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- / ISBN・EAN: 4959241936639
感想・レビュー・書評
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この映画をきちんと語れるだけの準備が、私にはできていない。観終わって、簡単に感想が言えない。何度か観ないと、消化できない映画。
主人公ダニエルは決して好感のもてる人物ではない。
人の事が信じられず、利己的。石油で得た富はあるが、人との関係はうまく築けない。築こうとしない。
こんな人物が自分の近くにいたら、私はなるべく関係を持たないように避けるだろう。それくらい違和感がある。
ただ、映画を観ているうちに他人事に思えなくなる。この主人公は自分ではないかと。
それは、この映画が、一人の人間を静かに掘り下げることで、人間共通の業の深さを共有することに成功しているからではないか。
牧師のイーライ・サンデーも、いわゆる矮小で悪魔駅な人物だが、皆、多かれ少なかれ、イーライのような虚栄心を持っているのではないか。
すぐに感情的になってしまうイーライだが、狂信的に信者をあおる。この演出が、少しわざとらしく。ベタベタな演技に見えてしまう。(「マグノリア」のトムクルーズにも同様のことを感じた。)
ここだけがこの映画で私がついていけない点。
全体的な映画の雰囲気に、偉大な、スケールの大きな物語も感じたし、一方でどうしようもない一人の人生のプライベート性も感じさせる。中々深い映画だと思う。テイスト的にはテレンス・マリックにも似ているのではないだろうか。
油田の試掘の際の爆発事故の映像の美しさ。
火山の噴火のような、自然の暴力的な力。
卑小な人間がこの大きな力を呼び出す悪魔的な場面。
そこで、自分の子供を悪魔に売り渡し富を得たようにもある意味解釈できる。
そんな善悪を含み、人間の醜さもすべて含めた美しさが表現された、恐ろしい映画だと思う。
(ポール・トーマス・アンダーソンが、主演のダニエル・ディ・ルイスに送った、映画「黄金」も人間の醜さが良く表された力強い映画でした。)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
信頼のポール・トーマス・アンダーソン。
見ごたえのある映画でした。
ある意味自分の暗部とごまかすことなく向き合った主人公。
人間には必ず自分と同じような醜く下劣な本性が眠っていると確信していた主人公。
神に仕える者でさえ表に出ないだけで変わらないんだ。
誰にでも地下には石油のような黒くてドロドロとした醜い本性がよこたわっている・・・
誰も、何も信じることが出来なかった人とは欲望を求めるのみの生き物だという男の話し。
極論ではあるが、ある意味真理なのかもしれないなぁ。
富を築いたけれど、不幸せ・・・そんな話はいくつかあるけれど
それだけじゃないなにか不穏さを感じる映画でした。
楽しみに少しずつ見るようにしていたP.T.A。
でもこれで最新作「ザ・マスター」以外全て鑑賞済に。
振り返ると、「マグノリア」が一番衝撃作だったかな。
監督自信も仰ってるけれどちょっと特別な映画でしたね。 -
アプトン・シンクレア著「石油!」の映画化。20世紀はじめのアメリカ西部が舞台で、えがかれるのは血(=オイル、血縁、そしてながれる血)に呪われた成り上がり鉱夫ダニエル・プレインビュー(ダニエル・デイ=ルイス)の成功と喪失と孤独だ。白い砂埃と澄んだ青空、噴き上がる黒いオイルが印象的な作品。いんちき牧師イーライ(ポール・ダノ)が神でなく金に屈服するシーンはなさけなくてすばらしい。ダニエルがかれを疎み、あざ笑い、はてに撲殺したのは同族嫌悪からだろう。どちらも支配的にしか人とかかわれない人間だった。しかし、富や権力で相手を威圧するダニエルに対し、イーライは愛を語り、神の言葉を伝聞して心をつかむ。ほんとうは信心深いダニエルが、教会で狂信的なショーを繰り広げるイーライを憎悪するのもむりはない。ダニエルはイーライのおためごかしがゆるせなかった。信仰や愛に対峙する姿勢を軽蔑していたのだ。かれは潔癖だった。ゆえに、だれよりも愛や絆を渇望しながらそれを信じられず、そこから遠ざかり、息子の自立さえ裏切りと思い込んで、血縁という幻想に呪縛されたまま、ついには身をほろぼしたのだろう。
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脚本も凄いが、BGMが巧みだ
単調が含む狂気の表現もうまい -
ポール・トーマス・アンダーソン!!
ダニエル・デイ=ルイス!!
ポール・ダノ!!最高〜 -
2007年公開
監督 : ポール・トーマス・アンダーソン
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しがない山師が石油を掘り当てたときから、欲にまみれ身を滅ぼしていくまでの半生を描いたお話。
ダニエル・デイ=ルイスですからね。
引き込まれます。そのえぐさに。
まるで本当に一人の人間が、
それだけの年月で実際に老いと共に、
欲に身を落としていくような演技。
目つきや佇まいがあそこまで
演技で変えられるんだから
すげえなあ。
お話の内容は、まあ、えぐい話でした。
金と、石油と、宗教と、親子と。
人間不信はちょっとしたすれ違いと事故を
放っておくと、取り返しのつかないものになると。 -
1910年代、アメリカンドリームは金から石油に変わっていった。
一攫千金を夢みるプレインビューは、幼い息子と一緒に採掘権獲得に乗り出す。
地下に眠る油井と人間の欲望を実に巧みにシンクロさせている。
プレインビューの留まるところを知らない強欲と精気が、
地下に脈々と眠る粘質でどす黒い重油に重なる。
主演のダニエル・デイ=ルイスと宣教師役のポール・ダノが
凄まじい怪演をみせる。
神に仕えし正論と強欲に塗れた愚論の対立構造が見事に描かれている。
経済的栄光の果てに掴むものは何なのだろうか。
劇中終盤のプレインビューはもはや人間とは呼べない。
何度か登場するが、悪魔、という呼び名が近い。
それでも彼をそこまで駆り立てる業が人間にはあることを
僕は認めざるを得ない。
タイトルのThere will be bloodは聖書にある一節で、
「やがて血に染まる」という意味。 -
カルトへの仕打ちが適切で痛快。大作、ワタミ。