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- / ISBN・EAN: 4988104044631
感想・レビュー・書評
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黒澤明が”マクベス”を日本の戦国時代に置き換えた映画です。
マクベスに当たる武将の鷲津武時を演じるのは三船敏郎。マクベス夫人に当たる鷲津の奥方の浅茅を演じるのは山本五十鈴。
シェイクスピアの戯曲では三人で現れる魔女たちは、一人の山姥で妖怪変化の類になっています。
豪快で素朴な鷲津と、能面を被ったかのような無表情無感動さの奥方は”動”と”静”。
鷲津武時が殿(ダンカン王に当たる)暗殺を決める場面では、鷲津武時は大きな動きと声で同様と戸惑いと出世欲を見せ、そしてそんな夫の後ろについて回り、能面のような顔と平坦な口調で滔々と怖ろしい暗殺を説く…。
いやあ、山本五十鈴恐ろしい。終盤の発狂も怖いけれど、無表情で暗殺を勧めるのも恐ろしいよ。
暗殺を重ね出世していく鷲津武時の居城は次第に大きくなるが、画面に漂う不吉さも増す。
そして圧巻なのはクライマックス。このDVDの表紙で完全ネタバレしておりますが、まあこれを観ようという人は、元ネタはマクベスで、最後は討たれると分かってるからいいのかな 笑
鷲津武時が手に入れた蜘蛛巣城は取り囲まれ、鷲津武時を狙い大量の矢が雨霰と注ぐ。
その間を逃げ回る鷲津。
そして一本の矢が鷲津の首を貫き…。
DVDの表紙でこういう最期を迎えると分かってはいるのに、この一本の矢が三船の首に突き刺さった時のスピード感、唐突さには本気で驚いた。 -
万人受けする作りではないだろうが、個人的には面白かった。
「マクベス」のストーリーを基に能の演出を取り入れた演技は、観ていてとても引きこまれました。
黒澤明監督、三船敏郎主演という黄金コンビの大作映画で、城のセットから武具などの小道具にいたるまで迫力があります。
ですが、本作の見所は何と言っても三船敏郎の演技の凄まじさでしょう。あの面構えといい、畏れおののく様といい迫真でした。最期の壮絶なシーンも素晴らしい。それから、能面の山田五十鈴の存在も凄いです。夫である主人公をそそのかすシーンはとてもコワイ!あの衣擦れの移動も迫力満点ですね。(笑)型にハマった幽玄な所作がコワさを醸し出していました。コワいと言えば最初に登場する糸巻きシーンの物の怪(浪花千栄子)も妖しさ満点の演技です。(笑)
また、カメラワークの技術もとても良かった。あの宴のシーンなど絶妙ですね。あのシーンは夢に出てきソ!(笑)
おどろおどろしい悲劇ですが、舞台的な演出で大袈裟な動作に目を見張るのと、テンポの良い展開で一気に観させてくれました。 -
「修羅の道に進むなら思いきり極悪非道にやれ」
シェイクスピア劇「マクベス」を、日本の戦国時代に舞台を移し、黒澤明・三船敏郎コンビで、1957年(昭和32年)に映画化したもの。
物の怪の予言と妻の唆しから、権力に欲を出して主人や友人を殺して一国一城の主にのし上がるも、心の葛藤と疑心暗鬼から破滅していく男の姿を、どこか侘しさを感じさせるモノクロ映像の陰影に富んだ美しさと、シンプルかつぶれない構成で描いています。
武人の鷲津武時(原作のマクベスに相当)と、その友人の三木義明(同バンクォー)は、絶体絶命とされた戦に勝ち、武功を立てます。
蜘蛛巣城にいる主君の都築に見えるため、城下に広がる「蜘蛛手の森」を疾走中、彼らは物の怪のような老婆に遭遇します。
老婆は、「鷲津は北の館の主へと昇進し、やがては蜘蛛巣城の主になる。三木は一の砦の大将に昇進し、その息子は将来、蜘蛛巣城の主になる」ことを告げて姿を消します。
奇しくも、その予言どおりに、二人は昇進します。
老婆の予言を武時から聞かされた妻の浅茅(原作のマクベス夫人)は、主君の都築を殺して蜘蛛巣城を手に入れるよう、武時を唆して…。
原作のマクベス以上に、極悪非道なようで、その実、忠誠や友誼に心を揺らし、罪悪感と猜疑心ゆえの重圧と狂気に苦しむ武時の弱さや甘さが強調されており、心理劇としての厚みが増すとともに、話の筋が巧みに補強されています。
原作にある、いくつか無理に感じた設定も、筋に合うように変更されており、黒沢・三船コンビが、原作を尊重しながらも、この作品をしっかりと自分のものにした気概を感じます。
物語は、まだ叶わない予言を残したままで終わります。
「修羅の道に進むなら思いきり極悪非道にやれ」
老婆の言葉どおりにはなれなかった、脆く弱かった武時の、強烈かつ悲惨な最期の姿と、無常を象徴するような侘しいラスト映像が脳内で相まって、強い印象を残します。
武時亡き後は、第二、第三の武時が現れては死んでいったんだろうな、そして、武時の前にも、何人も同じ運命を辿った人はいたのだろうな、という、寂寥の感で見終えた作品です。
海外原作物であっても、補強や改変、映像構成などを駆使して、人間のあらゆる面を描く黒澤的美学をしっかり落とし込んでいる点に脱帽した作品でもありました。-
こんにちは!
