世界のすべての朝は (伽鹿舎QUINOAZ)

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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784908543074

感想・レビュー・書評

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  • 文庫本でありながら、すごく装幀が凝っていて見開きページのレイアウトも美しくて気に入っている。

    主人公はバロックの作曲家でありヴィオル(ヴィオラ・ダ・ガンバ)の名手であるサント・コロンブ。もっとも、20世紀になって再評価されだした謎めいた人物であり、史実はよくわからない。作者パスカル・キニャールはその謎にむかってフィクションの投網をなげる。

    愛する亡き妻が、サント・コロンブが楽器の練習に使っている小屋にときどき亡霊として現れる。彼が生きる意味は、もはやその亡霊を待ち、会うことでしかなくなろうとしつつある。彼は家禽たちと、二人の娘とともに、静かな生活を送っている。
    そこへ、これも実在の音楽家マラン・マレが、弟子入りを志願すべく、サント・コロンブ宅を訪れる。

    本作にひたすら流れる静けさがなんとも良い。音楽の裏側である沈黙ではなく、静けさに満ちた作品。それは恋人たちのささやきだったり、ヴィオルの即興演奏だったり、鶏の鳴き声だったり、小川のせせらぎだったりする。

  • 伊藤計劃の名前が帯に書かれていたので購入。
    前時代的な儚さを持った物語。
    翻訳が美しいのも世界観を損なわずに構築するのに寄与している。
    何が起きたとか、何を起こすだとかではなくて、美しさを目指した、少し違うかもしれないけれども純文学のようなイメージ。

  • 名前は知っていたが、読んだことはなかったパスカル・キニャール。伽鹿舎というこちらも聞いたことがない版元から復刊されていたのを、偶々、見掛けて購入した。帯に伊藤計劃の名前が載っていたのも理由のひとつではある。
    さて、本書は、ストーリーだけ追えば、ちょっと吃驚するほど前時代的なメロドラマだ。しかしこの、簡単に壊れてしまいそうな繊細さやナイーブさには得がたいものがある。そういえば伊藤計劃の『虐殺器官』や『ハーモニー』も、非常にナイーブなものを内包していたように記憶している。時代も作風も異なる2人の著作に、面白い共通点があるものだ。
    他の本も読んでみたい……と思って検索したら、水声社から『パスカル・キニャール・コレクション』というのが刊行されていた。これで大半が読めるようで良かった。

    さて、伽鹿舎は、九州の版元で、基本的に九州でしか出版活動を行っていないようだ。通販や一部書店であれば九州外からも注文が可能だが、一般の書店で売られるのはHPで『全国解禁』と書かれているタイトルに限られる。で、そのHPに、佐藤亜紀『戦争の法』が載っているではないか! 旧版を持ってはいるが、全国解禁になって欲しいので、九州の人、ヨロシクw

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著者プロフィール

1948年、ノルマンディー地方ユール県に生まれる。父方は代々オルガン奏者の家系で、母方は文法学者の家系。レヴィナスのもとで哲学を学び、ガリマール社に勤務したのち、作家業に専心。古代と現代を縦横無尽に往来し、時空を超えたエクリチュールへ読者を誘う作品を精力的に発表しつづけている。

「2022年 『楽園のおもかげ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

パスカル・キニャールの作品

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