野獣に変化し、薔薇の館に住まうこととなったのか?」と言う問題を読み解くお話。 ●難点は、オラスミンの視点で進行するためベル(美女)の心情変化がわかりにくいところ。途中、日記と言う形でベルの心理が吐露されるが、もうちょっと彼女の生い立ちや境遇も含めて突っ込んでほしかった。あえて一人称にこだわる必要はなかったのでは? ●もうひとつ、昔から抱える根本的な(しょうもない)疑問なんだけど、野獣は肉珠のついたケモノ手でどうやって読書やらバラ栽培やらをするんでしょうか(笑) 無粋とわかっていても、そこは追求してほしかったなー!←浪漫や叙情を解さない発言。

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