マクベス特集ですか?
鷲津にぴったり張り付いて主殺しを滔々と説く浅茅コワかったですね~~。
白黒の映像がなんとも気品...こんにちは!
マクベス特集ですか?
鷲津にぴったり張り付いて主殺しを滔々と説く浅茅コワかったですね~~。
白黒の映像がなんとも気品あります。
マクベス映画でしたらロマン・ポランスキー版ご覧になりましたか?
こちらもかなり血生臭かったです。2017/09/02 -
そうなんです。一人マクベス特集です。
本当に、浅茅は不気味でしたね。
ポランスキーのマクベスはまだ観ていないので、観てみたいです。でも血が多...そうなんです。一人マクベス特集です。
本当に、浅茅は不気味でしたね。
ポランスキーのマクベスはまだ観ていないので、観てみたいです。でも血が多いのですね…ドキドキ…。
情報ありがとうございます。2017/09/03
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ポランスキー版『マクベス』を観たかったけど、置いてないので
黒澤さんの『蜘蛛巣城』を。
ミフネ演ずる武将の奥方、山田五十鈴といい
モノノケの妖婆といい、超怖かった・・・
やっぱり日本のホラーは怖いよ・・・
オカルトホラー+サイコホラーで、夏の夜にはぴったりな作品。
いやほんと冷えました。
「これどうやって撮ったんだろう?」ってシーンが何箇所もある。
冒頭の霧のシーン、森のシーン、矢が刺さるシーン。
霧はそんなような発生器を使えば作れるだろうし、
(フィルターとかなのかも)
森のシーンは東宝だけに特撮の神様・円谷英二が関わったそう。
で、矢は・・・まあ調べたらわかったんだけど、
もうねー、マジックですね。トリック。
『蜘蛛巣城』本編は他の作品と比べるとそんなに面白くなかったけど、
こういうところが面白いんだなあ・・・。
あ、一連の黒澤作品で特に時代劇は字幕つきで観ています。
邪道だろうが何だろうが、そっちの方が断然いいのでオススメ。
音声が悪かったり、セリフの速度が速かったりして全然聴き取れなかったりするのと、
言葉遣いや固有名詞も時代劇だとわかりづらいので。
特にこの『蜘蛛巣城』は、能というか謡(唄)が重要だったりするので
字幕で観た方がいいです。
海外の映画でも、これと一緒じゃなかろうか?と思うわけです。
外国の古い映画でも、我々は字幕で観るので古さを感じないけど、
ネイティヴスピーカーの人に言わせたら、古い言い回しってのがあるんじゃないのかな。
黒澤作品は英語の字幕で海外の人は触れてるはずなので、
我々がそのまま観るよりも脚本やセリフの面白さが
視覚的にわかりやすいのかもしれません。 -
1957年(昭和32年)1月15日公開映画。監督は黒澤明、主演は三船敏郎。第31回キネマ旬報ベスト・テン第4位。
シェイクスピアの戯曲『マクベス』を日本の戦国時代に置き換えた作品。ラストに主人公の三船が無数の矢を浴びるシーンで知られる。原作の世界観に能の様式美を取り入れ、エキストラ人員とオープンセットは黒澤作品では随一の規模で製作された。
そして、ラストシーンにはこんなエピソードが。
