気がついたらいきなり誘拐されて、棺の中に閉じ込められているというところから始まるのは不条理劇としてはよいにせよ、結局、この登場人物がみな孤立しているために物語としては破綻していると思う。
たとえば主人公の女性は娘のことで頭がいっぱいにせよ、誘拐者の名前を知ろうともしないし、また誘拐者のほうは誘拐者のほうで自分の世界の中に引きこもっているだけの弱虫にすぎない。二人の関係性はほとんどゼロのままで終始してしまう。
それが今どきでカッコイイのかもしれないが、でもその二人の空虚さを観客のほうにきちんと説明し切れているかというと、そうではないし、中途半端な感じはぬぐえない。
ホラーをホラーたらしめるには、観客を恐怖や不条理の中に引き込むことが大事で、それを忘れていたらただのゴアな映画に過ぎないのではなかろうか。