- Amazon.co.jp ・本 (686ページ)
- / ISBN・EAN: 9784906681280
感想・レビュー・書評
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著者は1949年函館に生まれ新潮小説新人賞・芥川賞・三島賞の候補に何度も挙がりながら無冠のままで作家生涯を1990年41歳で自殺し閉じた。
本書は作家の死後にクレインから出版された作品集ですが、現在文庫化されている小説や短編集と未収録の数点が綴られた物で著者の作品に頻繁に登場する海の色をモチーフにした様なブルーの装丁で項数も多く読み応えのある1冊です。
作品に共通しているのは地味で陰鬱で舞台が沿岸のうらぶれた田舎街である事が多く青春時代の主人公と男友達や女性達との僅かな時間を通して大層な意味も無い日常を綴っているのだが、ただ性別問わず親や友人に対しての思い入れは強く変わった形で表現される愛や性を通して濃密な関係を創るかと思うとそうでもない様なクールな書き方が味わい深く著者の作風に引き込まれる所以です。
地味で陰鬱だけど何かが輝いて生きることの意味、皆小さな存在で小さな世界で一生懸命に何かしら輝いているのだと感じさせられる作品です。
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名作揃いでほんと贅沢ですばらしい作品集なんだけど、
それとは別で親しかった先生方が佐藤泰志さんについて書いた「佐藤泰志作品集に寄せて」という付録もよかった。みなさんやや距離感をもって語っているけれど植木畑で首を吊って亡くなったという事実があるのでとても心に重くくる。41歳で亡くなったのはやはり残念だ。
この作品集はやや入手難になってるようだけど、たくさんのひとの手に届いてほしい。 -
酒とタバコと男と女。
希望が全く無いような状況だからこそ希望が見える。 -
この作品集を読んだ後で函館に行った。夕方、五稜郭タワーに登ったとき、雪に覆われた街に夕日が差し込み、あたたかな陽の光に数十分包まれた。しばらくすると闇が広がり、街の灯りがぽつぽつと灯り、寒さのせいか遠くにかすみ、揺らめいて見える。その情景を目にした時に、この小説に描かれた人々はこの地で懸命に生きていると感じられた。普段は日常に溶け込んでいて見えないが、毎日をもがきながらもなんとか生きる、隣にいる人について書いた作品の数々が胸に残る。一生抱えて生きるだろう作品集。
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この本自体取り寄せてビックリ。700頁弱、小さい字、見開きで上下に分かれて記載。こんな本最近ないよね。
昨年が没後20年ということでさここにきて盛り上がってます?調べてみると、海炭市叙景、そこのみにて光輝く、オーバーフェンス、きみの歌はうたえる、草の響きと5本も映画化。凄い。生存中は多分コアなファンだけに読まれてたのだろうと思うのに。
どの作品にも、世の中の底辺でのたうつやり切れない若者の姿があると思う。汗、タバコ、酒、セックス。でも皆そこでしっかり生きてるんだよね。本の中にエネルギーが膨らんでる。
読み応え十分。エッセイは著者の内側が透けており、彼の体験した出来事がそこかしこに著作にみられること発見。映画化中3本は収載。
映画の暗さから興味を持って
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2021/6/28
出会うべき時に出会ったのだ、と、思いたい。 -
染みてゆくような文章を読む。何とか崩れないようにとそっと手のひらで受け止めようとするのだが、それは手に触れた瞬間にやはりを形を失い、さらさらと砂のように指の間をこぼれてゆく。後には何も残らない、とその時には思うのだが、皮膚を通して身体の中に入り込んだものが不治の病の病原のように静かにゆっくりと体中をめぐって感染を広げてゆき、気付くと身動きができなくなっている。地面が急に柔らかくなりその場に静かに深く沈んでゆくような、あるいは徐々に身体がこわばり石になってしまうのを体験しているような、何ともやりきれない重苦しさが身を包みこんでゆく。だがそれは何かに魅せられたような感覚でもあって、抗いようのない麻酔のように脳にも染み込んでくるのだ。どこまでも感覚が痺れて意識が沈み込んでゆくような恐ろしさを覚えつつも、うっとりとした眠気に襲われる。それを振り払うことは返って気分の悪い結果を招くことは解っている。だが、この悲観した人物たちの群れに取り込まれてゆくことは、あちら側へ漂っていくことを意味しないだろうか、とそんな恐れも同時に覚える。緊張感を強いる本。