三船演ずる武時が次々と矢を射かけられるラストシーンは、編集によるトリックではなく、学生弓道部の部員が実際に三船や三船の周囲めがけて矢を射た(ただし、筒状の矢にワイヤーを通し、着点に誘導したもの。また、三船から離れた位置に矢を射て、遠距離から超望遠レンズで撮影することで生じる圧縮効果により近くに刺さっているように見せた)。撮影が終了した後、三船は黒澤に「俺を殺す気か!?」と怒鳴ったという。その後も、自宅で酒を飲んでいるとそのシーンのことを思い出し、あまりにも危険な撮影をさせた黒澤にだんだんと腹が立ち、酒に酔った勢いで散弾銃を持って黒澤の自宅に押しかけ、自宅前で「こら〜!出て来い!」と叫んだという。石坂浩二の話によると、このエピソードは東宝で伝説として語り継がれている。また、このシーンに関して、橋本忍によると、弓を射るのが師範クラスではなく学生だったので、三船は本気で恐怖を感じていたという。そのため、撮影の前日は眠ることも出来ないほどだった。それもあって、三船の酒の量が超えたときに、刀を持って黒澤が泊まる旅館の周りを、「黒澤さんのバカ」と怒鳴りながら回ったという。黒澤自身は三船を怖がって部屋に籠っていたと語っている。そんな三船は頻繁に「黒澤の野郎、あいつバズーカ砲でぶっ殺してやる!」ともらしていたという。 (ウィキペディア)
役者と監督、互いに命を張って仕事をしていたことがわかるエピソードですが、弁慶の仁王立ちのようなこのラストシーンだけでもこの映画を見る価値はあります。それにしても山田五十鈴が恐ろしい。 -
伝説の『三船敏郎が本物の矢を射られて黒澤明にブチ切れした』シーンが観たくて。
霧の中の城の映像が後世に影響を与えているそうだけれど、ラスト近くの動く森の方が不気味でインパクトが強い。
「マクベス」を下書きにしているけれど日本に伝わる怪異譚と言われればそうかと信じるようなストーリー。物の怪の老婆よりも奥方の浅茅の方が怖い…見た目も行動も。
古い映画なので音が悪くて早口だと何言ってるのか分からず、全編字幕付きで観た。おかげで集中して観られたけれどもう少し聞きやすくならないものか…
で、伝説のシーン、マジで怖がってるんですね。今では考えられないぐらい荒っぽいことしてたんだなあ。 -
[○2007/10/19鑑賞]予想に反してリアリティのある話ではなかったが、娯楽映画として良い出来だと思う。ネタバレしない程度に一言で感想をいうと「むごい」(笑)。作品全般の俳優も私は好きです。
この映画の山本五十鈴は妖怪じみていて本当に怖かったですね!
糸巻きのババアも怖かったけど。(^...
この映画の山本五十鈴は妖怪じみていて本当に怖かったですね!
糸巻きのババアも怖かったけど。(^_^;
また、この映画の最後の場面では、黒澤明監督はに本当に矢を射かけさせたそうですね。
三船敏郎は激怒して猟銃を持って仕返しに向かったということですが(笑)、DVDの表紙はまさに本物の恐怖の顔だったかもしれないですね。
いくらリアル志向でもさすがにやり過ぎではないかと・・・。(^_^;
実は見たのはかなり前で、もう一つのマクベス登録のため思い出しながら書いたのですが、
「暗殺唆す場面コワかったなあ」が一番印...
実は見たのはかなり前で、もう一つのマクベス登録のため思い出しながら書いたのですが、
「暗殺唆す場面コワかったなあ」が一番印象的で。
本物の矢に対して猟銃で仕返しですか(^^;)
撮影話で「糸で矢の軌道を作った」みたいなのを聞いた気がするのですが、それにしても顔の真横をプスプスバラバラ刺さったら本気でコワいですよね。
役者、監督って因果だわ…。