〈科学の発想〉をたずねて 自然哲学から現代科学まで (放送大学叢書 12)

著者 :
  • 左右社
3.36
  • (1)
  • (3)
  • (6)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 112
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903500423

作品紹介・あらすじ

古代ギリシアから、コペルニクス、ケプラー、ガリレオ、ニュートン、そして量子力学や原子物理学、巨大科学まで。新理論や新概念が出現する際の、科学者の発想の工夫の跡を鮮やかによみがえらせる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  私たちが学ぶ科学の知識を生み出す仕組みや、科学の知識がどのように発展してきたのかを知ることのできる一冊です。古代ギリシャから20世紀までの物理、化学の発展を概観できます。
     私たちが学ぶ完成された理論が、観測できる事象と、当時の科学者たちが持っていた自然観をもとに、懸命に想像して組み立てられたものであることが分かります。現代の教科書数ページ、90分の講義の学習内容が、苦労の果ての産物であることを実感できます。また、当時の科学者の考えの背景が丁寧に説明されており、現代から見ると一見非合理に見える理論であっても、理由があって考えられていたのだと納得しました。
     私は、理科生向けの基礎講義で科学を理解していくと同時に、本書でその歴史を学び、相乗効果で双方への興味が増したと感じています。ただし、高度な科学の知識が要求されるわけではなく、文科生にとっても科学史に入門できる書籍だと思います。ぜひご覧ください。
    (理科Ⅱ類・1年)

    【学内URL】
    https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/Viewer/Id/3000051265

    【学外からの利用方法】
    https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

  • 電子ブックへのリンク:https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000051265(学外からのアクセス方法:1.画面に表示される[学認アカウントをお持ちの方はこちら]をクリック→2.[所属機関の選択]で 神戸大学 を選んで、[選択]をクリック→3.情報基盤センターのID/PWでログイン)【推薦コメント:この本は現在我々が程度の差はあれ信頼を抱いている科学が、歴史的な文脈の中でどのように誕生し変遷してきたかを学ぶことのできる、科学史入門に最適な本である。私は卒業論文で科学史を一部扱う予定なので、この機会にぜひ購入していただきたい。すでに神戸大学図書館に蔵書はあるが、2冊しかないし、また電子版の方が持ち運びなどに便利である。】

  • https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000051265?18

    sssssssssssssssssssss

    【学外からのアクセス】
    wwwwwwwwwwwww

  • 元々は放送大学のテキストであったものの書籍化。
    おそらく一時限ごとの講義をそのまま章立てしているのだろうと思うのだが、1章ごとに簡潔にまとまっていて非常に読みやすい。
    西洋自然科学の大きな流れをざっくりと追うには好都合な入門書である。

    ギリシアの自然学は2500年ほど前に始まる。神のお告げとされてきた自然現象の原因を、論理的に考察しようとしたのがタレスやその後継者たちだった。論理的に物事の原因を突き詰めていこうとすると、万物の根源は何かという問題にぶつかる。数、原子(アトム)、4種類の元素(火・空気・水・土)など、さまざまなものが物質の元だと唱えられた。
    ギリシアの時代、哲学と科学は不可分であり、学者たちは自然の探究を通し、数学的・哲学的・天文学的な考察を重ねていた。

    ローマ帝国は自然哲学よりも実用的な技術を重視した。ギリシアの自然科学は、東に流れ、アラビアに継承されていく。現代でも使用される「アルジェブラ(代数)」や「アルゴリズム」はアラビア語起源である。12世紀になり、ギリシア科学はアラビア語からラテン語に翻訳されて西欧に逆輸入される。
    そうした中で、アリストテレス哲学とキリスト教神学との齟齬が認識されるようになっていく。神学の枠の中で、アリストテレス自然学の問題点の検討が行われていた。

    中国では独自の科学が発展していた。暦が非常に重要視されていたため、付随して天体観測や天文学の発展が顕著だった。
    中国では、火・水・土・木・金が五元素とされる「陰陽五行説」が元となった自然観や宇宙論が支配的だった。
    三大発明とされる製紙術、火薬、羅針盤は中国から西洋に技術移転されるほど、技術的には進んでおり、造船技術も発達していた。
    だが15世紀以降、中国では遠洋航海が廃れていき、一方で欧州では大航海時代が始まり、このあたりを境に、科学の発展は欧州の方がめざましい勢いを見せていく。

