国家の崩壊

著者 :
  • にんげん出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784931344112

作品紹介・あらすじ

佐藤優に宮崎学が聞く!!耐震強度偽装にライブドア事件、日本の国幹が腐敗し、融解を始めている。ソ連崩壊過程に日本の行く末を見る。

感想・レビュー・書評

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  • ソ連の崩壊 そして ロシアの形成。
    この本を読みながら ソ連 および ロシアのことを
    ほとんど知らないことを痛感した。

    佐藤優のその当時の現場での見聞きしたことを、
    崩壊と絡めて 語っていくのは 分かりやすく
    臨場観があった。ちょっと、オーバーな部分もあるが、
    スターリン、ブレジネフ、ゴルバチョフ、エリツィン、プーチン
    のそれぞれの評価が 歴史の流れの中で しっかりと
    とらえられていた。

    宮崎学は言う
    『政治的なるものの本質を友と敵との関係に見た。
    やつは敵だ。敵は殺せ。というのが,政治の最初にして最後の言葉だというのである。
    ー コミュニケーション不完全症の自己完結型人間である小泉純一郎。
    ー 小泉劇場では、友、敵ではなくて、善玉、悪玉なのだ。
    ー リアリティのある政治を取り戻す。』

    ブルブリスは ソ連が崩壊したのは?
    『自己崩壊』という。
    『ゴルバチョフが権力の座についたとき、すでにソ連は崩壊していたんだ。俺の貢献はエリツィンにその現実を理解させたことだけだ。』

    ソ連の崩壊をなぜとめることができなかったのだろうか。

    宮崎学は言う
    『発達した社会主義とは,実は弛緩した社会だった。』

    1979年12月 ブレジネフは アフガニスタンに侵攻した。
    1982年 ブレジネフが死去。
    ⇒ アンドロポフ 1984年死去
    ⇒ チェルネンコ。1985年死去
    そして 1985年 ゴルバチョフ ソ連共産党書記長につながる。
    ゴルバチョフは 初めての 大学卒の書記長。

    佐藤優は言う
    『ブレジネフが今でもロシアの大衆に好かれている大きな理由は、
    彼がソ連を超大国にして、少なくとも戦争で自分たちが徹底的にやられる可能性をなくしたこと。』

    ブレジネフはいつも『肉は足りているのか』と聞いた。
    そのような生活感覚は ゴルバチョフにはなく、
    エリツィンにはあった。

    ブレジネフ から アンドロポフ、チェルネンコ と続き
    その後 ゴルバチョフに 権力が集中した。
    そのゴルバチョフの中には 
    どんな ソ連が イメージされていたのだろう。

    ペレストロイカ を始めるのだが、
    そのなかで、規律強化政策として
    反アルコールキャンペーンを行ったことが
    とても斬新である。
    ウオッカがなくなることで、砂糖がなくなり、
    ジャムがなくなり、オーデコロンがなくなり、
    靴クリームさえなくなる。それらはすべてアルコールにするために
    買い占められていた。
    結果として 1988年に 反アルコールキャンペーンは止まる。

    ゴルバチョフは 官僚的腐敗をなくそうとして
    そのようなことをしたのだが、民衆は 大きく 離れていった。

    社会主義は 資本家を認めない。
    資本家は 労働者から 搾取することになる。
    搾取をすることを認めないので、
    分配することができるシステムを 構築する。

    マルクスの資本論は 資本主義を 研究するのであって、
    社会主義経済社会に マルクスの研究は 必要がない。

    経済改革から 政治改革に移行する。
    それは 憲法6条の 共産党の指導を 廃棄すること。
    党から 国家への移行。
    そのことによって、ゴルバチョフは 大統領となる。
    党事務所より クレムリンでの仕事が好きだった。

    それぞれの民族が 主権を宣言する。
    ソビエト連邦を 抜けないままに。

    ゴルバチョフは 宗教のことが あまり分からなかった。
    ゴルバチョフは 理論で ソ連を 組み立てた。
    市民からは『おしゃべりはもういい。
    それよりも日々の生活をもう少し安定させてくれ』といわれた。

    エリツィンは 情理で ロシアを組み立てる。
    『腹一杯食べること、肉をたらふくに食べれるようにする。
    パンやタマゴを食べることができる。
    行列に並ばないようにする。
    いまでも 私の妻は 行列に並んでいる。』
    という 庶民的な話を うまくして 心をつかんだ。

    チェルノブイリ とは ニガヨモギ という。
    タルタルソース は 地獄のソース という意味だ。
    タタール人は 地獄から来た得体の知れない奴という意味だった。

    ロシア人は 反戦的な思考が強い。攻撃されたら防御する。
    自ら攻撃することが 嫌いだった。

    1991年 8月 クデーター未遂事件
         12月 ソ連消滅宣言
    1993年 10月 モスクワ騒乱事件
    で、ゴルバチョフから エリツィンに権力は移行した。

    エリツィンのもつ 政治的な判断力は その局面で
    発揮されて、プーチンに受け継がれた。

    中国が どのように崩壊するのか
    そのことを考える上で いい参考となった。

  • ブレジネフ体制末期からエリツィンによるプーチン後継者氏名までのソ連邦(ロシア)の政治の動き、社会状況について、まとめた本。外交官だった佐藤優氏によるマスコミの報道からは見えにくい、庶民の実感、政治家の思惑の解説に重きが置かれていて、当時の社会状況が理解しやすく解説されている。また、日本には馴染みの薄い中央アジアの民族問題に関する解説にもページが割かれていて、ロシア周辺にある複雑な民族問題についても理解が深められる良書。

