海辺のカフカ 全2巻 完結セット (新潮文庫)

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感想・レビュー・書評

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  • なんとなく、空気感がノルウェイの森にそっくり。落ち着いてどこかもろくて、薄い白、ヴェールみたいな感じの文章だなぁと思う。
    内容は生と死の狭間を生きている人たちと、主人公のかかわりを描いてるのだけれど、かといって生とは死とは?と強烈に問われてる感じもなくて、それよりも、生きていく支えって、人にとってどういうところにあるんだろうって考えさせられました。
    それにしても、死後の世界で、「ここでは時間は大きな問題じゃない。それから、会いたい人、必要なものは思ったときに既にそばにある」というような言葉があったのだけれど、もしも死後の世界がほんとにそんな風だったら、いいな。それだったら怖くないかもしれないな。
    最後のほうまで訳がわからないまま物語が進んでくけど、最後1/4あたりから勢いづいて一気に読めました。誰が誰だか…というのが複雑で、もう一度読む必要がありそう。

  • 大学4年の頃に読んだ。少年が主人公ということで心の成長もテーマの一つにあげられていることと、自分の大学生活の終わりがそろそろ見え始めるメンタリティとが一致せず、なんだかもやもやしたものを抱えながら読みきったと記憶している。
    読後の感想もまず「もうちょっと早く読みたかったな」と思ったものだ。今読んだらまた感想も違ってくるのだろうか。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「もやもやしたものを抱えながら」
      正しい読み方があるとすれば(実際は無いんだけどネ)、判り難さを抱えながら、ドップリと作者の饒舌さに浸かるコ...
      「もやもやしたものを抱えながら」
      正しい読み方があるとすれば(実際は無いんだけどネ)、判り難さを抱えながら、ドップリと作者の饒舌さに浸かるコトだから、それで良いんじゃない。。。
      2012/09/19
  • この前の月曜日は成人の日でしたね。

    今日の本は20歳ではなく15歳の少年の物語。
    本当の意味で大人になるのっていつなんだろう…。

    最初に本をパラっと開いたとき、たまたまそこがジョニー・ウォーカーが猫を殺している場面(かなりえぐい)だったので、あまりのショックにしばらく読むことができず、ほったらかしになっていた村上春樹さんの長編小説である。


    『海辺のカフカ 上・下 』 村上春樹 (新潮文庫)


    これは、読む人によっていろいろな解釈ができる小説だと思う。
    あらすじを書くのもかなり難しい。

    主人公は15歳の少年「田村カフカ」。
    彼は父親からある呪いをかけられて育つ。
    それは、ギリシャ神話のオイディプス王にかけられたあの有名な“父殺し”の呪いをなぞらえた「予言」だった。
    カフカが幼い頃、母は姉を連れて出て行ってしまい、彼は母の顔さえ知らない。

    カフカは15歳の誕生日に家出をする。
    世界でいちばんタフな15歳になるために。

    彼は何かに導かれるように四国の高松に行き、「甲村図書館」という小さな私立の図書館で暮らすことになる。

    それと並行して語られるもう一つの物語のもう一人の主人公は、猫と会話ができる「ナカタさん」である。
    ナカタさんは、子供の頃のある出来事によって記憶をすべて失い、読み書きもできない。
    そして、ナカタさん自身は全く記憶を失ってしまっているが、エリートの両親に日常的に暴力を受けて育った。

    一見カフカとは全く関係のない人物に見えるが、内面的、潜在的な共通点がもしかしてあるのかもしれず、何の罪もない心優しいナカタさんがカフカの代わりにジョニー・ウォーカーを殺さなくてはならなかった不条理に、これで少しだけ説明がつけられる。
    (納得はいかないけど)

    この物語は、登場人物の話す言葉がやたら難しい。
    その中でも、「メタファー」という言葉が全編通していっぱい出てくる。
    大島さんも、ゲーテの「世界の万物はメタファーだ」を引用しているし。
    「メタファー」は、“比喩”の中でも“暗喩”の意味が強い。
    現実とメタファーが混在した世界はつかみどころがなく、読み終えた時には、長い長い旅をしてきたような疲労感がある。

