バナナタニ園

  • ポエムピース
4.17
  • (3)
  • (2)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 27
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (107ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784908827181

作品紹介・あらすじ

『楽園、ここにあります』

谷郁雄の詩に吉本ばななの写真、寄藤文平の絵
身近な楽園にきょう、いきませんか
ワニ型の横長製本が手に馴染み、ページを繰るほどに愛着がでてくる
楽園へのパスポート


私たちが子どもの頃に思っていたいちばん大切なこと、大人には見えなかったけれど自分にはよく見えていたことが、
そのままの形で保存されて谷さんの詩の中には入っている。
吉本ばなな「まえがき」より

ばななさんから少しずつ送られてくる写真を見るのは楽しい時間だった。あるときは猫だったり、あるときは花だったり、
またあるときは食べ物だったり異国の風景だったり。僕も新しい詩が書けると、それをばななさんに送って読んでもらった。
谷郁雄「あとがき」より


本文より

[ 星座 ]

いつも
どこかで
誰かが誰かのことを
思っている

人は一人で
生きられないから
一人ひとりの
小さな光を集めて
大きな星座を作り

この
寂しい宇宙の
暗闇の中で
生きていく

互いの光で
照らし合い
励まし合って
迷子の星が
生まれないように
見守り合って


[ くちぶえ ]

誰かが
くちぶえを吹きつつ
歩いてゆく

ぼくが
よく知っている歌
昔のアニメの
テーマソングだ

くちぶえの
上手なその人も
同じ時刻に
テレビにかじりつき
この世の悪と
戦っていたのだ

お母さんが作る
カレーの匂いが
ほのかに漂う
夕暮れ時の
小さな家の中で


[ 同じ空 ]

一人ひとり
バラバラに
生きているようでも
どこかでつながり
世の中を動かしている

たとえば
下町の小さな工場で
あなたが作った
2Bの鉛筆で
ぼくは毎日
詩を書いている

あなたは
そんなこと
知らないで
毎日
鉛筆を作り続ける
仕事のあとの
缶ビールを楽しみに

あなたと
ぼくは
同じ時代に生きながら
一度も
出会うこともないだろう

ふと
子供に戻って
同じ空を
見上げることが
あるとしても

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ほっこりする
    詩集と絵
    可愛い

  • 伊豆にはバナナワニ園というバナナとワニの楽園がある。
    バナナタニ園はその楽園をもじったタイトルの詩集である。
    中の詩は、楽園、というより、日常という感じ。
    日常をていねいに切り取った詩は、日常に潜んでいる楽園を浮き上がらせる。
    なるほど、そうであれば、この本の詩もよしもとばななさんの写真と谷郁雄さんの詩の楽園である。

    ちなみに、わたしは『同じ空』という詩の
    「たとえば
    下町の小さな工場で
    あなたが作った
    2Bの鉛筆で
    ぼくは毎日
    詩を書いている」
    という一文が好きだ。

    たとえば
    ベトナムのどこかに工場で
    誰かに組み立てられた
    キーボードで
    私はその感想を書いている。

  • 2018年12月10日読了。

  • これは、バナナ氏の詩集だと思った

    書いている人、そうではないのだけれど、まるで手品で入れ替わったかのように、そう思った

    たくさんの言葉は要らなくて
    それよりも見過ごされてしまった言葉を広い集めたような

    語り尽くされたのではない
    でも全く斬新なわけでもない

    どこにでもありふれていて
    でも見落としてしまいそうな
    とても大切なことなのだけれど
    ふとした時には忘れていたような

    この世界に触れた
    なんとなくとっておきたい断片を
    言葉が橋のように繋いでいく

    地面は地続きであるのはあたりまえ
    でもそのあたりまえが、
    ずっと遠くの海にまで広がっているなんて
    どうして分かるだろう

    見えるかどうかではなくて
    心が最初から知っていたことを
    教えてくれるようで

    新しいのに、懐かしい

    そうして驚きと発見の風景を巡る旅をして、あとがきを読んで

    あ、違うんだった、て、思い出す

    ばなな氏ではなかったんだ、て

    まるで手品の種明かしを見るように

    どこからどこまでがそうなのか分からないくらい解け合っていて


    その驚きもまた、嬉しい。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

1955年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。90年『死の色も少しだけ』(思潮社)で詩人デビュー。93年『マンハッタンの夕焼け』(思潮社)がBunkamuraドゥマゴ文学賞候補に。詩集に『自分にふさわしい場所』(写真・ホンマタカシ)、『定員オーバー』(写真・長島有里枝)以上、理論社。『実況中継』(写真・浅田政志 実業之日本社)、『空を見上げる』(写真・石川直樹 武田ランダムハウスジャパン)、『君のとなりに』(写真・谷今日子 角川学芸出版)、『思春期』(写真・青山裕企 ピエ・ブックス)、『無用のかがやき』(写真・リリー・フランキー 実業之日本社文庫)、『透明人間⇄再出発』(写真・青山裕企 ミシマ社)ほか多数。

「2011年 『谷郁雄エッセイ集 日々はそれでも輝いて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

谷郁雄の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×