機龍警察 [Kindle]

著者 :
  • 早川書房
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感想・レビュー・書評

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  • パワード・スーツが兵器として発達した近未来、パワード・スーツを用いた犯罪に対処するために警視庁に新設した特殊部隊、通称「機龍警察」の活躍を描く警察小説。

    近未来の警察部隊を描いた作品というとガジェット的にもまず『パトレイバー』が強く想起されるが、あちらのようなコミカルな要素はまるでなく、むしろハードボイルド、ノワールの性格が強い。物語はいたってシリアスである。むしろ『攻殻機動隊』が近いが、あれほど高度にはテクノロジーはまだ発達しておらず、宣伝文句にもある通り、すぐ近くの未来、「至近未来」を描いている。

    作者はこのような、現代との連続性を非常に重視しているようであり、東京都内の工事中の地下鉄路線や横浜みなとみらいの街並みなどのリアルな描写にこだわっており、あくまで現実的な警察小説の体裁を保つことに心がけている。

    物語としては、パワード・スーツを利用した犯罪者たちによって機龍警察とは別の、 SAT のパワード・スーツ部隊が壊滅的な被害をこうむるところから始まる。機龍警察の面々はこの犯罪の実行犯を捕らえるために奮闘し、本書の最後では犯人たちが捕らえられるが、この犯罪は警察組織そのものに対する挑戦であることが示唆され、また背後には警察内部の暗闘が存在していることがほのめかされる。

    まあ、警察がパワード・スーツを配備しているような未来なのに女子高生がコンビニでノートのコピーを取っているし(スマフォでノートの写真を撮って LINE するような時代でしょ、もう)、大量破壊兵器が衰退するとパワード・スーツが発達するのかとか、やり過ぎ感あふれる登場人物たちの背景設定だとか(伝説の傭兵が警視庁に雇われるものなんだろうか)、 IRA もずいぶん前に静かになったし、回復しきっていない機体を戦場に投入したり、リアリティに欠けるところは多々あるが、まあ、そんなことはどうでもいいんだよ!という圧倒的な勢いがある。これは外連味あふれる娯楽小説であって、「ドラグ・オン!」するところからそれもよくわかるでしょう。

    本書は長大な機龍警察サーガの端緒となる一作であり、顔見せの要素が強いが、いやあ、こういうわかりやすい娯楽小説は素晴らしい。この確信犯的な作劇はもう★5つの満点評価。作者はちゃんとわかってると思う。

  • 二年後くらいにアニメ化しそうな感じ。なかなか良い。

  • 機龍警察

  • カテゴリは警察小説にしたが、登場人物がそれぞれ傭兵、元ロシア刑事、元テロリストなので、ミリタリー色から諜報小説色まで揺れ動く小説。また、装備品はまるでオーパーツかのような存在と扱われているアーマードスーツ(ロボット寄りか)なのでSF色もありさらにその搭乗者の能力の引き出し方は往年のサイバーパンク小説のようだ。『ハードワイヤード』とかあんな感じ。
    文章はしっかりとした骨太なもので安心して読めるのだが、登場人物の感情や過去を描くシーンになるととたんに感傷的になりがちで、そこがイマイチ好みではない。
    ただ、もう昨今の作家の文章は全部こんなもんだと思えばその中では群を抜いて上手い作家だろう。まあ、続編を前提にしたラストはどうかと思うけど。

  • 近未来の警察小説。
    レイバーみたいのを装備した警察が主役。
    警察小説っぽい捜査のシーンと、レイバーみたいのの戦闘シーンがちょうどよくまざったかんじ。

  • 小説版パトレイバーといった感じ。
    警察小説にロボットを持ち込み、SF要素を加味した感じ。とはいえただ事件を追うだけでなく、主人公たちの属する「特捜部」というイレギュラーな組織を巡る政治劇もバックにあり、またロボット同士の活劇描写もありと、盛りだくさんな内容。

    文章や設定に粗が見えてしまうのが難点。また展開が先読みできてしまいます。そのため今一な印象でした。

  • いかにもIGとかがアニメにしそうな話だし、見てみたい気も。
    なかなか面白かったんですが、まだドラグーンが本当の活躍をしないままにこの本が終わっちゃってるので続きを読まないことにはなんとも……。
    ていうか外国人が日本語上手すぎる(笑)

  • ハードボイルドな作品ではあるものの、3人の過去と現在に対する価値観がところどころに挟みこまれているため、ストーリーのわりに冷たい印象がない。というか、むしろ人間ドラマとして読むこともできそうなのだが、なにしろ機甲兵装同士の戦いがあまりに激しくて、ゆっくりと人間ドラマに浸っている暇がない。

    全長3メートルほどの小ぶりなロボットらしいのだが、戦闘シーンの激しさたるや、もはや自分の頭の中ではガンダムの戦闘シーンになっている。複雑すぎてほぼ斜め読み。この部分がもっとわかりやすかったら、★1つ増えたのになあと思うのだけれども、好きな人にとってはこのシーンこそが醍醐味なのかもしれない。

    作品全体を通しては、第1作目ということもあってか、「機龍警察」の世界感が紹介されただけにすぎない感がややあるのが残念。続編に期待。

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著者プロフィール

1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。近著に『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』などがある。

「2021年 『ビタートラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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