  • ●内容
    ・ソ連国家を「崩壊」させたゴルバチョフと、彼をはめたエリツィン、という構図でソ連崩壊期の政治情勢を描く。
    ・ゴルバチョフが権力の座についたときソ連は既に破綻しており、エリツィンはその現実を追認。
    ・「計画経済による買い物行列」や「経済混乱期に台頭した新興財閥」など、経済情勢をめぐるエピソードも豊富で、読み物として興味深い。

    ●感想
    ・「アル中」エリツィンのイメージが見事にひっくり返った。
     彼にとってウォッカは政治的な武器で、一緒にウォッカを飲みながら、政治家や官僚の人相見をしていたという。

    ○「ジャンパー姿のゴルバチョフ」
    ・ソ連8月クーデターの終期、帰国するゴルバチョフを迎えるため、エリツィンはスーツ姿の部下を派遣。
     権力を崩すためにはまず権威を失墜させる必要があると知っていたエリツィンは、ゴルバチョフをあえて背広に着替えさせないで、権威を失墜させた。

    ○崩壊期のソ連経済
    ・よく「ロシアの新興財閥はソ連崩壊をきっかけに勃興した」とされるが、その内情を窺える。
    ・ソ連末期の状況として、共産主義国家として財産の「私有」は認めないが、共同財産の「個人使用」は認めるということがあり、これは実質的な私有制となった。
    ・91年のインフレ対策。21時に「明日0時をもって高額紙幣の流通を停止」と政府発表。これによりタンス預金は紙くずと化すが、これをうまく乗り切ったのがのちの資本家。
     彼らは自分あてに電子送金をし、全額を少額紙幣として取り返した。失ったのは手数料だけ。

  • ソ連崩壊の話。
    まだまだ知らないことがたくさんあります。

  • 最初から文章のものはかなり言葉を選んでお書きになりますが、対談を書き起こした文なのでちょっと違和感を感じました。あまり○○人はこうだからと断言されるといやだな。

  • ソビエトが如何に崩壊へのプロセスを歩んだのか、ソビエト崩壊後のロシアはどのような状況だったのか、時々系列では理解することができても、崩壊までのプロセスについてはあまり知る由がなかったので、その実状が綴られた本書はなかなか読み応えと発見のある内容でした。
    特にプレジネフ時代のソビエトが石油ショックの恩恵により潤い、豊かな生活を享受し、その後のゴルバチョフによるリストラを意味するペレストロイカにより規制が敷かれ禁酒法などロシアの生活に直に影響を与える規制によりソビエト崩壊のプロセスを歩み出したと看破した点は非常に参考となる。
    ゴルバチョフ政権のNo.2であったヤコブレフの提示した国家形態が現実となるのは本書にて初めて知った。エリツィンがロシア国民にとってどのような人物だったのか、エリツィンがどのようにして後継者であるプーチンを見出しサンクトペテルブルグのKGB長官から政界への道を切り開いたのか、現代ロシアに続くまでのプロセスを見事に描いた一書であった。

  • ブレジネフ時代のソ連が一番いい社会だった。
    米ソ関係がよかったのは、アメリカが共和党政権だったとき。反共政権の共和党は最初はソ連とぶつかるがそのうちに共産圏との棲み分けができるようになる。
    どの学部がソ連では一番出世に繋がったかというと哲学部。哲学部の中には科学的共産主義学科とううのがあって、そこを出ると共産党でも中央のトップに行ける。法学部はダメ。KGBくらい。
    黒パン、ジャガイモ、たばこ、ウォッカがなくなるとロシアでは暴動が起きる。
    ユダヤ人は大学入試でユダヤ人枠があった。5%。だから入るのが大変だけど入れた人は物凄く頭がよいから教授になるのは全員ユダヤ人になる。
    ゴルバチョフはクリスチャンだったから、宗教問題に非常に熱心に取り組んだ。
    タタール人というのは、もともと地獄から来たような得体の知れない奴という意味。

  • ソ連邦崩壊を宮崎学が問題提起し、佐藤がそれに沿った形で解説していく。とにかく面白い。
    国家がいとも容易く崩壊するとは驚きだ。これが日本で起きないとは限らない。ソ連崩壊はゴルバチョフが政権の座についたときから確定的だった。ゴルバチョフが思想を持っていなかった、共産主義を社会民主主義で取って代わり、他のヨーロッパにもそれを広められるのではないかと勘違いをしたのだ。
    一方のエリツィンは、ここぞと言うときには気が小さいが、ブルブリスという良きブレーンが居たために、政権の座につく。
    そして今、新たなロシアの立ち位置を固めるべく、プーチンが君臨する。
    ロシアが新たなアイデンティティを構築するため苦悩している様が良くわかる。

  • 民族紛争のところなど、なるほどそういうことなのね。<br />予想に反して面白い本だった。

  •  軍事技術の発達は「距離を獲得」したと言ってよい。すると、戦争とは縁のない我々は、離れた位置から敵を撃ち、砲撃するものと勝手に想像してしまう。当然、返り血を浴びることはなく、硝煙と爆発が戦場を支配する。

     <a href="http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20081016/p2" target="_blank">http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20081016/p2</a>

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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