- Amazon.co.jp ・本 (107ページ)
- / ISBN・EAN: 9784908827181
作品紹介・あらすじ
『楽園、ここにあります』
谷郁雄の詩に吉本ばななの写真、寄藤文平の絵
身近な楽園にきょう、いきませんか
ワニ型の横長製本が手に馴染み、ページを繰るほどに愛着がでてくる
楽園へのパスポート
私たちが子どもの頃に思っていたいちばん大切なこと、大人には見えなかったけれど自分にはよく見えていたことが、
そのままの形で保存されて谷さんの詩の中には入っている。
吉本ばなな「まえがき」より
ばななさんから少しずつ送られてくる写真を見るのは楽しい時間だった。あるときは猫だったり、あるときは花だったり、
またあるときは食べ物だったり異国の風景だったり。僕も新しい詩が書けると、それをばななさんに送って読んでもらった。
谷郁雄「あとがき」より
本文より
[ 星座 ]
いつも
どこかで
誰かが誰かのことを
思っている
人は一人で
生きられないから
一人ひとりの
小さな光を集めて
大きな星座を作り
この
寂しい宇宙の
暗闇の中で
生きていく
互いの光で
照らし合い
励まし合って
迷子の星が
生まれないように
見守り合って
[ くちぶえ ]
誰かが
くちぶえを吹きつつ
歩いてゆく
ぼくが
よく知っている歌
昔のアニメの
テーマソングだ
くちぶえの
上手なその人も
同じ時刻に
テレビにかじりつき
この世の悪と
戦っていたのだ
お母さんが作る
カレーの匂いが
ほのかに漂う
夕暮れ時の
小さな家の中で
[ 同じ空 ]
一人ひとり
バラバラに
生きているようでも
どこかでつながり
世の中を動かしている
たとえば
下町の小さな工場で
あなたが作った
2Bの鉛筆で
ぼくは毎日
詩を書いている
あなたは
そんなこと
知らないで
毎日
鉛筆を作り続ける
仕事のあとの
缶ビールを楽しみに
あなたと
ぼくは
同じ時代に生きながら
一度も
出会うこともないだろう
ふと
子供に戻って
同じ空を
見上げることが
あるとしても
感想・レビュー・書評
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ほっこりする
詩集と絵
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伊豆にはバナナワニ園というバナナとワニの楽園がある。
バナナタニ園はその楽園をもじったタイトルの詩集である。
中の詩は、楽園、というより、日常という感じ。
日常をていねいに切り取った詩は、日常に潜んでいる楽園を浮き上がらせる。
なるほど、そうであれば、この本の詩もよしもとばななさんの写真と谷郁雄さんの詩の楽園である。
ちなみに、わたしは『同じ空』という詩の
「たとえば
下町の小さな工場で
あなたが作った
2Bの鉛筆で
ぼくは毎日
詩を書いている」
という一文が好きだ。
たとえば
ベトナムのどこかに工場で
誰かに組み立てられた
キーボードで
私はその感想を書いている。 -
2018年12月10日読了。