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感想・レビュー・書評
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久々に好みまっただなかを突いてくる作品と出会えた。
森の奥で、伝説的なけものたちと住む妖女サイベルの物語。
父親以外の人間を知らなかったサイベルは、無知であり無垢である。
人間の倫理から離れているため、酷薄でもある。
しかし縁あって預けられた赤子と、ひたむきな愛を向けてくる男との出会いで、少しずつ変わってゆき、自分の感情と向き合い始める。
初めて知る愛と憎しみの狭間で苦しみ、破滅へと向かってゆく。
正直コーレンがサイベルのどこに惚れたのか、読んでいる最中は「なぜ?」と思っていたのだが、このあやうさが目を放せなくなるのは分かるような気もする。
ある意味、サイベルが共に住んでいる獣と似た部分もあるのかもしれない。どうしようもない魅力で心を惹きつける。
あらゆる謎かけに対する答えを知る猪、黄金の上に眠る老いた竜など、伝説的なけものの描写も美しいし、サイベルの持つ、名を持って縛る妖術の描写も面白い。
盛る火や氷や剣戟といった派手な見せ場がない代わりに、綿密な心理描写でぐいぐい引きこんでくる。
コーレンとのロマンスも女としては甘い心地にさせられ、もう魔法にかけられたような一時を与えてもらった。
何度も読みかえしたいお気に入りの一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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