子どもの貧困と社会的排除

  • 桜井書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784921190651

作品紹介・あらすじ

貧困家庭の子どもから見える、家族、学校、友人関係、そして自分の将来。「流行についていけない。」「放課後友だちと遊ぶお金がない。」…現代の消費社会のなかで、いじめや排除と隣り合わせに生きる子どもの貧困経験を、子どもに直接インタビューすることで得られた生の声をとおして浮き彫りにする。

感想・レビュー・書評

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  • <シラバス掲載参考図書一覧は、図書館HPから確認できます>https://libipu.iwate-pu.ac.jp/drupal/ja/node/190

  • 子どもだけでなく大人も含めた「貧困」問題は、「大きな政府」と「小さな政府」のどちらを取るかという問題と重なる。更に「財政再建」か「福祉優先」かという問題とも。
     サッチャー、ブッシュと続いた、「小さな政府」への歩み(我が国では小泉政権と重なる。)は、「財政再建」を最優先に、「自助努力」「自己責任」を押しつけ弱者を切り捨てる政策でもあった。
     これは、財政再建には一定の効果があるかのように見えたが、それ以上に、階層固定、階層間の格差拡大をもたらし、社会不安の増大を招いた。
     本書は、貧困家庭に育つ子どもの実態を調べその問題点を浮き彫りにしたもの。類書、同様な調査は今までにもあるが、本書の特徴は、従来のような大人の目を通して、大人になってからの自分のフィルターを通して(子ども時代を振り返って)の調査ではなく、今の(現在進行形の)子どもたちに直接インタビューをしている点だ。 
     「流行についていけない。」「放課後友だちと遊ぶお金がない。」…現代の消費社会のなかでは、友だちとごく普通に付き合うためにも金がいる。それらが工面できず、いじめや排除と隣り合わせに生きたり、犯罪に走ったりする子どもの貧困経験を、子どもへの直接インタビュから生き生きと描き出す。
     翻訳書なので、データは全て外国でのものだが、得られた結果は、今までの調査と大差はない。

  • この数年間に日本でも指摘されるようになった子どもの貧困。しかし本書を読むと、私たちはまだ、非常に奥深い問題の表面をなぞっているにすぎないのだと感じる。
    イギリスにおけるこの研究の最大の特徴は、子どもたち自身の言葉を通して、ますます商品化がすすむ社会において貧困家庭に生きることが、学校生活や友だちとのつきあいにどのような制約をもたらしているか、また子どもたちが自らや家族がおかれた環境にどう対応しようとしているかを明らかにしていることだ。たとえば、友人たちの間で「適切な服装」ができないことがいかに大きな恐怖となっており、そのために子どもたちがどんな努力をしているかという事実を知ると、「今の子どもたちはぜいたくのためにアルバイトをしている」というお説教がどんなに的外れか、よくわかる。
    子どもの貧困は、大人の貧困に付随する問題や、その要因としてしか扱われてこなかったと著者は指摘する。しかし子どもたちは受動的に貧困の影響をうけるだけの存在ではない。彼らはそれぞれ一個の主体として自らの状況を理解し、あきらめを学んだり、自ら稼ごうとしたり、親を思いやったりしているのだ。現代社会においてはもはや労働者階級の子どもたちは労働の世界によって包摂されえず、消費が最大の社会的包摂の経路となっているという指摘も重要だと思った。
    本書は子どもの貧困の経験に深い洞察を与えてくれるだけでなく、政策的インプリケーションも豊かだ。子どもの貧困は親の失業やひとり親家庭によって必然的に起きるものではなく、政策によって引き起こされもし、根絶もできるのだ。先進国で唯一、再分配の逆機能が指摘されている日本は、すぐにイギリスなどの経験に学んでラディカルな政策転換を行う必要がある。そのためにも社会的排除の理解が不可欠だ。

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