    西洋天文学の大きな出来事といえば、地動説の発見だろう。
    惑星の運動が楕円軌道であることは、今でこそ「そういうもの」として習うが、そこに行き着くまでは簡単ではなかった。地球上にいてわかることは、それぞれの天体が天をどのように移動するかである。観測結果をさまざまなモデルに併せていくわけだが、前提が天動説である場合、ずれが生じてくる。これに併せてモデルが複雑化し、周転円(地球の周りに円があり、その円軌道上の一点を中心に惑星がころころ回る小さい円軌道があるとする)、離心円(惑星軌道は円だが、地球は中心から外れている)、エカント(離心円の反対側に仮想点があり、その点に関して惑星が等しい角速度で回る)などの考え方が提唱された。考えるだにややこしいが、観測結果に合致させるには、そうした複雑なモデルで微調整しなければならなかったわけである。
    16世紀後半、神聖ローマ皇帝の元で観測に励んだティコ・ブラーエのデータを元に、ケプラーが惑星軌道が楕円であるとうまく当てはまることに気付く。
    17世紀、ガリレオがコペルニクスの説を継承する形で地動説を提唱する。だがその後、宗教裁判に発展したのは周知の通りである。

    天文学が悪戦苦闘していた頃、一方で発展していたのが錬金術だった。先ほど触れた天文学者のティコ・ブラーエは、また錬金術にも強い関心を示していた。ティコの知識は16世紀前半のパラケルススによるものだった。
    パラケルススは元々医学者だったが、ギリシャ以来の体液バランスが崩れることにより病気になるとする考え方に異を唱えた。パラケルススは、外界からなんらかの「種子」のようなものが体内に入り込むことで、よいものと悪いものが生じ、悪いものが病気の原因となるとした。
    こうした現象は地中でも起こっており、「種子」が地中に入って成長し、生じたよいもの(=純粋な金属)を抽出することが可能であるとしたのが錬金術である。
    言うなれば「自然魔術」だが、遠隔的に作用する力があるとするのは、当時の「常識」からは荒唐無稽とも言えなかった。
    パラケルススは多くの追随者を生んだ。彼らは、さまざまな事象の記録を蒐集していった。一見、現代科学とは遠いようではあるが、こうした知識が蓄積されたことは、後の科学の発展にも寄与していた。
    フランシス・ベーコンは、実験研究という考え方でこうした記録を扱う方法論を提唱し、後世の研究への道を拓いた。

    18世紀のニュートンは近代科学革命の総仕上げを行う。
    ニュートンは科学史上の巨人だが、その大きな発見の1つ、「万有引力」の概念が生まれる陰には、実は錬金術があったのではないかという説が有力視されてきている。ニュートンが、一時期、錬金術に傾倒していたことはよく知られている。当時、宇宙には「エーテル」という物質が満たされており、力はその移動を通して伝わると考えられていた。ニュートンの万有引力説は、力が遠隔的に働くとする。この発想はむしろ、当時のトレンドに即しているというよりは錬金術的である(実際この点から、魔術的自然観の復活とも非難されたという)。

    ニュートン以後、ラボアジェによる燃焼理論、ドルトンの原子論を経て、近代の化学の礎が築かれる。
    数学を用いて、光や電流、熱、電磁波などの物理的事象を説明する数学的実験物理が形作られていき、古典物理学が成立していくのは19世紀のことである。ファラデーは電気と磁気に関する多くの実験を行った。
    20世紀のアインシュタインの登場により、古典物理学は完成し、相対性理論が誕生することで、物理学は新たな時代を迎える。

    本書では、有機化学、量子力学、原子物理学、巨大科学までを追っている。
    興味のある方には有意義な読書となることだろう。

    第一章のタイトルが「西洋科学の精神」とされているが、これが実のところ非常に重要なのではないかと思う。さまざまなものが積み重なって現代科学となってきているわけだが、その時代ごとにわかっていないこともあり、開発されていない技術もある中で、手探り状態で仮説を立てて、それを証明しようとしていくわけである。
    これは正しそうだが本当に正しいのか、突き詰めて考えていこうとする姿勢こそが、「科学」という学問の源だろう。誰かが提唱した理論を知ることで満足するのではなく、生じた疑問を丁寧に検証し、ありうる可能性を考察していくことが「科学」の基盤なのだ、ということが、科学史から読み取れるように思う。

  • 超圧縮された「科学史」。

  • 本書は、冒頭のドイツ人医学者、ベルツの印象的なスピーチから始まる。「私の見るところでは、西洋の科学の起源と本質の関して日本人では、しばしば間違った見方がとられているように思われます。日本の人々はこの科学を、一年にこれだけだけの仕事をする機会であり、どこか他の場所へたやすく運んで、そこで仕事をさせることのできる機械であると考えています。これは誤りです。西洋の科学の世界は決して機械ではなく、一つの生命なのでありまして、その成長には他のすべての姓名と同様に一定の気候、一定の大気が必要なのであります。」このスピーチに本書で作者が述べたかったこと全てが詰まっていると感じる。科学の成長は、時代背景、特にその時代の哲学感に影響を受けてきた。特に、第二次世界大戦時期の原爆の開発と、世界の動向が印象的だった。
    もしあの時代に、原爆の開発がなされていなかったら、広島に原爆は投下されていなかっただろうか、と考えると、タイミングというものの不思議さに恐ろしさを覚える。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

東京大学大学院総合文化研究科教授。科学史家。

「2010年 『〈科学の発想〉をたずねて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

橋本毅彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×