- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784903908250
作品紹介・あらすじ
中国はどういうふうに「苦しんでいる」のか。それがこの本の全体に伏流する通奏低音的なテーマです。無数のリスクファクターを抱え込んだ、前代未聞の巨大国家の統治に中国人はどんなふうに苦しみ、ガバナンスの維持のために創意工夫を凝らしているのか。僕はそれを知りたいと思いました。―増補版のための解説より―
感想・レビュー・書評
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・中国のことを考えるときは、彼らと我々の抱え込んでいるリスクのスケールの差を感情に入れる必要がある
・近現代史を通して、中国人は「やっぱり中体西用」を思っている可能性が高い
・中華思想は、ナショナリズムではない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2007年に刊行された「街場の中国論」の増補版。2011年刊行。Ⅱ講義篇は、「街場のアメリカ論」に続く、神戸女学院大学の大学院で行った2005年の講義を纏めた、待場シリーズの第二弾。「日本国外でもリーダブルな中国論」、「中国人が読んでも「なるほど、そうか……」と納得できるようなもの」、「日中の世界像の〈ずれ〉を中心的な論件にした中国論」を目指した書とのこと。後から付け足されたⅠ街場の中国論の方が、時事ネタを扱っていて今読むと古臭い感じがする。
著者の父親・義理の父親は、いずれも先の戦争で中国に恩義を感じ、戦後日中友好に尽くした人物だったとのこと。このためか、著者は中国の反日政策や乱暴な国内統治に寛容というか、肯定的な理解を示している。
著者によれば、中国の伝統的な中華思想は、中心部=中華から発信する「王化」の光があり、それが届かないところ=周縁部には「化外の民」(北狄、南蛮、東夷、西戎)がいて緩く臣従し、境界線を定めずにその全体を「王土」として曖昧なまま帰属させる、というもの。そして、「伝統的な中華思想を受け継ぎ、統治の基本理念を「王化」戦略においている」現代中国に対して、その「王化」ルール、すなわち華夷秩序に付き合うのが日本の国益にかなう、と説いている。
このように考えれば、尖閣諸島を巡る国境問題は曖昧なままでよく、また形式的に隣国に敬い従って入れば、隣国の圧力を脅威に感じる事もなくなる、ということになる。そして日本がこのようなポジションを取ろうとしたときの最大のネックは米国だという(米国のアジア戦略は、日中、日韓、中韓に適度な緊張関係を維持すること)。
中国をアジアの盟主として奉るというのは、さすがに心情的に抵抗感あるけれども、過去の歴史を振り返ってみてそれがアジア地域の安定に最も有効な手立てだとすれば、そのような戦略も「アリ」なのかなあ。何れにしても、これまで読んだことのなかった新鮮な対中国論だった。 -
今月は読書に集中できなかった。
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日本の地理的な立ち位置を思うと、中国を勘定せずに歴史や経済、政治を考えることはできない。その中国の行動原理を私たち日本人はしばしば理解できないが、それを安易に"嫌中"としてこき下ろすのではなく、中国の行動原理は何か?中華思想とは?という歴史的な変遷から考えている。中華思想や儒教をよく知らずに、中国と向き合うのはあまりに幼稚だと自戒の念も込めて私は思う。
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日本人の「嫌中国論」は日本頽落の証。中国が日本と違うから嫌いと言うのは言っても仕方のない話。相手は14億もの国民のいる国。そもそも日本とは違う国。冷静に考えれば中国がこの先、今の日本ほどに政治的・経済的に安定した国になることは困難。中国の統治者は失敗したら共産党独裁の瓦解を招くという背水の陣にあり、残忍なほど冷徹にならざるを得ない。日本は失敗してもせいぜい政権交代と、負けしろが広い。日本には復元力があるが、中国にはそれがない。巨大国家の中国は統治に苦しんでいる。
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中国の事情について自分なりに腹落ちした。あってるかどうかはわからないけど。
極東は軽く仲悪いくらいがアメリカとロシアにとってパワーバランス的にちょうどよい。
各国は自国内をまとめるためにナショナリズムを利用していて、現状、軽く仲悪いくらいでおさまっている。
ということになるかなあ。現状維持ってむずかしいと思うけど、それができれば最善ということかしら。 -
2011年3月3日 初、カバスレ、帯付。
2014年3月12日、津BF -
あえて国境を定めようとしない中華思想と国境を定めようとする周辺国。あえて今のままでいいじゃんと棚上げする中国と今決めようとする周辺国。そういった前提に立つと色々なことがふに落ちた。今後、日中間で起きることをこの本に書いてある考えで捉えて考えるのも面白いと感じた。
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広い国、中国を統治するというのは何と大変なことか。農民が飢え、地方にカリスマ的指導者が出現した時、7億人とも言われる農民&低所得層が動き出したエネルギーはもう誰にも止められない。その恐怖は日本から見れば比較にならない。こうした立場の違う中国が使う”対日統一戦線”は統治が危ない状況に陥った際、国民を一致団結に向かわせる唯一無二の合言葉だと理解が必要なのですね。(日本人としては嫌だけど・・・。)国益を守るのですから単純にはいきませんよね。二重でも三重でも何枚舌も使って、ようやく国民を守っていけるのだな。中華思想の鷹揚さも台湾と尖閣の問題で理解できた気がします。東アジアがEUのように過去の歴史を克服して連携を深めることが出来ない理由も「やっぱりな」と思いました。シェール革命でエネルギー問題を克服した超大国の次の標的をしたたかに読むことが大切ですね。