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感想・レビュー・書評
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この方の作品を読むことはあるのだろうかとおもっていたのだが、とある経緯で手元にやってきたので拝読した。夜中に読むことも、気分が落ち込んでいるときに読むこともおすすめはしない。しないけれども、行きつくところまで行ってしまいたいのであれば、自由に読んだらいいのだろう。感傷を排除した文章はすっきりしていて読みやすかったが、帯にあった“最期の命の煌めき”に対しては「きら……めき……?」と初めてこの単語を知ったような気持ちになり、自身の未熟さを感じた。「折り合いなんて一生つかない」とのことばにのみ、激しく同意した。
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「猫鳴り」(沼田まほかる)[Kindle版]を読んだ。朝の新幹線の中で読み始めて、帰りの新幹線の中で読み終わった。面白かったですが内容には馴染めない。本当の意味で生命を看取る強さが自分に無いことは自覚しているので犬も猫も飼えない私である。
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最初に言っておくと。
猫は登場するが、猫は2本足で歩くこともない。
人語を理解して話しはしないし、まして悩みごとを解決してくれるわけでもない。
この物語にはファンタジー要素は一切ない。
人も猫も生きて生活し、そして老いて死んでいく。
書評家の豊田由美さんも解説でいうように、残酷なまでに徹底したリアリズム。
登場人物たちも、それぞれ絶望や死を経験している。愛する人たちとの別れを淡々と描いている一方で、不思議とかつての幸せや人との温もりがあったことを感じられる。
とりわけ第三部では、高齢男性が老猫の看病をする様子が描かれているが、老猫は日に日に衰えていき、ゆっくりと死に向かっていく。
自分もいつかは向かえる死を老猫を通して見ているのだと思うと、人ごとではない。
私自身も以前飼っていた猫を看取った。
その時の様子が重なるようで胸が苦しくなる。
読後は感動とはいかず少し暗い気持ちになったが、亡くなった猫の温もりを手のひらに思い出した。