- Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
- / ISBN・EAN: 9784904816011
感想・レビュー・書評
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夏葉社の本、1冊目(読んだのが、という意味で)。
当時の文学者たちに愛された、東京大森の古本屋「山王書房」と、その店主によるエッセイ、32年ぶりの復刊。
文学者との交流、本との出会いと別れ、東京の古本屋街を巡ったあとの若いタクシー運転手との対話、亡き父との想い出、葬儀のときの想い出・・・。
どれもが、古き良き時代の空気感であふれていて、滋味ある文章と相まって、ゆったりと読み進むことが出来る。
雨が降ったので買った本を喫茶店に預けるエピソード、「スワンの娘」がいいなぁ。
私も、田舎から東京に出てきた当時、授業の後でいるもので、大学に持っていくには荷物になるからと、途中の乗換駅の売店のおばちゃんに、「ちょっと預かっておいてもらえませんか?」とお願いしたことがある。まだ、そんな雰囲気が東京にも残っていると思っていたのだろうけど、けっこう意外な顔をされたなと、今でも思い出す。
この作者の時代、昭和4,50年代は、ごく普通の行為だっただろうな。
とにかく、何かの役に立つとか、なにか時代を象徴しているという内容ではない。なんてことのない日常の点描なのだが、忘れがたい風景が行間から立ち上がる。なんとも味わい深い。 作者もこう記す。
「それは私の人生には無用なものかも知れない。が無用なものの中にこそ、言い知れぬ味わいがひそんでいるものだと思う。」
無用の用、ではないが、なにかと情報過多のこの時代にこそ、見直されるべき価値観を垣間見た気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
書と書物、作家の織りなす世界観や人柄への愛情、思い入れを強く感じ、読みながら、自然と微笑んでしまう。
著者は朗らかな方だったのかなと、勝手に想像しながら、お酒が入った後の唄歌いや踊りを想像する。
古本を介した人との巡り合わせ、記憶の連なりが温かく、満ち足りた心持ちになる書物であった。 -
日記集みたいな形式なので、後半少し冗長感が。時代ズレも、読みやすい
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本好きの人が好きな古典とも言える一冊。
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装丁のもつ雰囲気が、すごい。
オーラを放ってる。 -
ピース又吉さんのおススメ本で読みました。
よく知っているところがでてきて嬉しかった。 -
不忍ブックストリートで版元の方が売っておられたので、何気なく買ってみたのだけど、飄々としたおかしみのある語り口が実に味わい深く、いやこれは拾い物でした。長らく絶版になっていて復刊が待たれていた本だと後で知り。こういう思いがけない出会いがあるから古本はいいよね。