眠れ (群像社ライブラリー 2 作品集「青い火影」 1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784905821410

感想・レビュー・書評

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  • 「倉庫Ⅶ番の冒険と生涯」「眠れ」「ヴェーラ・パーヴロヴナの九番目の夢」の3作は非常に読みやすく、解説を読むとさらに面白みが増した。一方で、「中部ロシアにおける人間狼の問題」などは難解であった。いずれにせよ、ペレストロイカ前後からのロシアの空気感に触れられる作品集である。

  • ペレーヴィンの短編集。ロシア人の文脈を持たない私には、動物が出て来る話が最も面白く思われた。解説によると、視点の変換によって物事を揺るがす手法を、ロシア・フォルマリストは「異化」と呼ぶそうだけれど、この点が日本人にも共感できる部分なのだと思う。最初の2本、「倉庫Ⅶ番の冒険と生涯」と「世捨て男と六本指」が最も面白く思えたのもそのためだろう。表題作の「眠れ」「ヴェーラ・パーブロヴナの九番目の夢」などを面白く読むには、ロシア社会と歴史をロシア人のように知る必要があるようだ。ともあれ、事実を変質させてファンタジックに表現することの面白さは、意欲を掻き立てられるものがある。

  • ラジオ「まいにちロシア語」で『青い火影』が紹介されており、興味を持って購入。

    解説でも述べられていたように、そこに確固としてある現実や、社会的、哲学的な問題を、幻想的でユニークな題材を用いて描く、魅力的な作風だと感じた。
    作者のパイロット経験から来ていると考えられる、視点が上下する構図が多く用いられるのもダイナミックで楽しい。

    日本のいち読者である私にはロシア、ソビエトに関する知識があまりにも足りず、政治的、文化的背景を調べながら幻想の世界を読み進めるのはかなり大変だったが、むしろ「これは何が言われているのだろう」と知りたくなる足掛かりとして良かったのではないかと思う。

    文体は読みにくさもあり、哲学と幻想の難解な世界ではあるが、どの作品もテーマはおそらくシンプルである。良質なミニシアターの短編映画を観たような、精神的な充足感が得られた。

  • 何気なく手に取ったら思いがけなく面白い本だった、ラッキー。倉庫、鶏舎、人間狼、マルドング、表題作も良かった。ソ連崩壊時のごちゃごちゃ・混乱・粗雑な感じ、ロシアの重厚さ、ドライな現代感覚、リリシズムなどが渾然となった魅力的な幻想世界。

  • なじみがないSF小説たちである。サクサクとは読めない。だが、脳をぐいぐいと押す貴重な作品たちに出会えてよかった。

  • 「あたしはね、随分前からこの事について考えてきたのだけれど、どうしても分からなかったのよ。あんたがこれから言おうとしていることくらい、わかってるわ。わたしたち自身が自分たちの周りに世界を創っているのであって、わたしたちがこのトイレにいることの原因は、わたしたち自身の魂だって言うんでしょ。それから、どんなトイレも本当は存在しないんだ、存在するのは内的な意味の外的対象に対する投企だけであり、悪臭と思われるものも実は、ただ単に魂の外部化された組成にすぎないと言いたいんでしょう。それから、ソログープを引いて何か朗唱するのよ……」


    『オモン・ラー』が良かったので意気揚々と読み始めたのですが、うーむ、玉石混淆と言った印象。お、イイネ、と思うものと、さっぱり分からん!というものに綺麗に二分されるなあと。
    あらすじで紹介される「ゴスプランの王子さま」は、元ネタとなったゲームを知らないのもあるだろうけど、さっぱり分からなかった(色々感想を辿っていると訳者もその元ネタについては知らなかったようで、解説で「星の王子さま」との比較を試みているけれど、「星の王子さま」は原題が違うのだからどう考えても関係ないのはわかると思うんだけどね)
    逆に、特に良かったのは「中部ロシアにおける人間狼の問題」。今だったら流行りの「人狼」と訳するのかも知れないなどと思いつつ、しかし、なぜかこの小説にどことなくフェティッシュなにおいを感じるのは自分だけなのでしょうか。
    他の作品も買ってあるので読みますが、ちょっとこの打率だと不安かも。

  • [ 内容 ]
    コンピュータゲームの世界と一体化した中央官庁に働く職員、自我の目覚めを経験して苦悩する倉庫、夢の中で生活する学生、死の意味をめぐって怪談を続ける子供たち…。
    この時代に存在するものすべてを哲学的幻想で包み込み、意識のまどろみの中で変身話から東洋の宗教思想まで味わいつくす作品をつぎつぎと生み出すロシア新世代の作家ヴィクトル・ペレーヴィン。
    20世紀の終りに現われた異才の浮遊する世界。

    [ 目次 ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • ニワトリの話が下克上カプっぽくて萌えます。

  • 懐かしいPCゲーム“プリンス・オブ・ペルシャ”とソ連時代のゴスプランがまぜこぜになった世界での官僚社会「ゴスプランの王子さま」は面白い。あのかしゃかしゃいうはさみ、ぐらつく石、えびぞりジャンプ、読めばそれとわかる文章。その中で働く青年。面白い短編集だ。

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著者プロフィール

1962年生まれ。現代ロシアを代表する作家。『ジェネレーション〈P〉』『汝はTなり』『チャパーエフと空虚』『虫の生活』などが訳されている。

「2018年 『iPhuck10』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ヴィクトル・ペレーヴィンの作品

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