黒部の太陽 [通常版] [DVD]

監督 : 熊井啓 
出演 : 三船敏郎  石原裕次郎 
  • ポニーキャニオン
3.55
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988013326460

感想・レビュー・書評

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  • <敗戦の焼け跡から国土を復興し、文明を築いてゆく日本人たちの勇気の記憶>として、世紀の難工事と言われた黒部ダム(黒四ダム)建設の苦闘、それを巡っての人間模様を描いた映画。
    三船プロダクションと、石原プロモーション制作、電力会社や建設会社、国土開発業者の協力の元に、2部構成3時間(途中休憩あり)という大作となっている。
    映画というよりドキュメンタリーというか、登場人物たちも実在の人たちが実際にこんなおお仕事をやり遂げたんだというプロジェクトX的な感じ。

    昭和31年、険しい雪山を登頂する一行がいた。関西電力が着工した黒部のダム建設工員たちだ。戦後の日本は火力電力だが、ピーク時には電力供給が落ちる。そこで電気供給の安定のために巨大なダムでの水力電力が不可欠となる。
    しかしその黒部は標高2,900m、その地下にはフォッサマグナ、破砕帯、日本列島を二分する断層があるはずだが、黒部のあまりの険しさに事前調査もままならず、見積もりも建てられず、建設しながら調査、調査しながら建設となる大工事だった。
    工事は1工区を1社、合計5社で行い、互いにトンネルを堀合って合流するというもの。こうして黒部の山奥に集結したのはそのお互いを見知った建設外車や行員のプロたちだ。最初はショベルカーなどの大型工具が運べず、ショベルにトロッコという手作業だった。
    映画では、そんな工事の計画などは、セリフ、ナレーション、絵や地図などを使ってわかり易く説明している。
    破砕帯にあたった後は、1日1メートル掘り進むのがやっとで、そうやって掘ったトンネルが土砂崩れで陥没、鉄砲水や毒ガスに襲われ、まさに掘っては調査、調査しては堀りの繰り返しで、そのためせっかく掘ったトンネルを放棄しなければいけないことも多々あった。

    そして工事に関わったちと人たち。
    関西電力から黒四建設事務所次長に選ばれたのは北川覚(三船敏郎)。
    留守を守るのは奥さまと3人の娘たち。この時代の家庭なので、女性は男性を支えることが大事な価値観なのだが、一家をどっしり支えて苦悩を見せない大黒柱の父親と、そんな父親を尊敬する女性たちはしっかりした家庭が描かれている。それにこの時代の女性は言葉遣いが綺麗。背筋を伸ばして「ようこそおいでくださいました」「父はどのような覚悟を決めたのでしょうか」という言葉は芯が通っている。

    第一工区は間組。
    工事責任者の国木田(加藤武)はいつも賑やかで工員たちを鼓舞する。そんな建設班の班長の上條(大滝秀治)もひたすら掘り進む。

    第三工区は熊谷組。
    現場責任者は土方の岩岡源三(辰巳柳太郎)で、体はボロボロだが日本一のダムを創りたい、ダイナマイトに吹き飛ばされて死にたいと言って現場に出ている。「土方は考えちゃいけない、自信がありゃ何でもできるんだ!」と自ら先頭に立つが、意見が合わなかったり怯える行員にはぶん殴って仕事をさせる。
    その息子の岩岡剛(石原裕次郎)は、今まで何人も犠牲者を出しながら工事を敢行してきた父親に反発して大学を出て建設会社での図面を引いていた。黒部の工事を聞いたときは、理論的に日本の地理と計画の見通しの甘さとを説いて真っ向から反対した。しかし父を憎むばかりでなく土方達とともに働き彼らを知りたいという思いから工事に参加し、その知識のため計画の中枢人物として活躍する。のちに彼と北川の長女の由紀は結婚する。

    第四工区は佐藤工業。
    社員の森(宇野重吉)は、昭和13年に着工された戦時中の電力供給のための黒三ダム工事に関わっていた。あの地獄のような工事を思うと今の工事の進んだ時代を感慨深く思っている。
    息子の作業員の賢一(寺尾聰)は、行員と言っても優しく工事にも理想を求めるので他の工員たちからは子供扱いされている。

    関西電力の役員たちは現場には出ないが、厳しく、しかし情熱を持って工事を支える。
    途中で破砕帯につまずきもう無理だという行員責任者たちを集めた太田垣社長(滝沢修)は、彼らに手を付き「金は心配する必要はありません。必要な手立てはなんだって使ってください。何が何でも私はこの工事を成功させたいのです」と真摯に願う。その姿に工員たちは「無茶だがこうなったらやりましょう!」と気炎を上げる。


