素晴らしき放浪者 [DVD]

監督 : ジャン・ルノワール 
出演 : ミシェル・シモン  シャルル・グランヴァル  マルセル・エニア 
  • 紀伊國屋書店
4.14
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4523215035989

感想・レビュー・書評

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  • はっきり言って前評通りの幸福な喜劇と観られる作品ではなかった。なぜか?は特典映像のジャン=ピエール・ゴランの語りで納得いった。浮浪者ブーデュがブルジョワの家庭にもたらす無距離の緊張感である。さらに語るところによると、監督の自由主義への批判だという。最初に望遠鏡で街を覗いていたヴァグールがブーデュを助けたのは、社会人類学的興味であり、人道は二の次と。
    本当にそうだ、助けたらからには感謝されて当然と言った彼らに、死にたいのに迷惑というブーデュの意見はとてもよくわかる。しかし、だからといって家の中をめちゃくちゃにするのはわからない。ゴランは変化に適応できないこどものような癇癪だというが…ブルジョワ家庭の押し付けがましさも、ブーデュの野蛮さ‬も、どちらも極端すぎて共感できないところに距離を感じるのかもしれない。
    もっと荒唐無稽なコントであれば手放しに笑えたのかもしれないが…ヨーロッパの通俗に無蒙な人間からすると、中途半端に何もかも理解も共感もしかねる作品だった。面白かったけど、全登場人物に視点が映り、そのそれぞれの利己性がわかってしまうからこその不穏さかもしれない。だからって階級の違う人間が理解し合えないと思うのも寂しすぎる。かなり痛烈な皮肉をもった、ある意味考えさせられる映画でした。

  • 素晴らしい。
    最初の数シーンで、この映画が素晴らしいことが分かる。
    即座に分かる。
    そしてそれは間違っていないことが、ブーデュがブルジョア風情の男に少女にもらった紙幣を「パンでも買え」とくれちまうところで確信する。

    こんなにも映画然としていて、豊かで余裕があって「賛歌」たりえている映画には久しく会っていない。
    真に大らか。
    大らか、良い言葉だと思う。
    ルノワールのこの映画において「大らか」は本当にしっくりとくる素敵な言葉だ。

    原作があるのかしら。
    舞台劇のようです。
    読んでみたいな。

  • もはや、「総合芸術である映画」のなかでも傑作と言わざるをえないこの作品について、言葉という記号で感想を書こうという行為自体が無意味だ。映画は見るしかないのだ。

    しかし、そこであえて感想を記すという愚行(暴挙!)に手を染めるなら、「自由のすばらしさ」、あるいは「秩序からの自由」だろうか。とにかく自由なのである。それは、理想と現実、感情と理性の狭間に揺れる人間の夢の裏返しであるのかもしれない。

    躍動を象徴する笛の音がいい。


    【ストーリー】
    主人公ブデュは気ままな放浪者だが、「この世はすでに楽しくない」と、一足飛びにあの世行きを図ってセーヌ川に身を投げた。しかし、川縁の古本屋の親父に助けられ、英雄とされた彼のその家に居候をする。持ち前の豪胆さで奥方を寝取るが、旦那の情婦だった女中のアンヌ・マリともネンゴロになり、結婚を決める。が、式の当日、舟で河を往くお披露目の最中、川面に浮かぶ蓮の花に手を伸ばし、舟は転覆する。山高帽一つ残し、ブデュはどこぞへか流れ往き、着いた先の畑の案山子の服を頂戴する。みなの心配をよそに、飄々と歩き去って行った。その“水”の官能的な捉え方、怪優シモンのこれまた言語化不能のやさしい獣的な存在感。50年代後半以降のフランス映画は批評だけ立派で頭でっかちで、どうにもこの映画の純粋さに追いつけないように見える。「ビバリーヒルズ・バム」は本作の米版リメイク。

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