    「世界でいちばんタフな15歳になる」というのがキーワードのように帯にもに書かれているが、その割にカフカ少年が行き着いた甲村図書館ってぬるすぎやしないかい?
    こんな理屈っぽい頭でっかちな15歳は、普通の大人の社会ではこてんぱんにやられて当然だと思うが、彼のまわりには、佐伯さんにしろ大島さんにしろ同類人種しかいないし、タフどころかよしよししてもらえる場所で、何の引っかかりもなく軽々と許容されているではないか。

    森から戻ったカフカはタフになったのだろうか。
    父の呪いを自分の力で乗り越えたのだろうか。
    メタフォリカルな体験によって何を学んだというのだろうか。
    あの森で、カフカのメタファーである「カラスと呼ばれる少年」は、父のメタファーである「ジョニー・ウォーカー」を攻撃はしたけれど、結局その存在をどうすることもできなかったわけでしょ。

    これは極論かもしれないけれど、彼は全く成長していないと私は思う。
    それどころか余計なものを身につけた。
    彼は「メタファー」という言葉を盾に、暴力を(いろんな意味での暴力を)正当化する大人になる。

    メタファーメタファーってねぇ。
    どうなんでしょ。
    ひょっとしてホシノちゃん以外、全部メタファーなんじゃないの?
    そしてもっと突き詰めれば、実はこれはなんとカーネル・サンダーズが作った世界で、ここに出てくる人たちは舞台装置のひとつにすぎないんじゃないかとか。
    唯一カーネル・サンダーズと接触を持ったホシノちゃんのみが、実は現実を生きているとか。

    すごい想像力だな(笑)。

    今までいつくか村上作品を読んだけれど、読んだ時はたぶんいろんなことを感じたり考えたりしていたと思うんだけど、あとから頭の中から引っ張り出してこようとすると探せない。
    村上春樹さんの小説って、中身はあるけど“いれもの”がないような気がする。
    インデックスをつけてカテゴライズできないような。

    やたら理屈っぽくて鬱陶しいし、は?と思うこともいっぱいあるけれど、どこか惹かれるものがあることも確かで、村上春樹の作品は何だかんだ言いつつも結構気になる存在だったりする。
    村上本は何冊か持っているので、これを機会に再読してみようかな。
    翻訳とか対談もあるし。
    きっと昔読んだ時とは感じ方が違うと思う。 

  • 細かい情景描写と対比するかのように、抽象的なメッセージ性。
    亡くなっても、その人を想い続けることで、その人は存在していくことが主題なのか。
    確かにそれもあるだろうけども、それ以外に如何様にも解釈できる本作。
    カフカとナカタさんの物語が交互に繰り広げられ、やがて四国の地にて交錯する。
    ナカタさんをサポートする星野さんが、ナカタさんの出会いをきっかけに今までの逃げ続けてきた人生を振り返り、ベートーヴェンに興味を持つなど視野を広げるようになった点が印象に残った。

  • 世界でいちばんタフな15歳。村上春樹のどこにハマるかってやっぱりノルウェイもそうだけど、哲学的な難しい事言ってると思ったら信じられないくらいドスケベな事言っちゃう、振り幅がでかい所。

  • 久々に読んだ。
    佐伯さんの思いが前よりも身近に迫って感じられた。

  •  本作は、村上春樹さんの長編作品の中では初心者に受け入れやすいとされてるが、果たしてどうだろう? 感じ方は人それぞれなのは、承知してるが、発表当時の初読(30代前半)では、面白いとは思わなかった。
     もうすぐ50になろうかという、今になって再読したところ、乾いた砂地に水がスーッと染み込むような...明確な意味や定義づけがなく、意味がわからないと抱えていた不満が解消され(or 気にならない/自己解釈で良しとする)、ストンと腑に落ちるような、爽やかな読後感を抱いた。
     登場人物は、どれも曲者ばかりだが、ホシノさんを通して語られる言葉が深く心に残った。

  • どうしておばあさんだった人とセックスしたのか。女性の体を持った男性のアナルセックスしかしない話はとても考えさせられた。

  • ストーリ覚えてないけど、いい描写が多かった

  • 学生時代に読んだ本を10年ぶりに読み返した
    内容はうっすらしか覚えてなかったから、ハラハラしながら楽しめた

    言い回しが独特でよくわからないけれど、村上春樹の作品を好きだなと再認識した

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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