    映画では悪い人は出てこないし、意見は食い違ってもダム建設という目的は同じなのでお互いを認めあっている。最初は「一人も死人を出さない」といっていたが犠牲者も当然出るし、途中で離脱する工員たちとの揉め事もあった。
    撮影現場もかなり臨場感がある。ほんとうに暑そうだし、すごい勢いで流れてくる鉄砲水を全身に浴びたり、やっと掘ったトンネルの天井がギシギシ歪むあたりは崩れそうだという恐怖を感じるし、発破かけての大爆発などもよく撮影したなあと思う。そのため双方からトンネルが貫通するとやっぱりやったーという開放感があった。
    また、関西電力の社長が各社の責任者を集めて接待兼食事会だとか、工事が滞る中で北川が建設会社社長とサシで風呂に入って腹を割って話しましょう!というあたりはいかにも日本的な本音を出し合いかただなという感じだ。

  • 意外に今まで見ていなかった。
    名作。トンネルを掘るシーンが多くて、今、どの部分を掘っているのかわかりづらいところもあるが、ダムの完成を願う熱い思いに圧倒され、とにかく最後まで見てしまった。

  • 男気満載の硬派な作品。
    リアルな映像の迫力は凄まじい。

    3時間15分…流石に尺が長いと感じるけれど、
    破砕帯との終わりの見えない戦いのジリジリ感が伝わってくる。

    昨今、新国立競技場の建設費が2500億円だ!といって大騒ぎになったけれど、このダムのプロジェクトは、今やろうとしたらいくらになるのだろうか。

    三船敏郎のカッコよさにシビれる。
    着物姿が似合うと思っていたけど、洋服の着こなしも素晴らしい。

    トンネル工事を再現したセットの中での撮影中、
    石原裕次郎が大怪我をする事故があったらしい。

    必死に逃げる様子を捉えた映像は、
    映画というよりはドキュメンタリーに近い。

  • 1968年公開
    監督 : 熊井啓
    ==
    黒部ダム建設をめぐる男たちのお話。

    昔の映画って、いろいろガチだからすごいなって思います。破砕帯掘削シーンの切羽落盤洪水のシーンは、ほんとに洪水起こしてて、本気で逃げている、あの表情は、演技じゃでないものねw 黒部ダムももちろん、この映画そのものに携わっている人の熱量の質量がすごいビシビシ伝わってくるというか。

    俳優陣、男臭い泥まみれの映画です。黒部ダム帰りに見れて、記憶が複層化されてよかった。

  • TVにて

  • 裕次郎、やっぱ格好いいなぁ(^^)/
    破砕帯にブチ当たり滝のような水が出るって理解を超えているな。大変な工事だったのが分かった。
    黒四ダムはまだ見たことないので是非見に行きたいと思ったよ。
    ちょっと長かったな^^;

  • 黒部ダムを建設する話なのかと思いきや、ダム建設の資材を運ぶためのトンネル(関電トンネル)を掘る話でした。すごいなトンネルを掘るだけで3時間とは。

    それだけに貫通した瞬間のカタルシスはすごい。両側から掘っていった2つの会社の作業員入り乱れて歓喜の声を上げ、ヘルメットで樽酒を回し飲みするにいたっては、昭和の男たちのパワーは凄まじいと感嘆。

    とはいえ、本作の最大の見どころは、昭和の新旧の映画スターの三船敏郎と石原裕次郎の共演でしょうね。重厚な三船と爽やかで青臭い裕次郎。キャラが全然かぶらないところが良いですね。

  • 雪山を自力で登って黒部にたどりつくイントロから始まって
    エンディングでは観光解説つきのトロリーバスで黒部に訪れる
    黒部に通じるトンネルが開通したからこその平和な光景が感慨深かった

  • 石原裕次郎の残した言葉通り、
    劇場の大スクリーン・大音響で拝むべき作品であった。
    そう観終ったあと、痛感した。
    ようやくDVD化され、観ることのできた作品。

    はっきり言って今のCG全盛の時代の映画に負けず劣らずの傑作である。
    世紀の難工事と言われた黒部ダム建設の苦闘を描いた作品。

    日活から退社してこの難題に挑むところが、石原裕次郎の覚悟と魂を感じる。
    世代的に石原裕次郎という俳優に触れてないだけに、
    どこか遠い存在であったが、それは三船敏郎も同じく。
    だが、この二人の名優の魂の芝居には心が揺さぶられた。
    映画とはこうあるべきだという、作り手側の魂を感じられる作品というのは
    一生のうちに何度出逢えるかわからない、それぐらい希少なものだ。

    トンネル貫通の瞬間、その瞬間の石原裕次郎の表情。
    そして、その歓喜の渦の中届いた三船敏郎を襲う悲劇の瞬間。
    人間の喜びと悲しみ、その対極を描いた屈指の名場面であろう。

    技術が革新的に飛躍して、想像を超える映像美を造れたとて、
    それは先人たちが築いてきた土台があるからこそ成り立つわけで、
    人の心を動かす衝動は何年経とうが色褪せることはないであろう。

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